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 私の元を訪れたフォルテは、精いっぱい私を励ましてくれた。
 そして以前から私を想い慕っていたのだと告白をしてくれて、それは私を暗闇の底から救い上げた。
 もう心にパストラの影は微塵も残っていなかった。
 全てをフォルテ王子に捧げようと私は誓った。

「フォルテ王子……え……あ、いや、そんな……」

 パストラは散々無礼を働いた挙句に、その相手がこの国の第一王子だと知り、顔面蒼白になった。
 先のそのことに気づいたアレグロも、未だに言葉を発せずにいる。
 フォルテは二人を厳しい目で見つめると、説明を始めた。

「パストラが訪ねて来た時、僕はちょうどフィーネと話をしていてね。事情を彼女から聞いていたから、兵士の振りをして応接間の中に入ることにした。しかし本当に見事に君たちは自分の愚行を宣言してくれたね。何か報酬でもあげたいくらいだよ」

 からかうように笑うフォルテだが、目は笑っていない。
 完全に委縮してしまったパストラとアレグロは、耐えきれなくなり俯いた。

「僕は最初から今までの会話は全て聞いていた。君たちがフィーネを馬鹿にする言葉もしっかり覚えているし、パストラがアレグロと男女の関係になったことも、もちろん聞いている。お前たちは自分で自分の首を絞めたんだ」

「くそっ……」

 パストラが悔しそうに呟く。
 そんな彼にフォルテは猛々しく言い放つ。

「お前みたいなゴミ公爵はさっさとフィーネの元を去れ! これからは僕がフィーネを愛し、幸せにしていく!」

 フォルテの愛情あふれる言葉に、二人は顔をバッと上げた。
 信じられないといったように王子を見て、次いで私を見た。
 アレグロがギッと歯ぎしりをすると、王子に懇願する。

「フォルテ王子! 子爵令嬢のフィーネではあなた様の相応しくありません! ど、どうかこの私を……」

「黙れ」

 しかしフォルテの冷たい声にアレグロが「ひっ」と短い悲鳴を上げる。

「お前もパストラと同じゴミだ。親友であるフィーネを裏切り、今しがたパストラまでも裏切った。そんな尻の軽い女を傍に置くわけがないだろう」

 パストラの鋭い視線も相まって、アレグロは口を閉ざした。
 フォルテは場を治める最後の言葉を放つ。

「パストラ、アレグロ。両名にはフィーネへの慰謝料の支払いを命じる。正当な額は後程書面にて送ろう。その後の断罪については両家の領主……お前たちの父親に任せる。だが、くれぐれも僕の顔に泥を塗らないように。王子命令であることを忘れるな!」

 その後、フォルテが連れてきた王宮の兵士によって、二人は連れていかれた。
 兵士にフォルテが事情を説明していたから、断罪はしっかり為されるだろう。
 二人きりになった応接間で、フォルテがそっと私の隣に座る。

「今までは姿を追うことしかできなかった。しかし、もう僕は君をこうして近くで見ることができる……本当にいいのかい?」

 きっとフォルテは本当に自分の妃になっていいのかと聞いているのだろう。
 私は屈託のない笑顔で頷く。

「もちろんです。あなたは私の救世主ですから」

 その後、私はフォルテ王子の妃となった。

 パストラは爵位を剥奪され国外追放。
 アレグロは髪を全部刈り取られ、遠方の教会へと送られた。
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