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サラの言葉に一同が静まり返る。
料理を運ぼうとしていた侍女までもが、その場で足を止めていた。

「サラ。お前何を言っている?」

冗談だろとでも言いたげに、サラの父は娘を見上げた。

「私たちがこんな酒しか買えないだと?ははっ……もしかして場の空気を戻すために、お前なりの冗談を言ったのか?」

彼の様子に皆が安堵したように息をはいた。
アイクと彼の両親も顔を見合わせて「なんだ、そうだったのか」と頷きあっている。
しかし、サラだけは違った。

「お父様。冗談なんかではありませんよ。我が家にはもう高級なお酒を買うだけのお金がありません。だってお母様とジェリーが内緒でお父様のお金を使ってしまわれたのですから」

「……なに?」

父の訝し気な視線が突き刺さるも、サラは動じなかった。
反対に、母とジェリーは心臓を掴まれたように冷や汗をかいていた。

「あなた!サラはきっと勘違いしているのよ!あなたのお金を私たちが使ったなんてありえないわ!」
「そうよお父様!逆にお姉ちゃんが使ったのよ!私たちに罪を被せる気だわ!」

二人は一生懸命に口を開き、事実でもないことをさも事実であるかのように叫んだ。
サラはそのことを分かっていたが、父は二人の言っていることを信じようとしてしまった。

「そ、そうだな……お前たちが私の金など盗むはずがないよな……」

サラはそう言った父を見て、内心深くため息をついていた。

(はぁ……やっぱりお父様はお母様とジェリーのことを信じるのね。まあそうよね、本当のお母様が生きていた時から隠れて浮気して子供までこしらえたのだから、愛着がわいても当然よね。対して私は面倒な妻の面倒な置き土産とでも思っているのかしら)

「サラ。今なら先ほどの発言は許してやる。真実を言え」

父の鋭い眼光がサラに飛んでくるが、彼女は怯む様子もなく告げる。

「お父様。あなたは最後のチャンスを逃しましたね。本当にお金はお母様とジェリーに使われたのですよ。あなたは……いえ、この家族は本当の意味で終わりのようです。もちろん私以外はですが」

彼女はそう言うと、ポケットから一通の手紙を取り出した。
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