7 / 8
7
しおりを挟む
「そうか、レイラも大変だったんだな」
応接間にて、向かいのソファに座る、幼馴染のローは言った。
私は小さく頷くと、探るように言葉を返す。
「ローも何かあったの?」
「まあね……実は、恋人に騙されていてさ……高い水晶玉を買わされたんだ。弟からおかしいって言われて、彼女のことよく調べてみたら、結婚詐欺師で……」
「そうだったの……それは大変だったわね」
トールと婚約破棄してから既に半年が経過していた。
トールとジェシカからの慰謝料も無事に支払われ、私たちは赤の他人となった。
「でもレイラには負けるよ。僕のはありきたり過ぎてつまらないだろ?」
ローはそう言って笑うと、言葉を続ける。
「その後、トールとジェシカはどうしてるんだい? 二人仲良く暮らしているのかい?」
「あぁ……二人なら……」
トールとジェシカは、婚約破棄を機に別れたらしい。
何でもジェシカはトールのお金目当てで関係を持っていたらしく、彼の家が没落寸前だと分かると、霧に隠れるように姿が消えたという。
トールはその後、家の経営不振で没落し、ここから遠く離れた田舎で暮らしているらしい。
ジェシカの消息については全く分かっていない。
私が全部説明し終えると、ローは急に緊張したような顔になった。
「レイラ……っていうことはさ、君は別にトールのことが好きだったわけじゃないんだよな?」
「ええまあ」
一体彼は何を言いたいのだろう。
不思議に思っていると、彼は真剣な眼差しを私に向ける。
「レイラ……その……君のことが好きなんだ。僕と婚約してくれないか?」
「……え?」
「自分でも急なのは分かってるよ! で、でも最近話している内にだんだん……もう気持ちを抑えられそうにない……」
ローはそう言うと立ち上がり、私の元へ近づいてくる。
どうなってしまうのだろう……心臓がバクバクと音を立てたその時、応接間の扉が勢いよく開いた。
「……ん? 何をやっているのだお前は」
ゆっくり扉の方を向くと、そこには父がいた。
昔から私を溺愛する、心優しき父だ。
父はローを訝し気に睨みつけると、スタスタと近づいていく。
「おいロー……まさかお前、私のレイラに何かしたんじゃないだろうな?」
「あ、い、いや……お義父さん! 断じてそのようなことは……」
「お義父さんだと? 私はお前の父になったわけではない!」
父の私への愛ゆえの厳しい態度に、ローはすっかり委縮してしまう。
その光景を見つめながら私は微笑んだ。
心臓は依然、音を立てていた。
応接間にて、向かいのソファに座る、幼馴染のローは言った。
私は小さく頷くと、探るように言葉を返す。
「ローも何かあったの?」
「まあね……実は、恋人に騙されていてさ……高い水晶玉を買わされたんだ。弟からおかしいって言われて、彼女のことよく調べてみたら、結婚詐欺師で……」
「そうだったの……それは大変だったわね」
トールと婚約破棄してから既に半年が経過していた。
トールとジェシカからの慰謝料も無事に支払われ、私たちは赤の他人となった。
「でもレイラには負けるよ。僕のはありきたり過ぎてつまらないだろ?」
ローはそう言って笑うと、言葉を続ける。
「その後、トールとジェシカはどうしてるんだい? 二人仲良く暮らしているのかい?」
「あぁ……二人なら……」
トールとジェシカは、婚約破棄を機に別れたらしい。
何でもジェシカはトールのお金目当てで関係を持っていたらしく、彼の家が没落寸前だと分かると、霧に隠れるように姿が消えたという。
トールはその後、家の経営不振で没落し、ここから遠く離れた田舎で暮らしているらしい。
ジェシカの消息については全く分かっていない。
私が全部説明し終えると、ローは急に緊張したような顔になった。
「レイラ……っていうことはさ、君は別にトールのことが好きだったわけじゃないんだよな?」
「ええまあ」
一体彼は何を言いたいのだろう。
不思議に思っていると、彼は真剣な眼差しを私に向ける。
「レイラ……その……君のことが好きなんだ。僕と婚約してくれないか?」
「……え?」
「自分でも急なのは分かってるよ! で、でも最近話している内にだんだん……もう気持ちを抑えられそうにない……」
ローはそう言うと立ち上がり、私の元へ近づいてくる。
どうなってしまうのだろう……心臓がバクバクと音を立てたその時、応接間の扉が勢いよく開いた。
「……ん? 何をやっているのだお前は」
ゆっくり扉の方を向くと、そこには父がいた。
昔から私を溺愛する、心優しき父だ。
父はローを訝し気に睨みつけると、スタスタと近づいていく。
「おいロー……まさかお前、私のレイラに何かしたんじゃないだろうな?」
「あ、い、いや……お義父さん! 断じてそのようなことは……」
「お義父さんだと? 私はお前の父になったわけではない!」
父の私への愛ゆえの厳しい態度に、ローはすっかり委縮してしまう。
その光景を見つめながら私は微笑んだ。
心臓は依然、音を立てていた。
395
お気に入りに追加
363
あなたにおすすめの小説
元婚約者様の勘違い
希猫 ゆうみ
恋愛
ある日突然、婚約者の伯爵令息アーノルドから「浮気者」と罵られた伯爵令嬢カイラ。
そのまま罵詈雑言を浴びせられ婚約破棄されてしまう。
しかしアーノルドは酷い勘違いをしているのだ。
アーノルドが見たというホッブス伯爵とキスしていたのは別人。
カイラの双子の妹で数年前親戚である伯爵家の養子となったハリエットだった。
「知らない方がいらっしゃるなんて驚きよ」
「そんな変な男は忘れましょう」
一件落着かに思えたが元婚約者アーノルドは更なる言掛りをつけてくる。
婚約者の態度が悪いので婚約破棄を申し出たら、えらいことになりました
神村 月子
恋愛
貴族令嬢アリスの婚約者は、毒舌家のラウル。
彼と会うたびに、冷たい言葉を投げつけられるし、自分よりも妹のソフィといるほうが楽しそうな様子を見て、アリスはとうとう心が折れてしまう。
「それならば、自分と妹が婚約者を変わればいいのよ」と思い付いたところから、えらいことになってしまうお話です。
登場人物たちの不可解な言動の裏に何があるのか、謎解き感覚でお付き合いください。
※当作品は、「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しています
【完結】浮気現場を目撃してしまい、婚約者の態度が冷たかった理由を理解しました
紫崎 藍華
恋愛
ネヴィルから幸せにすると誓われタバサは婚約を了承した。
だがそれは過去の話。
今は当時の情熱的な態度が嘘のように冷めた関係になっていた。
ある日、タバサはネヴィルの自宅を訪ね、浮気現場を目撃してしまう。
タバサは冷たい態度を取られている理由を理解した。
完結・私と王太子の婚約を知った元婚約者が王太子との婚約発表前日にやって来て『俺の気を引きたいのは分かるがやりすぎだ!』と復縁を迫ってきた
まほりろ
恋愛
元婚約者は男爵令嬢のフリーダ・ザックスと浮気をしていた。
その上、
「お前がフリーダをいじめているのは分かっている!
お前が俺に惚れているのは分かるが、いくら俺に相手にされないからといって、か弱いフリーダをいじめるなんて最低だ!
お前のような非道な女との婚約は破棄する!」
私に冤罪をかけ、私との婚約を破棄すると言ってきた。
両家での話し合いの結果、「婚約破棄」ではなく双方合意のもとでの「婚約解消」という形になった。
それから半年後、私は幼馴染の王太子と再会し恋に落ちた。
私と王太子の婚約を世間に公表する前日、元婚約者が我が家に押しかけて来て、
「俺の気を引きたいのは分かるがこれはやりすぎだ!」
「俺は充分嫉妬したぞ。もういいだろう? 愛人ではなく正妻にしてやるから俺のところに戻ってこい!」
と言って復縁を迫ってきた。
この身の程をわきまえない勘違いナルシストを、どうやって黙らせようかしら?
※ざまぁ有り
※ハッピーエンド
※他サイトにも投稿してます。
「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」
小説家になろうで、日間総合3位になった作品です。
小説家になろう版のタイトルとは、少し違います。
表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
結局、私の言っていたことが正しかったようですね、元旦那様
新野乃花(大舟)
恋愛
ノレッジ伯爵は自身の妹セレスの事を溺愛するあまり、自身の婚約者であるマリアとの関係をおろそかにしてしまう。セレスもまたマリアに対する嫌がらせを繰り返し、その罪をすべてマリアに着せて楽しんでいた。そんなある日の事、マリアとの関係にしびれを切らしたノレッジはついにマリアとの婚約を破棄してしまう。その時、マリアからある言葉をかけられるのだが、負け惜しみに過ぎないと言ってその言葉を切り捨てる。それが後々、自分に跳ね返ってくるものとも知らず…。
妹の婚約者自慢がウザいので、私の婚約者を紹介したいと思います~妹はただ私から大切な人を奪っただけ~
マルローネ
恋愛
侯爵令嬢のアメリア・リンバークは妹のカリファに婚約者のラニッツ・ポドールイ公爵を奪われた。
だが、アメリアはその後に第一王子殿下のゼラスト・ファーブセンと婚約することになる。
しかし、その事実を知らなかったカリファはアメリアに対して、ラニッツを自慢するようになり──。
「期待外れ」という事で婚約破棄した私に何の用ですか? 「理想の妻(私の妹)」を愛でてくださいな。
百谷シカ
恋愛
「君ならもっとできると思っていたけどな。期待外れだよ」
私はトイファー伯爵令嬢エルミーラ・ヴェールマン。
上記の理由により、婚約者に棄てられた。
「ベリエス様ぁ、もうお会いできないんですかぁ…? ぐすん…」
「ああ、ユリアーナ。君とは離れられない。僕は君と結婚するのさ!」
「本当ですかぁ? 嬉しいです! キャハッ☆彡」
そして双子の妹ユリアーナが、私を蹴落とし、その方の妻になった。
プライドはズタズタ……(笑)
ところが、1年後。
未だ跡継ぎの生まれない事に焦った元婚約者で現在義弟が泣きついて来た。
「君の妹はちょっと頭がおかしいんじゃないか? コウノトリを信じてるぞ!」
いえいえ、そういうのが純真無垢な理想の可愛い妻でしたよね?
あなたが選んだ相手なので、どうぞ一生、愛でて魂すり減らしてくださいませ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる