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ダレンと離婚した私は、執事のアーランを連れて家を出た。
そのまま実家に戻った私は両親に離婚のことを謝罪した。
政略結婚といえど、離婚であれば両家の評判に多少の傷はつくからだ。
誠心誠意謝る私に、両親は笑顔で言う。
「エマ。今はゆっくり休むんだ。お前が落ち着くまで次の縁談は取りつけない」
「そうよ。部屋は掃除しておいたから、気の済むまでここにいなさい」
温かい言葉に私は目がしらが熱くなった。
しかし涙を何とか堪え、私は頷いた。
実家には数日いたが、それからは父が昔使っていた屋敷に住むことにした。
あまり大きな屋敷ではなく、実家の使用人三人とアーランがいれば、大丈夫そうだった。
新天地でアーランが私に言う。
「エマ様。ダレン様ですが、どうやらウララ様と結婚された模様です。領地管理の専門家と会計士も雇い、新たな生活をスタートさせたとか」
相変わらずアーランは行動が早く、私の欲しいものを欲しい時にくれる。
頼れる執事に私はウインクをした。
「じゃあ私たちもそろそろ動くわよ!」
……その後、私は商会を開き、ダレンの領地にある山を買い取った。
その山は私が離婚する少し前に買った山で、私の綿密な調査と分析のもと、金が採れる山であることが判明していた。
離婚する前に、その山の詳細が書かれた紙に、即刻売却すべしと書いておいた。
ダレンが私がいなくなった後に、代わりの人間を誰か雇うだろうと予測していたから。
そしてその人間は、私の領地経営の成績を受けて、私が書いた売却の文字を信じ山を売るだろう。
私は離婚する前にそこまで考えていた。
山を買い取った後は、多額の費用をかけ山を掘削し、大量の金を採ることに成功した。
一気に商会は潤い、掘削費用など気にならないくらいの儲けが出た。
それからしばらくして、屋敷にダレンが訪ねてきた。
アーランと共に、応接間と行くと、ダレンがソファから立ち上がる。
「やっと来たか……この、泥棒女が……」
どうやら私が山を買い取ったことを知っているらしい。
今頃惜しくなって、返せとでも言われるのだろうか。
「お久しぶりです、ダレン様。何か御用ですか?」
「な……白々しいぞ! お前のせいで僕達は経営難に陥っているんだ! お前があの山を買い取ったせいでな!」
「なるほど……」
どうやら新しく雇った専門家には少々荷が重かったらしい。
確かにあの山を掘削していれば、ダレンの家の財政状況は傾くこともなかっただろう。
しかし私の策略に呑まれて、山を売ってしまった彼の家に未来はない。
「エマ! 貴様……僕を嵌めたな? あの山が金山だと知っていて、売却するように仕向けたんだろ! そんなに僕のことが憎いか!?」
この人は何を言っているのだろうか。
私は大きなため息をつくと、彼の向かいのソファに腰を下ろした。
アーランも隣に座って、未だ立ち続けるダレンを見上げる。
私も同じようにダレンを見上げて口を開いた。
「ダレン様。確かに私は意図的にあの山を私の商会で手に入れられるように画策致しました。しかし、先に私を裏切ったのはあなたの方ですよ? そのことをしっかり理解されていますか?」
「うっ……」
ダレンは顔色が悪くなり、それをごまかすようにソファに再び腰を下ろす。
私は追撃をするように言葉を続けた。
「しかし一つだけあなたの家が助かる方法がございます。それは私の商会に経営を任せること。そうすれば私の経営手腕で元通りにして差し上げましょう」
そのまま実家に戻った私は両親に離婚のことを謝罪した。
政略結婚といえど、離婚であれば両家の評判に多少の傷はつくからだ。
誠心誠意謝る私に、両親は笑顔で言う。
「エマ。今はゆっくり休むんだ。お前が落ち着くまで次の縁談は取りつけない」
「そうよ。部屋は掃除しておいたから、気の済むまでここにいなさい」
温かい言葉に私は目がしらが熱くなった。
しかし涙を何とか堪え、私は頷いた。
実家には数日いたが、それからは父が昔使っていた屋敷に住むことにした。
あまり大きな屋敷ではなく、実家の使用人三人とアーランがいれば、大丈夫そうだった。
新天地でアーランが私に言う。
「エマ様。ダレン様ですが、どうやらウララ様と結婚された模様です。領地管理の専門家と会計士も雇い、新たな生活をスタートさせたとか」
相変わらずアーランは行動が早く、私の欲しいものを欲しい時にくれる。
頼れる執事に私はウインクをした。
「じゃあ私たちもそろそろ動くわよ!」
……その後、私は商会を開き、ダレンの領地にある山を買い取った。
その山は私が離婚する少し前に買った山で、私の綿密な調査と分析のもと、金が採れる山であることが判明していた。
離婚する前に、その山の詳細が書かれた紙に、即刻売却すべしと書いておいた。
ダレンが私がいなくなった後に、代わりの人間を誰か雇うだろうと予測していたから。
そしてその人間は、私の領地経営の成績を受けて、私が書いた売却の文字を信じ山を売るだろう。
私は離婚する前にそこまで考えていた。
山を買い取った後は、多額の費用をかけ山を掘削し、大量の金を採ることに成功した。
一気に商会は潤い、掘削費用など気にならないくらいの儲けが出た。
それからしばらくして、屋敷にダレンが訪ねてきた。
アーランと共に、応接間と行くと、ダレンがソファから立ち上がる。
「やっと来たか……この、泥棒女が……」
どうやら私が山を買い取ったことを知っているらしい。
今頃惜しくなって、返せとでも言われるのだろうか。
「お久しぶりです、ダレン様。何か御用ですか?」
「な……白々しいぞ! お前のせいで僕達は経営難に陥っているんだ! お前があの山を買い取ったせいでな!」
「なるほど……」
どうやら新しく雇った専門家には少々荷が重かったらしい。
確かにあの山を掘削していれば、ダレンの家の財政状況は傾くこともなかっただろう。
しかし私の策略に呑まれて、山を売ってしまった彼の家に未来はない。
「エマ! 貴様……僕を嵌めたな? あの山が金山だと知っていて、売却するように仕向けたんだろ! そんなに僕のことが憎いか!?」
この人は何を言っているのだろうか。
私は大きなため息をつくと、彼の向かいのソファに腰を下ろした。
アーランも隣に座って、未だ立ち続けるダレンを見上げる。
私も同じようにダレンを見上げて口を開いた。
「ダレン様。確かに私は意図的にあの山を私の商会で手に入れられるように画策致しました。しかし、先に私を裏切ったのはあなたの方ですよ? そのことをしっかり理解されていますか?」
「うっ……」
ダレンは顔色が悪くなり、それをごまかすようにソファに再び腰を下ろす。
私は追撃をするように言葉を続けた。
「しかし一つだけあなたの家が助かる方法がございます。それは私の商会に経営を任せること。そうすれば私の経営手腕で元通りにして差し上げましょう」
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