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ノアという平民の女性がライオス様の妻に選ばれた時、私は発狂しそうになった。
しかも、あろうことかライオス様は私を彼女の侍女に任命した。
私はこんなにライオス様を愛しているのに。
どうして、そんな意地悪をするのだろう。
考えても答えは出ずに、時間ばかりが消え去っていく。
長い時が経ち、このままではいけないと心が警鐘を鳴らした。
ノアをこの家から追い出し、私がライオス様の妻になるのだ。
この頃には、私はライオス様と体の関係を持っていた。
彼もノアには飽きていたから、私の作戦に二つ返事で乗ってきた。
まず、女を三人金で雇い、ライオス様と恋人のように接している写真を撮る。
それをノアに見せ、不倫しているから離婚をした方がいいと告げる。
しかし証拠の写真は私がこっそり抹消して、彼女を嵌める算段だった。
冤罪をかけた平民のノアは、哀れにこの家を去り妻の座を明け渡す。
計画は成功してノアは消え、私は幸せな日々を取り戻した。
「くそっ……どうしてこうなるんだ……!」
応接間からノアが消え、床を蹴る音が聞こえた。
次いでソファを殴る音。
私は痛む頬を抑えながら、静かに立ち上がった。
「ライオス様……大丈夫ですか?」
ライオス様はイライラしている様子で、子供のように物に当たっていた。
しかしその姿までも愛おしく、私は笑顔で近づく。
「は?」
ライオス様の怒りに歪んだ瞳が、私を睨みつけた。
「元はと言えば、お前のせいだぞ。お前があんな杜撰な計画を押し付けてきたから」
「え? し、しかしこれでもう私たちの愛を邪魔するものは何もありません。私たちの勝利です!」
「寝ぼけたことを言ってるんじゃない! あいつらは僕の弱みを握っているんだぞ! 今は告発しなくても、いずれするに決まっている。くそっ! くそっ!」
「だ、大丈夫です。私が守りますから。命にかえても絶対に守りますから」
深い愛情と共に、ライオス様を抱きしめようとする。
しかし、彼は私をキッと睨みつけると、腹に思い切り拳をめり込ませた。
「うっ……」
私は痛みでその場に崩れ落ちる。
頭上から冷たいライオス様の声がする。
「お前に僕が守れるわけがないだろう。もうどこにでも消えろ。顔も見たくない」
どうして?
どうしてそんな酷いことを言うのです?
私たいは愛し合っていたではありませんか。
心に黒い感情が溢れだす。
私は腹の痛みに耐えながら、おもむろにポケットに手を入れた。
護身用に入れていた小型ナイフ。
ノアに使う予定だったが、予定が変わった。
立ち上がると、ライオス様は応接間の扉に向けて歩いていた。
こちらに背中を見せて、いら立ったような足取りだ。
「こんなの嘘です……」
考えるよりも先に足が動く。
ポケットからナイフをさっと出すと、ライオス様の背中に突き刺した。
短い呻き声をして、ナイフを抜くと、ドクドクと鮮血が流れ出す。
振り向いたライオス様の顔は、恐怖に染まっていた。
それがとても愛おしくて、私は笑みを浮かべる。
「私もすぐに行きますからね。待っていてくださいね」
倒れて動かなくなったライオス様を見下ろして、私はナイフを首元へと走らせた。
これでやっと、永遠の愛が叶う。
しかも、あろうことかライオス様は私を彼女の侍女に任命した。
私はこんなにライオス様を愛しているのに。
どうして、そんな意地悪をするのだろう。
考えても答えは出ずに、時間ばかりが消え去っていく。
長い時が経ち、このままではいけないと心が警鐘を鳴らした。
ノアをこの家から追い出し、私がライオス様の妻になるのだ。
この頃には、私はライオス様と体の関係を持っていた。
彼もノアには飽きていたから、私の作戦に二つ返事で乗ってきた。
まず、女を三人金で雇い、ライオス様と恋人のように接している写真を撮る。
それをノアに見せ、不倫しているから離婚をした方がいいと告げる。
しかし証拠の写真は私がこっそり抹消して、彼女を嵌める算段だった。
冤罪をかけた平民のノアは、哀れにこの家を去り妻の座を明け渡す。
計画は成功してノアは消え、私は幸せな日々を取り戻した。
「くそっ……どうしてこうなるんだ……!」
応接間からノアが消え、床を蹴る音が聞こえた。
次いでソファを殴る音。
私は痛む頬を抑えながら、静かに立ち上がった。
「ライオス様……大丈夫ですか?」
ライオス様はイライラしている様子で、子供のように物に当たっていた。
しかしその姿までも愛おしく、私は笑顔で近づく。
「は?」
ライオス様の怒りに歪んだ瞳が、私を睨みつけた。
「元はと言えば、お前のせいだぞ。お前があんな杜撰な計画を押し付けてきたから」
「え? し、しかしこれでもう私たちの愛を邪魔するものは何もありません。私たちの勝利です!」
「寝ぼけたことを言ってるんじゃない! あいつらは僕の弱みを握っているんだぞ! 今は告発しなくても、いずれするに決まっている。くそっ! くそっ!」
「だ、大丈夫です。私が守りますから。命にかえても絶対に守りますから」
深い愛情と共に、ライオス様を抱きしめようとする。
しかし、彼は私をキッと睨みつけると、腹に思い切り拳をめり込ませた。
「うっ……」
私は痛みでその場に崩れ落ちる。
頭上から冷たいライオス様の声がする。
「お前に僕が守れるわけがないだろう。もうどこにでも消えろ。顔も見たくない」
どうして?
どうしてそんな酷いことを言うのです?
私たいは愛し合っていたではありませんか。
心に黒い感情が溢れだす。
私は腹の痛みに耐えながら、おもむろにポケットに手を入れた。
護身用に入れていた小型ナイフ。
ノアに使う予定だったが、予定が変わった。
立ち上がると、ライオス様は応接間の扉に向けて歩いていた。
こちらに背中を見せて、いら立ったような足取りだ。
「こんなの嘘です……」
考えるよりも先に足が動く。
ポケットからナイフをさっと出すと、ライオス様の背中に突き刺した。
短い呻き声をして、ナイフを抜くと、ドクドクと鮮血が流れ出す。
振り向いたライオス様の顔は、恐怖に染まっていた。
それがとても愛おしくて、私は笑みを浮かべる。
「私もすぐに行きますからね。待っていてくださいね」
倒れて動かなくなったライオス様を見下ろして、私はナイフを首元へと走らせた。
これでやっと、永遠の愛が叶う。
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