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「なるほど……まさかアリスにこんな秘密があったなんて」
ユノ王太子殿下の秘書となって五年。
私は身を粉にしてユノ様を支えてきた。
ユノ様は人付き合いが苦手だから私が代わりにやってあげたし、公務のお手伝いもしてあげた。
ユノ様には私がいないとダメだし、私にもユノ様が必要だ。
私たちは運命という強固な絆で結ばれているのだ。
しかし、ある日突然にユノ様の婚約者が決まった。
相手はアリスという貴族令嬢。
有名な学校を首席で卒業したか知らないけど、見るからにブスだし、尻軽そうだし、とにかくユノ様には微塵も相応しくなかった。
ユノ様も望んだ婚約ではないようで、アリスに厳しく接していた。
それを見て私は心の中でほくそ笑んでいた。
きっとアリスはすぐに音を上げて、婚約解消を懇願してくるはず。
そしてユノ様は気づくのだ、自分にはこの私……ドロシーが必要不可欠だということを!
……だが、そうはならなかった。
ある時からユノ様はアリスに優しくなり、好意的な目を向けるようになっていた。
あろうことか、ユノ様がアリスのことを好きになってしまったのだ。
私は悔しかった。
私の方がユノ様のお役に立てるのに!私の方がユノ様のことを考えているのに!
私の方がユノ様のことを愛しているのに!!!
だから私はアリスをユノ様の前から消そうと考えた。
もちろん殺人など犯さない、アリスに後ろめたい事実でもあればそれが一番だ。
そして私は探偵を何人も雇い、やっと見つけた。
「……ドロシーか? 入ってくれ」
扉を開けると、ユノ様が鏡で髪型をチェックしていた。
「ちょうどよかったよ。今日アリスと食事に出かけるんだけど、この髪型変じゃないかな? 婚約一年記念だしちゃんとしないとな」
「……似合っていますよ、ユノ様」
私はあんな女みたいに媚びた声は出さない。
いつだって冷静に、ユノ様が欲しい答えを導きだせる。
きっと学力だって私の方が高いに決まっている。
「そうか……それならよかった」
安心したようにユノ様は息をはいた。
顔が少し赤らんでいて、心がチクリと痛んだ。
「ユノ様。そんなことより、これを見て頂けませんか?」
私は手に持った紙をユノ様に渡した。
彼は一瞬目を大きく見開き、狼狽えた声を出す。
「……これは本当なのか? こ、このことを父上は知って……」
「誰も知っていませんよ。私とユノ様以外は……」
私はユノ様の耳に口を近づけた。
「行動するなら早い方がいいですよ?」
そう言うと、ユノ様は急いで部屋を出て行った。
彼の後ろ姿を見つめながら、私はふっと笑みをこぼす。
「悲しむあなたは、私が支えてあげますからね?」
ユノ王太子殿下の秘書となって五年。
私は身を粉にしてユノ様を支えてきた。
ユノ様は人付き合いが苦手だから私が代わりにやってあげたし、公務のお手伝いもしてあげた。
ユノ様には私がいないとダメだし、私にもユノ様が必要だ。
私たちは運命という強固な絆で結ばれているのだ。
しかし、ある日突然にユノ様の婚約者が決まった。
相手はアリスという貴族令嬢。
有名な学校を首席で卒業したか知らないけど、見るからにブスだし、尻軽そうだし、とにかくユノ様には微塵も相応しくなかった。
ユノ様も望んだ婚約ではないようで、アリスに厳しく接していた。
それを見て私は心の中でほくそ笑んでいた。
きっとアリスはすぐに音を上げて、婚約解消を懇願してくるはず。
そしてユノ様は気づくのだ、自分にはこの私……ドロシーが必要不可欠だということを!
……だが、そうはならなかった。
ある時からユノ様はアリスに優しくなり、好意的な目を向けるようになっていた。
あろうことか、ユノ様がアリスのことを好きになってしまったのだ。
私は悔しかった。
私の方がユノ様のお役に立てるのに!私の方がユノ様のことを考えているのに!
私の方がユノ様のことを愛しているのに!!!
だから私はアリスをユノ様の前から消そうと考えた。
もちろん殺人など犯さない、アリスに後ろめたい事実でもあればそれが一番だ。
そして私は探偵を何人も雇い、やっと見つけた。
「……ドロシーか? 入ってくれ」
扉を開けると、ユノ様が鏡で髪型をチェックしていた。
「ちょうどよかったよ。今日アリスと食事に出かけるんだけど、この髪型変じゃないかな? 婚約一年記念だしちゃんとしないとな」
「……似合っていますよ、ユノ様」
私はあんな女みたいに媚びた声は出さない。
いつだって冷静に、ユノ様が欲しい答えを導きだせる。
きっと学力だって私の方が高いに決まっている。
「そうか……それならよかった」
安心したようにユノ様は息をはいた。
顔が少し赤らんでいて、心がチクリと痛んだ。
「ユノ様。そんなことより、これを見て頂けませんか?」
私は手に持った紙をユノ様に渡した。
彼は一瞬目を大きく見開き、狼狽えた声を出す。
「……これは本当なのか? こ、このことを父上は知って……」
「誰も知っていませんよ。私とユノ様以外は……」
私はユノ様の耳に口を近づけた。
「行動するなら早い方がいいですよ?」
そう言うと、ユノ様は急いで部屋を出て行った。
彼の後ろ姿を見つめながら、私はふっと笑みをこぼす。
「悲しむあなたは、私が支えてあげますからね?」
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