23 / 56
第二十三話:鈴蘭
しおりを挟む
残りの三日間を平和に終えた最勝講。
検非違使が岡っ引き、そして警察という組織に再編成されてからは行われてこなかった着鈦政 (検非違使の権力を誇示するために囚人を鞭打つさまを一般人に見せしめる行事)は形を変え、演劇として上演された。
その後の日々も主上が皇帝として行う様々な神事を見学した各国の要人たち。
幸いにも、特に事件は起こることなく、平和に時は過ぎていった。
そして、いよいよ一週間後に控えた祇宮御霊会。
インフルエンザやマラリアを怨霊の仕業だと考えた昔の朝廷が、それを鎮めるために開いた慰霊祭が最初だと言われている。
病気の平癒には効果が無かったが、悪霊退治には一定の効果を見せているこの祇宮祭。
開催期間中は京中の術者たちが集まり、祭の雰囲気に集まってくる霊たちを一網打尽にする。
東西南北に全部で八つある、妖魔や凶鬼が湧きやすい位置に設けられた封印門である太門にも強力な祈祷が施された鉾が立てられ、術者対妖魔と凶鬼の壮絶な戦いが行われる。
鉾は全部で六十六本用意される。
各宗教、宗派の総本山がそれぞれに祈祷を施すのだが、今年もわたしのもとに依頼が来た。
毎年、杏守家からも一本出しているのだ。
仙術師は祈祷を使うことが出来ない。
その代わりに、仙子族の血をもって強力な呪術をかける。
「竜胆もやってみますか?」
「いいの⁉」
「もちろんです。では、何の呪術にしましょうか」
二人で資料を漁りながらかける呪術を探していく。
やっと仕事部屋にすべての家具を運び終わり、本棚にはたくさんの資料が収められている。
「これは? 竜血の呪術」
「いいですね。心停止の呪は妖魔や凶鬼にもよく効きますから」
「触媒は……、鈴蘭か」
「空枝空間の薬草畑にあったはずです。とってきますね」
「はぁい」
鈴蘭を四株ほどとって戻ると、部屋には竜胆の他に特級陰陽術師が二人立っていた。
「何か御用ですか?」
「今年は何の呪術を使うのか聞いておこうと思ってな。我々と被られては困るのだ」
ただ単にわたしが身の丈に合わないほどの部屋を主上からもらい受けたことが伝わったのだろう。
偵察に来たのだ、彼らは。気に食わないのだろう。
「そちらは祈祷でしょう? 被ることはないと思いますが」
「生意気な小娘め。いいから、なんの呪術を施すのか言い給え」
このくらいのいびりで喧嘩をするほどくだらないことはない。
わたしは素直に教えて差し上げることにした。
「竜血です」
「な! またそんな高度なものを……。ふんっ。せいぜい失敗しないように頑張るんだな」
「ご心配痛み入ります」
「ふんっ」
そよ風にも満たない嫌味を振りまいて帰っていった陰陽術師たち。
あれでよくも特級になれたものだ。
「あいつら私には話しかけないのよ。本当、嫌な人たちね」
「若い娘が皇帝陛下に重用されていることが我慢ならないんでしょうね。器が小さいんですよ」
「もはや割れちゃってるんじゃない? その器」
「そうかもしれませんね」
わたしも聖人君子ではない。悪意の一つや二つ口にすることだってあるのだ。
「さぁ、気を取り直して呪術をかけちゃいましょう」
「そうしよそうしよ」
わたしは液化薬を飲み、血を液体にすると、杖で手のひらを切って硯に注いだ。
「痛そう……」
「痛いですよ。でもすぐ治りますし」
血液で墨をすり、筆に含ませると、鉾に塗っていく。
鉾が真っ黒になったところで持ち上げると、支えもないのにそれはまっすぐと立ち上がった。
わたしと竜胆は鈴蘭を持って鉾の前に立ち、交互に唱えた。
――止まれ 止まれ 命の鐘よ
胸の鼓動が一定ではなくなり、強弱をつけながらドクドクと音を立て始めた。
――揺れろ 揺れろ 何も見えぬ
視界が狭まり、足がふらつく。
――切れる 切れる 縛るもの
意識が飛びそうなほどの不快な浮遊感。
――落ちる 落ちる 深淵の底
次の瞬間、心臓が胸の中で落ちたようにドクンと強く打った。
鈴蘭が昏く点滅し、鉾に吸い込まれていく。
鉾は元の色を取り戻し、まるで何事もなかったかのようにパタリとわたしの腕の中へと傾いた。
「眩暈がするわね。結構持っていかれたわ」
「強い呪術ですからね。かなりの量の力を吸い取られたと思います」
鉾を壁に立てかけると、二人でふかふかの座布団に座り、足を延ばした。
「そういえば、あの陰陽術師たち、自分たちが使う祈祷を教えてくれなかったわね」
「いつもそうです」
「どうする? もっと強い祈祷で自慢してきたら」
「あちらは百人以上いますからね。わたしたちよりも強い祈祷じゃないと困りますよ」
「あはは。それもそうね」
わたしたちの担当は北東の太門。東は新人陰陽術師たちが担当するらしい。
「設置っていつするの?」
「祇宮祭当日の未明です」
「そうか。呪を定着させないといけないものね」
呪にも酒や肉と同じように熟成という概念が存在する。
時が経った呪ほど強いのだ。
「今日のお仕事は後何があるの?」
「最勝講のときに検品した献上品の中で避けておいた呪物の解呪ですかね」
「え! 陰陽術師たちがやったんじゃないの?」
「解呪しきれなかったものがあるそうです」
「あらあら」
「まぁ、献上品の解呪は新人がやらされることも多いので、仕方ないんです」
「じゃぁ、さっさとやってもっと楽しそうな仕事貰いに行きましょうよ」
「そうしましょう」
わたしと竜胆は陰陽省へ出向き、新人陰陽術師たちから品を三つ受け取ると、また部屋へと戻って来た。
「檜扇と彩色薫香蝋燭のセットと口紅ね」
「嫌な予感しかしませんね」
竜胆が手に取って調べてみると、檜扇は飾り紐が人間の腸で出来ており、彩色薫香蝋燭と口紅は人間の脂肪を溶かして再度固めた油から出来ていた。
「本当に気持ち悪いけど、ここまで人間を素材として使いこなせるって、あいつすごいわね」
「さっさと解呪しちゃいましょう。もう本当に背中がゾワゾワします」
さっさと終わらせようと檜扇に杖を突き立てようとしたとき、竜胆がひどく顔を青ざめさせて口紅を見つめ、「これって……」と言いながらわたしを見た。
「どうしたんですか?」
「あのさ……。翼禮がほとんどお化粧しないのは知ってるんだけど、ひとにはそれぞれ似合う色っていうのがあるのはわかる?」
「わかりますよ。あの、パーソナルカラーとかっていうやつですよね。イエローベース、ブルーベースっていう」
「そう……。翼禮はたぶんイエローベースの秋。そして……」
竜胆はわたしのことをチラチラ見ながら言った。
「この口紅の色も、その秋にぴったりの色なのよね……。口紅に彫られている装飾、杏だし」
竜胆が口紅をくるりと回すと、出てきた口紅には杏の木の彫刻が施されており、色もとても美しいワインレッドだった。
「口にしたくもないですが……、わたしのために作ったってことですか」
「多分、というか絶対そう。皇帝陛下のお后様に、イエベ秋はいないもの。みんな、イエベ春かブルべ冬。ちなみに私はブルべ夏」
悪寒がした。
油断したら吐いてしまうそうだ。
「捨てましょう。解呪したらすぐに。二度と見たくありません」
「そ、そうね。花折がいかれてるのは明白だしね」
わたしは胃酸が逆流したようなムカつきと、ストレスによる頭痛を感じ、さらに気分が悪くなった。
花折は呪などなくともわたしの気分を害することが出来るようだ。
わたしは竜胆が解呪した口紅を受け取ると、放り投げ、仙術で火をつけて灰にした。
本当ならば呪詛返しでコテンパンにしてやりたいところだが、花折のように高度な技術を持ったものは、呪の跳ね返り先を別の人物にしている可能性がある。
わたしは深呼吸を繰り返しながら波立つ精神を鎮め、怒りを手放した。
雨の匂いを感じた。
検非違使が岡っ引き、そして警察という組織に再編成されてからは行われてこなかった着鈦政 (検非違使の権力を誇示するために囚人を鞭打つさまを一般人に見せしめる行事)は形を変え、演劇として上演された。
その後の日々も主上が皇帝として行う様々な神事を見学した各国の要人たち。
幸いにも、特に事件は起こることなく、平和に時は過ぎていった。
そして、いよいよ一週間後に控えた祇宮御霊会。
インフルエンザやマラリアを怨霊の仕業だと考えた昔の朝廷が、それを鎮めるために開いた慰霊祭が最初だと言われている。
病気の平癒には効果が無かったが、悪霊退治には一定の効果を見せているこの祇宮祭。
開催期間中は京中の術者たちが集まり、祭の雰囲気に集まってくる霊たちを一網打尽にする。
東西南北に全部で八つある、妖魔や凶鬼が湧きやすい位置に設けられた封印門である太門にも強力な祈祷が施された鉾が立てられ、術者対妖魔と凶鬼の壮絶な戦いが行われる。
鉾は全部で六十六本用意される。
各宗教、宗派の総本山がそれぞれに祈祷を施すのだが、今年もわたしのもとに依頼が来た。
毎年、杏守家からも一本出しているのだ。
仙術師は祈祷を使うことが出来ない。
その代わりに、仙子族の血をもって強力な呪術をかける。
「竜胆もやってみますか?」
「いいの⁉」
「もちろんです。では、何の呪術にしましょうか」
二人で資料を漁りながらかける呪術を探していく。
やっと仕事部屋にすべての家具を運び終わり、本棚にはたくさんの資料が収められている。
「これは? 竜血の呪術」
「いいですね。心停止の呪は妖魔や凶鬼にもよく効きますから」
「触媒は……、鈴蘭か」
「空枝空間の薬草畑にあったはずです。とってきますね」
「はぁい」
鈴蘭を四株ほどとって戻ると、部屋には竜胆の他に特級陰陽術師が二人立っていた。
「何か御用ですか?」
「今年は何の呪術を使うのか聞いておこうと思ってな。我々と被られては困るのだ」
ただ単にわたしが身の丈に合わないほどの部屋を主上からもらい受けたことが伝わったのだろう。
偵察に来たのだ、彼らは。気に食わないのだろう。
「そちらは祈祷でしょう? 被ることはないと思いますが」
「生意気な小娘め。いいから、なんの呪術を施すのか言い給え」
このくらいのいびりで喧嘩をするほどくだらないことはない。
わたしは素直に教えて差し上げることにした。
「竜血です」
「な! またそんな高度なものを……。ふんっ。せいぜい失敗しないように頑張るんだな」
「ご心配痛み入ります」
「ふんっ」
そよ風にも満たない嫌味を振りまいて帰っていった陰陽術師たち。
あれでよくも特級になれたものだ。
「あいつら私には話しかけないのよ。本当、嫌な人たちね」
「若い娘が皇帝陛下に重用されていることが我慢ならないんでしょうね。器が小さいんですよ」
「もはや割れちゃってるんじゃない? その器」
「そうかもしれませんね」
わたしも聖人君子ではない。悪意の一つや二つ口にすることだってあるのだ。
「さぁ、気を取り直して呪術をかけちゃいましょう」
「そうしよそうしよ」
わたしは液化薬を飲み、血を液体にすると、杖で手のひらを切って硯に注いだ。
「痛そう……」
「痛いですよ。でもすぐ治りますし」
血液で墨をすり、筆に含ませると、鉾に塗っていく。
鉾が真っ黒になったところで持ち上げると、支えもないのにそれはまっすぐと立ち上がった。
わたしと竜胆は鈴蘭を持って鉾の前に立ち、交互に唱えた。
――止まれ 止まれ 命の鐘よ
胸の鼓動が一定ではなくなり、強弱をつけながらドクドクと音を立て始めた。
――揺れろ 揺れろ 何も見えぬ
視界が狭まり、足がふらつく。
――切れる 切れる 縛るもの
意識が飛びそうなほどの不快な浮遊感。
――落ちる 落ちる 深淵の底
次の瞬間、心臓が胸の中で落ちたようにドクンと強く打った。
鈴蘭が昏く点滅し、鉾に吸い込まれていく。
鉾は元の色を取り戻し、まるで何事もなかったかのようにパタリとわたしの腕の中へと傾いた。
「眩暈がするわね。結構持っていかれたわ」
「強い呪術ですからね。かなりの量の力を吸い取られたと思います」
鉾を壁に立てかけると、二人でふかふかの座布団に座り、足を延ばした。
「そういえば、あの陰陽術師たち、自分たちが使う祈祷を教えてくれなかったわね」
「いつもそうです」
「どうする? もっと強い祈祷で自慢してきたら」
「あちらは百人以上いますからね。わたしたちよりも強い祈祷じゃないと困りますよ」
「あはは。それもそうね」
わたしたちの担当は北東の太門。東は新人陰陽術師たちが担当するらしい。
「設置っていつするの?」
「祇宮祭当日の未明です」
「そうか。呪を定着させないといけないものね」
呪にも酒や肉と同じように熟成という概念が存在する。
時が経った呪ほど強いのだ。
「今日のお仕事は後何があるの?」
「最勝講のときに検品した献上品の中で避けておいた呪物の解呪ですかね」
「え! 陰陽術師たちがやったんじゃないの?」
「解呪しきれなかったものがあるそうです」
「あらあら」
「まぁ、献上品の解呪は新人がやらされることも多いので、仕方ないんです」
「じゃぁ、さっさとやってもっと楽しそうな仕事貰いに行きましょうよ」
「そうしましょう」
わたしと竜胆は陰陽省へ出向き、新人陰陽術師たちから品を三つ受け取ると、また部屋へと戻って来た。
「檜扇と彩色薫香蝋燭のセットと口紅ね」
「嫌な予感しかしませんね」
竜胆が手に取って調べてみると、檜扇は飾り紐が人間の腸で出来ており、彩色薫香蝋燭と口紅は人間の脂肪を溶かして再度固めた油から出来ていた。
「本当に気持ち悪いけど、ここまで人間を素材として使いこなせるって、あいつすごいわね」
「さっさと解呪しちゃいましょう。もう本当に背中がゾワゾワします」
さっさと終わらせようと檜扇に杖を突き立てようとしたとき、竜胆がひどく顔を青ざめさせて口紅を見つめ、「これって……」と言いながらわたしを見た。
「どうしたんですか?」
「あのさ……。翼禮がほとんどお化粧しないのは知ってるんだけど、ひとにはそれぞれ似合う色っていうのがあるのはわかる?」
「わかりますよ。あの、パーソナルカラーとかっていうやつですよね。イエローベース、ブルーベースっていう」
「そう……。翼禮はたぶんイエローベースの秋。そして……」
竜胆はわたしのことをチラチラ見ながら言った。
「この口紅の色も、その秋にぴったりの色なのよね……。口紅に彫られている装飾、杏だし」
竜胆が口紅をくるりと回すと、出てきた口紅には杏の木の彫刻が施されており、色もとても美しいワインレッドだった。
「口にしたくもないですが……、わたしのために作ったってことですか」
「多分、というか絶対そう。皇帝陛下のお后様に、イエベ秋はいないもの。みんな、イエベ春かブルべ冬。ちなみに私はブルべ夏」
悪寒がした。
油断したら吐いてしまうそうだ。
「捨てましょう。解呪したらすぐに。二度と見たくありません」
「そ、そうね。花折がいかれてるのは明白だしね」
わたしは胃酸が逆流したようなムカつきと、ストレスによる頭痛を感じ、さらに気分が悪くなった。
花折は呪などなくともわたしの気分を害することが出来るようだ。
わたしは竜胆が解呪した口紅を受け取ると、放り投げ、仙術で火をつけて灰にした。
本当ならば呪詛返しでコテンパンにしてやりたいところだが、花折のように高度な技術を持ったものは、呪の跳ね返り先を別の人物にしている可能性がある。
わたしは深呼吸を繰り返しながら波立つ精神を鎮め、怒りを手放した。
雨の匂いを感じた。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!
ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、
1年以内に妊娠そして出産。
跡継ぎを産んで女主人以上の
役割を果たしていたし、
円満だと思っていた。
夫の本音を聞くまでは。
そして息子が他人に思えた。
いてもいなくてもいい存在?萎んだ花?
分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。
* 作り話です
* 完結保証付き
* 暇つぶしにどうぞ
選ばれたのは美人の親友
杉本凪咲
恋愛
侯爵令息ルドガーの妻となったエルは、良き妻になろうと奮闘していた。しかし突然にルドガーはエルに離婚を宣言し、あろうことかエルの親友であるレベッカと関係を持った。悔しさと怒りで泣き叫ぶエルだが、最後には離婚を決意して縁を切る。程なくして、そんな彼女に新しい縁談が舞い込んできたが、縁を切ったはずのレベッカが現れる。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
夫を愛することはやめました。
杉本凪咲
恋愛
私はただ夫に好かれたかった。毎日多くの時間をかけて丹念に化粧を施し、豊富な教養も身につけた。しかし夫は私を愛することはなく、別の女性へと愛を向けた。夫と彼女の不倫現場を目撃した時、私は強いショックを受けて、自分が隣国の王女であった時の記憶が蘇る。それを知った夫は手のひらを返したように愛を囁くが、もう既に彼への愛は尽きていた。
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
形だけの妻ですので
hana
恋愛
結婚半年で夫のワルツは堂々と不倫をした。
相手は伯爵令嬢のアリアナ。
栗色の長い髪が印象的な、しかし狡猾そうな女性だった。
形だけの妻である私は黙認を強制されるが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる