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10. 待ち合わせ
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土曜日、朝早く目を覚ました俺は手早く朝食を済ませて身支度を整える。ライアンとの待ち合わせにデートを楽しみにする学生のように胸が高鳴る。
デート先がダンジョンなんて殺伐としたところではあるけれど。別にデートでもないけど。
俺は待ち合わせに十分余裕を持って車に探索セットを積み込むとナビにライアンからメールがあった住所を打ち込む。しばらく検索が走ったあとナビが住所の場所を表示する。
「あぁ、あそこの大学の近くか。」
ナビが指し示す場所の側には有名な体育大学の名前が表示されている。ナビの縮尺や表示位置を変え、大体の道順を確認すると車を発進させた。
待ち合わせの15分前には指定の住所の位置に着いた。運転席の窓を開け、外を見る俺の目の前には塀に囲まれた大きなマンションが建っている。門のところに目を向けるとそこにはマンションが何であるかを告げる札が掛かっていた。
〇〇体育大学学生寮
「いやいやいや、さすがに学生ってことはないだろ。仮に学生だったとしても二十歳過ぎてたら問題ないよな。でも、もしまだ19とかだったりしたら……。いや、あの精悍な顔つきと色気で学生ってことはないだろ。確かにスポーツやってそうな凄い鍛えてる体ではあったけど、探索者ならそれくらいいるだろうし。そうだ、待ち合わせの目印になり易いからここにしたんだろ。やっぱりいきなり住んでるところの住所を教えるわけないよな。」
「何ぶつぶつ言ってるんだよ。」
「へっ?」
ハンドルに頭を預け、俯いて戸惑っていると窓の外から声を掛けられた。
「おはようさん。早かったな。」
窓の外にはリュックを背負ったライアンの姿があった。
「えっ。あ、あぁ。おはよう。車だから渋滞に巻き込まれて遅れたりしないようにな。」
「そうか。わるいな。迎えに来させて。」
「い、いや、それは気にしなくていい。それより、……今どこから来た?」
「どこって、そこから。」
そう言って親指を立てるとライアンの後ろにある学生寮を指さす。それに俺はわずかに青ざめる。
「ライアン、お前まさか学生か⁉」
「……あぁ、そういうことか。」
納得したといった風に頷いたライアンはニヤリと笑う。
「安心しろよ。俺はまだ学生だが21だぜ。顔とか歳のことはいつものことだけどよ。だから大地が俺に手を出しても。俺が大地に手を出しても問題なしだ。」
「なっ……!」
窓から顔を入れ、囁くように言ったライアンを顔を真っ赤にして凝視する。そういう所が学生らしくないって言うんだ。
「そもそも日本人の顔立ちが幼すぎるんだ。」
「はぁ~。まぁいい。とりあえず乗れよ。荷物は後部座席に積んでくれ。」
窓から顔を抜き、今言ったことが冗談、もしくは何もなかったかのように振舞うライアンに思わずため息が漏れる。
始めてあった時のロッカールームでもそうだったけど振り回されてるなぁ、俺。
ライアンが荷物を後部座席に乗せ、助手席に乗り込む。シートベルトをしっかり締めたことを確認して車を発進させた。
ダンジョンに向かう間にダンジョン内での行動やドロップ品の分配について打ち合わせをしておく。
「ダンジョン内での陣形とか行動ことだけど。」
「そうだなぁ。とりあえず俺が先頭でその後ろをついて来てくれ。知ってることもあるかもしれないけど、道中色々説明しながら進むわ。何かあれば都度確認して対応な。」
「わかった。モンスターはどうする?」
「単体のモンスターで大地が戦ったことがない奴なら大地がソロでやってみるといい。戦ったことがあるヤツなら交互だな。グループのモンスターなら2人でやるぞ。俺が引き付けるから大地が遊撃な。」
「俺は助かるが、いいのか?」
「ノープロ、ノープロ。装備の強化ができてれば12階層で活動してるんだぜ。装備強化なしでも肉体の強化はそのままだからな。5階層までのモンスターなら直撃貰ったって傷一つ負わねぇよ。」
ライアンはカラカラと快活に笑い、手を振って問題ないとアピールした。
「そうか、それじゃあ悪いけど頼むわ。」
「任せとけって。」
「あとはドロップ品の分配だけど、俺が護衛してもらう様なもんだし。ライアンが7割、俺が3割でいいか?」
「は?」
俺が分配率について話すとライアンは笑顔を引っ込め眉間に皺を寄せて不機嫌そうにこちらを見た。
各階層での戦闘するためにライアンを付き合わせることになるし指導料も考えるとそれでも少ないか?
「っと、悪いな。8:2くらいか?」
「悪いな、こういう時の相場を知らないんだ。」
「……馬鹿にしてんのか?」
ライアンが出す雰囲気がさらに険悪になっていく。
「じゃあ9:1か?悪いな、こういう時の相場を知らな「ちっげーよ!!5:5に決まってんだろ!!」」
俺が9:1を提案するとライアンが叫ぶように遮った。
「はぁ~……。そもそも探索は俺から誘ったことだろ。」
一度大きなため息をつき、気持ちを落ち着かせるようにしてから続けた。
「俺は大地が気になって声を掛けたし、あんだけアピールしてただろ。そんな巻き上げるようなことをするわけないだろ。そういうことをする奴だと思ってたのかよ。」
「別にそんなつもりだったんじゃないんだ。悪い。」
「分かればいいんだけどよ。第一そんな指導料を取るようなことをするなら探索に誘った時に説明するだろ。」
「そうか。それもそうだな。」
「だろ。こんな直前に分け前の話するとか悪徳だろ。」
そう言ってまた笑いだしたライアンにつられて俺も笑った。
「……それで、どうなんだよ。」
そこでふとライアンが真面目な顔になった。さっきまでの快活な笑顔とのギャップにドキリとする。
「ど、どうって?」
「今言ったろ。あれだけ露骨にアピールしてたんだぞ。目逸らしたり、赤くなったり反応は良さそうだったが、正直なところどうなんだよ。」
「あ~…その、何だ。ライアンは「待った、やっぱ無し!!」……えっ?」
突然のやっぱ無し宣言に思考が思わずフリーズする。やっぱりアピールしてきてたのは何かの間違いだったか。
「っと悪い。勘違いすんなよ。」
残念に思ってたのが顔に出ていたのかライアンが少し慌てたように続ける。
「結果がどっちであれ、今聞くとダンジョン探索に影響しそうだからな。また今度聞くわ。」
「……そっか、わかった。じゃあまた今度な。」
そうして再びダンジョン内での動きについて話を詰めながら横浜ダンジョンに向かった。
デート先がダンジョンなんて殺伐としたところではあるけれど。別にデートでもないけど。
俺は待ち合わせに十分余裕を持って車に探索セットを積み込むとナビにライアンからメールがあった住所を打ち込む。しばらく検索が走ったあとナビが住所の場所を表示する。
「あぁ、あそこの大学の近くか。」
ナビが指し示す場所の側には有名な体育大学の名前が表示されている。ナビの縮尺や表示位置を変え、大体の道順を確認すると車を発進させた。
待ち合わせの15分前には指定の住所の位置に着いた。運転席の窓を開け、外を見る俺の目の前には塀に囲まれた大きなマンションが建っている。門のところに目を向けるとそこにはマンションが何であるかを告げる札が掛かっていた。
〇〇体育大学学生寮
「いやいやいや、さすがに学生ってことはないだろ。仮に学生だったとしても二十歳過ぎてたら問題ないよな。でも、もしまだ19とかだったりしたら……。いや、あの精悍な顔つきと色気で学生ってことはないだろ。確かにスポーツやってそうな凄い鍛えてる体ではあったけど、探索者ならそれくらいいるだろうし。そうだ、待ち合わせの目印になり易いからここにしたんだろ。やっぱりいきなり住んでるところの住所を教えるわけないよな。」
「何ぶつぶつ言ってるんだよ。」
「へっ?」
ハンドルに頭を預け、俯いて戸惑っていると窓の外から声を掛けられた。
「おはようさん。早かったな。」
窓の外にはリュックを背負ったライアンの姿があった。
「えっ。あ、あぁ。おはよう。車だから渋滞に巻き込まれて遅れたりしないようにな。」
「そうか。わるいな。迎えに来させて。」
「い、いや、それは気にしなくていい。それより、……今どこから来た?」
「どこって、そこから。」
そう言って親指を立てるとライアンの後ろにある学生寮を指さす。それに俺はわずかに青ざめる。
「ライアン、お前まさか学生か⁉」
「……あぁ、そういうことか。」
納得したといった風に頷いたライアンはニヤリと笑う。
「安心しろよ。俺はまだ学生だが21だぜ。顔とか歳のことはいつものことだけどよ。だから大地が俺に手を出しても。俺が大地に手を出しても問題なしだ。」
「なっ……!」
窓から顔を入れ、囁くように言ったライアンを顔を真っ赤にして凝視する。そういう所が学生らしくないって言うんだ。
「そもそも日本人の顔立ちが幼すぎるんだ。」
「はぁ~。まぁいい。とりあえず乗れよ。荷物は後部座席に積んでくれ。」
窓から顔を抜き、今言ったことが冗談、もしくは何もなかったかのように振舞うライアンに思わずため息が漏れる。
始めてあった時のロッカールームでもそうだったけど振り回されてるなぁ、俺。
ライアンが荷物を後部座席に乗せ、助手席に乗り込む。シートベルトをしっかり締めたことを確認して車を発進させた。
ダンジョンに向かう間にダンジョン内での行動やドロップ品の分配について打ち合わせをしておく。
「ダンジョン内での陣形とか行動ことだけど。」
「そうだなぁ。とりあえず俺が先頭でその後ろをついて来てくれ。知ってることもあるかもしれないけど、道中色々説明しながら進むわ。何かあれば都度確認して対応な。」
「わかった。モンスターはどうする?」
「単体のモンスターで大地が戦ったことがない奴なら大地がソロでやってみるといい。戦ったことがあるヤツなら交互だな。グループのモンスターなら2人でやるぞ。俺が引き付けるから大地が遊撃な。」
「俺は助かるが、いいのか?」
「ノープロ、ノープロ。装備の強化ができてれば12階層で活動してるんだぜ。装備強化なしでも肉体の強化はそのままだからな。5階層までのモンスターなら直撃貰ったって傷一つ負わねぇよ。」
ライアンはカラカラと快活に笑い、手を振って問題ないとアピールした。
「そうか、それじゃあ悪いけど頼むわ。」
「任せとけって。」
「あとはドロップ品の分配だけど、俺が護衛してもらう様なもんだし。ライアンが7割、俺が3割でいいか?」
「は?」
俺が分配率について話すとライアンは笑顔を引っ込め眉間に皺を寄せて不機嫌そうにこちらを見た。
各階層での戦闘するためにライアンを付き合わせることになるし指導料も考えるとそれでも少ないか?
「っと、悪いな。8:2くらいか?」
「悪いな、こういう時の相場を知らないんだ。」
「……馬鹿にしてんのか?」
ライアンが出す雰囲気がさらに険悪になっていく。
「じゃあ9:1か?悪いな、こういう時の相場を知らな「ちっげーよ!!5:5に決まってんだろ!!」」
俺が9:1を提案するとライアンが叫ぶように遮った。
「はぁ~……。そもそも探索は俺から誘ったことだろ。」
一度大きなため息をつき、気持ちを落ち着かせるようにしてから続けた。
「俺は大地が気になって声を掛けたし、あんだけアピールしてただろ。そんな巻き上げるようなことをするわけないだろ。そういうことをする奴だと思ってたのかよ。」
「別にそんなつもりだったんじゃないんだ。悪い。」
「分かればいいんだけどよ。第一そんな指導料を取るようなことをするなら探索に誘った時に説明するだろ。」
「そうか。それもそうだな。」
「だろ。こんな直前に分け前の話するとか悪徳だろ。」
そう言ってまた笑いだしたライアンにつられて俺も笑った。
「……それで、どうなんだよ。」
そこでふとライアンが真面目な顔になった。さっきまでの快活な笑顔とのギャップにドキリとする。
「ど、どうって?」
「今言ったろ。あれだけ露骨にアピールしてたんだぞ。目逸らしたり、赤くなったり反応は良さそうだったが、正直なところどうなんだよ。」
「あ~…その、何だ。ライアンは「待った、やっぱ無し!!」……えっ?」
突然のやっぱ無し宣言に思考が思わずフリーズする。やっぱりアピールしてきてたのは何かの間違いだったか。
「っと悪い。勘違いすんなよ。」
残念に思ってたのが顔に出ていたのかライアンが少し慌てたように続ける。
「結果がどっちであれ、今聞くとダンジョン探索に影響しそうだからな。また今度聞くわ。」
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