事故ってダンジョン攻略したら特典でやらかした

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8.5. 未確認のドロップ品

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今日もいつも通り買取カウンターの業務に着く。

持ち込まれるものはたいていがコアで毛皮や角やら牙やらモンスターの一部が混ざっている。数は全部で15個程度で20個あれば多い方だ。

「〇番の方、カウンターにお越しください。」

対応が終わって次の人を呼ぶと先週も見た男性がカウンターにやってきた。

「お待たせ致しました。ダンジョンで取得したアイテムをお預かりします。」

男性がパンパン膨らんだカバンをカウンターに乗せ、中身を並べていく。先週以上のその量に顔が引きつりそうになるのを必死に抑える。

「今回も多いですね。」
「あっ、先週のこと覚えてましたか。」

1階層の角ウサギのドロップ品とはいえ一度にあれだけの数を持ってきた人の顔を忘れられるわけがない。男性も私が受付をしたことを覚えていたみたいだ。

「はい。一度にこれだけの量が持ち込まれることはありませんでしたから。持ち込まれる物の数はだいたい15から20個くらいで30個を越えたことはありません。」

男性が出したものを確認しながら種類ごとに分けていくと見たことがない瓶に目が留まる。

「この中瓶は見たことがないですね。」
「そうなんですか?」
「えぇ、この瓶はどこでドロップしましたか?」
「2階層のスライムからですけど。」
「そうですか。」

一応検索を掛けるがスライムのドロップ品リストに中瓶のことは載っていない。低階層のスライムはどのダンジョンでもすでに何度も討伐され、ドロップ品は出尽くしているはず。もし出るとすればどのモンスターからもランダムにドロップすると言われているスキルカードかポーション類、特別な効果を宿したマジックアイテムだが、これまでに見つかっているどのポーションとも違う。

私は念のため2階層のスライムのドロップ品である旨と要精密鑑定のメモ書きを貼って鑑定に回した。

結果、また鑑定室が騒ぎになった。鑑定の結果、中瓶の中身は王水というほぼすべての金属を溶解させる濃塩酸と濃硝酸の混合液だと分かった。危険物のため強制買取になるが騒ぎになった理由はそこではない。

低階層のモンスターのドロップ品であるにも関わらず過去ドロップが確認されていないアイテムなのだ。鑑定ではどのモンスターからドロップしたか分からないがため本当にスライムのドロップ品なのか疑う声が上がった。詳細を聞き取りするべきという意見が上がったが他に持ち込まれたドロップ品が2階層までのモンスターのドロップ品であることと、1本だけであること、持ち込んだ量以外に他に不審な点がないことから持ち込んだ探索者への詳細な聞き込みは見送られた。

その代わり、要観察にリストに載せることになった。今後この人のダンジョン入退場記録や持ち込んだドロップ品はすべて内密で詳細な記録が残ることになる。そして、不審な点があればそのたびにその記録が参照される。

対応した私が見た所問題なさそうな男性なので希少で数億分の一の確率でしか出ないような珍しいドロップ品なだけじゃないかとも思ってしまう。

若干男性を気の毒に思いつつ、私は印刷された査定額を持ってカウンターに戻った。
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