事故ってダンジョン攻略したら特典でやらかした

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3. 探索者試験②

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「やっと終わった。」

精神鑑定を終えて、診察室を出ると大きく伸びをする。

「あれでなにが分かるんだろうな……。」

精神鑑定はいくつかの簡単な質問や絵を見た感想を言うだけだった。

俺は診察の様子を思い出しながらこのあとの結果発表まで昼食取りながら時間を潰すために食堂に向かう。

JDO横浜支部は3つの建物に分かれている。ライセンス取得や更新、そのほか事務手続きを行う事務館。ダンジョンの入り口に直結し更衣室やロッカー、訓練場、検査買取りカウンター、購買部などダンジョンに潜る時に使う施設が集められたダンジョン館。一般人立ち入り禁止の本館だ。

俺は先ほどまでいた事務館を出てダンジョン館にある食堂に来ている。少々高いがダンジョン産の素材を使った料理が提供されている。高いと言ってもJDO直営でJDOで買い取った素材をそのまま使えるのか街のダンジョン産素材を使った店より多少マシだ。

俺は席に着くと16階層に出るというミノタウロスのビーフシチューのパンセットを注文した。

しばらくして注文したものが運ばれてくる。俺は弄っていたスマホをポケットにしまい、スプーンを手に取った。

「いただきます。」

俺は申し訳程度に手を合わせて器にスプーンを入れると一口には小さめの肉を掬った。

「ちょっと肉が小さくないか。」

そうつぶやきながらもそれを口に含むと思わず目を見開いた。

「旨っ!」

よく煮込まれたミノタウロスの肉は口に入れるとホロホロとほぐれ、少量でも濃厚な肉の味が口いっぱいに広がった。
思わずがっつき、パンを使って皿に残った肉のうま味が溶け出したルーを余すことなく掬って綺麗に食べきってしまった。

ビーフシチューを堪能した俺はそのまま余韻に浸りながら合格者発表の時間を待つことにした。




俺が試験会場の講義室に戻るとすでに合格者発表は始まっていた。
講義室に設置された黒板には合格者の受験番号と合格者への指示が書かれた模造紙が張られ、戻ってきた受験者がそこに集まっている。

俺もそこに加わり、受験番号を確認する。

「……あったな。」

無事合格したことを確認すると指示に従って講義室外の、受験手続をしたカウンターに向かう。

「合格してたので手続きをお願いします。」
「おめでとうございます。受験票をお預かりします。」

ポケットから受験票を取り出して渡すと受付嬢は受験番号を確認して封筒の束から俺の受験番号が書かれたモノを抜き、中身を取り出してカウンターに並べた。

「こちらが申請書になります。お名前、ご住所に間違いないでしょうか?」
「はい、大丈夫です。」

差し出された書類に書かれた名前と住所を確認すると書類を封筒に戻して受け取る。

「この後Sカードの発行を行いますので呼ばれるまでこちらの講義室でお待ちください。」
「あっ、再取得なのでSカードはもう持ってるんですが。」
「それではこちらにSカードの番号とこちらの書類にご記入して、お持ちください。その後、証明写真の撮影をしてライセンスを発行致します。」
「わかりました。」

俺は一度講義室に戻ると先ほどの席で書類を取り出し、Sカードの番号を記入していく。すでにSカードを持ってるのが不思議なのか隣の人がチラチラこちらを見ているが気にしない。

次の書類は銀行口座登録書だ。説明によると銀行口座を登録しておくことで買い取り金額が銀行に振り込まれるようになるらしい。以前は無かったシステムだが事前に調べてあったので通帳と登録印も持ってきている。

最後は同意書だ。内容を要約するとライセンスは発行するけどダンジョン内で起きた事、起こした事は探索者の自己責任だからWDO、JDO、国には責任無いから大怪我したり死んでも訴えてくんなよってことだ。これも問題ないので署名を済ませる

「……よし。」

記入を終え、間違いがないことを確認すると書類を封筒に戻してカウンターに戻る。

「記入してきました。」
「かしこまりました。確認致しますのでSカードをお預かりしてもよろしいでしょうか?」
「えっ?」
「Sカードに記載された番号とお名前を確認しますので。」
「あ、あぁ、はいどうぞ。」

俺はポッチに触られないように祈りながらSカードを表示させて渡した。

「……はい、確認できました。ありがとうございます。」

受付嬢からSカードを受け取るとすぐに非表示にして仕舞う。

「それではライセンスの証明写真を撮影します。こちらの通路の突き当りの部屋でこちらの書類を渡してください。」
「わかりました。」

俺は書類を受け取って通路を進む。





「お待たせしました。重森様。」
「はいはい。」

写真撮影後はそのまま待合室に通され、ライセンス発行待ちになった。30分ほど待って名前を呼ばれた俺はカウンターに向かう。

「こちらが重森様の探索者ライセンスになります。お名前、ご住所、Sカード番号にお間違いありませんでしょうか?」
「……はい、大丈夫です。」
「ではライセンス発行手続きは以上で完了です。探索の際はお気をつけて。」
「ありがとうございます。」

ライセンスを受け取った俺はダンジョン館にある購買に向かう。ここでは探索で使うリュックやライト、携帯食なんかはもちろんヘルメットやプロテクター、籠手、盾なんかの防具、ナイフや剣、槍、斧といった武器が販売されている。もちろん事件に繋がらないように武器関係は実物大のパネルが並んでいるだけだ。本物は倉庫で厳重に管理されているらしい。購入時にはパネルの横にかかっている購入札を持っていくシステムのようだ。

俺は並んでいるとりあえず適当なサイズのリュックの購入札とライト、携帯食、ドロップ品を入れる袋をカゴに入れて防具を見る。

防具のコーナーには自転車とかに乗る時に使うヘルメットやプロテクター、バイクに乗る時のフルフェイスヘルメット、防弾チョッキ、プレート入りのジャージと様々な防具になりそうな物が置かれていて値段もピンキリだ。

「う~~ん。」

俺は防具の形状や値段を見比べて唸る。

「お手伝いしましょうか?」

ふいに掛けられた声に振り向くと店員のエプロンを付けた男性が立っていた。

「一式買い揃えようとしてるところを見ると新人探索者さんですか?」
「え、えぇ、まぁ。今ライセンスを発行してきたばかりです。」
「そうですか。それでしたらこちらのベストとアームガード、レッグガードをお勧めします。」

そう言って店員は統一感のあるデザインのベストとアームガード、レッグガードを棚から取り出す。

「こちらは同じシリーズの防具で炭素繊維強化プラスチックを使用したハニカムサンド構造の複層式パネルを使用しているので非常に軽くて丈夫な防具なので動きを妨げることがありません。籠手とレッグガードの内側には同じ構造の緩衝材が入っているで受け止めた衝撃はしっかり吸収します。生地も丈夫なものを使用していますから長くご使用いただけますよ。」
「はぁ。」

俺はチラリと値札を確認して眉をひそめる。高い。完全に予算を大幅にオーバーだ。というより新人でこれを買える奴がいるのか?

「もちろん分割払いにも対応していますよ。」

どれだけ続けられるかも分からないのにいきなり分割を組むやつもいないだろう。この店員向いてないんじゃないか?

「いや、まだ続けられるか分からないですし、もっと手ごろな物をしばらく使ってみます。」

そういって俺は見せてもらったものに似た形状の、何段もグレードを落とした手ごろな金額の3つをカゴに入れる。

「そうですか。お次は武器ですか?おすすめはこちらの刀でベテランの刀匠が打った作品で切れ味抜群の逸品です。」

隣の武器コーナーに移動した俺についてきた店員は目立つポップが付けられた刀のパネルを指す。しかし、刀は色々と扱いが難しいと聞いたことがある。

「いや、刀なんて扱う技術はないので。」

俺はそう言って店員のおすすめを無視してとなりの斧をチェックする。斧ならホームセンターでも売っている位だれても扱える。以前使っていたのもホームセンターで買ってきたギリギリ片手でも扱える両手持ちサイズの斧だ。

俺は以前使っていた物と同じようなサイズの鍵が付いた持ち運びケースとセットの斧の購入札をカゴに入れる。

「これで会計をお願いします。」
「かしこまりました。お預かりします、こちらへどうぞ。」

俺は店員に買い物カゴを預け、一緒にレジに向かった。

「武器防具の販売の際には探索者ライセンスの照会が必要ですのでこちらに機械にライセンスをかざしていただけますか?」

指示に従い、店員が操作した機械にライセンスをかざすとピピッと音が鳴る。

「ありがとうございます。確認が取れました。配送も承っておりますがこちらの武器防具はお持ち帰りになりますか?」
「はい、持ち帰りでお願いします。」

明日から仕事で配送にしても受け取れるか分からない。車で来ていて持ち帰りも苦じゃないこともあり、持ち帰りを選ぶ。

「かしこまりました。札の商品をお持ちしますので少々お待ちください。」

店員はそう言ってバックヤードに入っていく。そのまま2~3分ほど待って店員が戻ってきた。

「お待たせ致しました。こちらの商品にお間違いないでしょうか?」

そう言ってカウンターに乗せたケースを開くと確かに俺が選んだ斧が入っている。

「はい、大丈夫です。」
「ではこちらを合わせましてお会計が54,980円です。」

俺は会計をカードで済ませるとすぐに車に積み込んで帰宅した。
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