事故ってダンジョン攻略したら特典でやらかした

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2. 探索者試験①

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翌朝、俺は会社に昨日の事故と念のための今日は休むと連絡を入れると試験が行われるJDO横浜支部に向かった。

JDOの支部はダンジョンのすぐそばに建てられていて。ダンジョンの入り口はその支部によって入場を管理されている。ダンジョンから出たドロップアイテムはその支部で一度を検査を受けることになっている。検査を受けたものは買い取りか持ち帰りが選べるが毒物など危険なドロップアイテムだった場合はその場で強制買取され、持ち帰ることができない。
また、ダンジョン内で未検査のドロップアイテムの使用は禁止されていないが、すべて自己責任であり、仮に毒薬だったとしても誰かを責めることをはできない。

ホームページに掲載された内容によると探索者試験では講義のあとに筆記試験と精神鑑定。午後には合格発表があり、合格者には後日ライセンスが郵送されることになっていた。

「俺が資格を取った時には講義と筆記試験だけだったんだけどなあ。」

特に危ない思考は無いはずだが初めて受ける精神鑑定に少しだけ不安になる。そんな不安感や昔受けた講義と試験内容を思い出しながら車を走らせるとすぐにJDA横浜支部に到着した。

駐車場に車を止め、正面の入り口に向かうとデカデカと受付への案内ポスターが張られていた。案内に従って通路を進むと部屋の入り口に設置されたカウンターに女性がいるのが見える。

「おはようございます。探索者試験受講希望の方でしょうか?」
「はい。以前資格を取ったんですけど更新しないまま期限切れになってしまったので。」
「再取得ですね。かしこまりました。本日はSカードはお持ちでしょうか?」
「はい、持ってきてます。」

俺はポケットから定期入れに入れたSカードを取り出して見せた。

「では、合格した場合にそちらのSカードの番号が必要になりますのでライセンス発行手続きの際に改めてご提示をお願いします。」
「わかりました。」
「では、こちらの申込用紙のご記入をお願いします。」

用紙とペンを受け取り、一通りの記入をしてカウンターの女性に返す。

「はい、ありがとうございます。ではこちらが受験番号と講習で使う冊子になります。あと20分ほどで講義が始まりますのでそれまでにこちらの部屋にお入りください。講義が始まってからの入室はできません。また、途中退出した場合は講義後の筆記試験を受けることもできなくなりますのでお手洗いなどは先にお済ませください。お手洗いはそちらの通路左手にありますので。」
「わかりました。」

俺は受験票と冊子を受け取ると女性に会釈をしてカウンターを離れ、トイレを済ませてから部屋に入った。部屋にはすでに10人ほどの席に着いていて、真ん中辺りが空いていたのでそこに座る。

そんまま少し待って開始時間になると講師が入ってきて扉にカギを掛けた。そのまま後ろに行って、後ろの扉のカギを確認する。こっそり出入りするのを防止するためだろうか。

カギが掛かってることを確認した講師は前に戻り教壇の脇に立った。

「えー、それでは時間になりましたので講義の方を開始します。受付で説明されたと思いますが講義を途中退席されますとこの後の筆記試験を受けられなくなるので注意してください。それでも途中退席する方は受験票を回収しますので声をかけてください。」

講師はこちらを見渡し、異論がないことを確認して講義を開始した。

「それでは今回の講義は次のように進めていきます。」

講師がそういって手元のパソコンを操作すると正面の黒板にプロジェクターで目次が表示される。

内容はWDOとJDOについて、探索者について、JDO到着後ダンジョン入場まで手続きについて、ダンジョン退場後の手続きとドロップ品の取り扱いについて、税金等について、横浜ダンジョンについて、武器持ち運びについて、探索者と一般人とのトラブルについてとなっている。

「まずWDOとJDOについてから始めます。WDOとはWorld Dungeon Organization、世界ダンジョン機構の事です。ダンジョン出現後ダンジョン関連の国際トラブルが相次いだため国際連合が対策に乗り出すために作られた期間です。JDOとはJapan Dungeon Organization、日本ダンジョン機構のことで日本国内のダンジョン情報の収集、ダンジョン産アイテムの調査、探索者の管理など国内ダンジョンに関するすべてを管理する機関です。WDOとJDOは協力関係にあり……。」

JDOの活動内容は探索者の管理等説明されるがこのあたりは前にライセンスを取った時に聞いたことと同じだ。

「次に探索者についてです。探索者とは探索者ライセンスを持ち、ダンジョン最深部を目指す攻略やアイテムの持ち帰りを行うことを生業にする人を指します。探索者自体には専業、兼業の制限はありませんが兼業の場合、他の本業、副業先の雇用契約に違反していないか確認が必要になります。」

この辺りも変わらない。うちの会社は副業を禁止していないからしばらくは土日だけ活動する兼業になるだろう。

「探索者が持ち帰ったアイテムは一度すべてJDOによって買い取られ、JDO保有の鑑定アイテムにより鑑定されます。その後探索者は現金での受け取りか持ち込んだアイテムによる現物支給かを選択することができます。ただし、鑑定結果で一般に流通させることができない危険物だと判断された物については現金支給のみとなります。また、現金支給の場合はあらかじめ所得税、ダンジョン税等各種税金が引かれた金額が支給されます。それと。持ち帰ったアイテムをJDOの買い取りに出さずに指定の範囲外に持ち出した場合にはライセンス剥奪に加え、刑事罰があるのでご注意ください。ちなみに過去危険物と判断された物の一例として毒性モンスターのドロップアイテムの毒薬や宝箱から出た爆発物等があります。」

この辺りも前と変わっていない。

「次に探索者にはランクが設定されています。」

ランク?それは初耳だ。

「これは去年からWDOとJDOが共同で制定した制度で一定期間内に持ち帰ったアイテムの総額とダンジョンに入場した回数で判断して決まります。ランクはGから始まりF、E、Dと上がり、Aの次がS、SS、SSSトリプルエスの10段階ありますが現状最高ランクはBとなっています。現在のランクはライセンスに記載され、年1回の更新時に書き換えられます。」

まるでファンタジー小説の冒険者ギルドと同じようなシステムだな。

「このランクの査定期間はライセンスを取得した月から12か月単位で、持ち帰ったアイテムの総額とダンジョンに入場した回数で判断するので当然ダンジョン内で使用し、アイテムを持ち帰らなければランクが上がらない、または下がることもあります。このランクはWDO、JDOが探索者の実力を測るために使用されますが、最近では探索者向け保険なんかのでも保険料の査定なんかにも利用されてきていますね。ランクが高いということはそれだけ深い階層で活動してるということですから。それから高ランクの探索者にはWDO、JDOが紹介する人物、企業、機関からもしくはWDO、JDOが直接依頼をすることがあります。」

室内にどよめきが起きる。

「過去にあった依頼の例としては、あるモンスターのドロップ品やポーションの回収。JDOの依頼の中には新人講習の教官というのもありました。」

幸い俺は大きなケガをしなかったが確かに昔は結構危ない目にもあった。新人講習なんてものがあれば大ケガをする奴も減るだろうからいい制度かもしれない。ただし……

「質問してもいいですか?」

俺が挙手をして声をあげるとどうぞと先を促されるので質問する。

「その依頼を断ることで探索者に罰則があったりしますか?」
「いいえ、あくまで依頼。お願いですのでそれを受けるかどうかは探索者の自由です。罰則はありません。」
「わかりました。ありがとうございます。」
「ほかにここまでで質問がある方はいませんか?……では先に進みます。」

こうして次へと進みJDO到着後ダンジョン入場まで手続きについて、ダンジョン退場後の手続きとドロップ品の取り扱いについて、税金等について、横浜ダンジョンについて、武器持ち運びについて、探索者と一般人とのトラブルについてなどが実際のあった違反、トラブルを交えながら説明された。



60分の講義を終え、10分の休憩をはさんでから筆記試験になった。俺は一度合格していることもあり、講義では以前から変わった項目、増えた項目に重点を置いてしっかり覚え、スラスラと回答できた。

「そこまで。ペンを置いてください。これから解答用紙を回収して回るのでそのまま座っていてください。」

試験官がそういうと各席を回って回答用紙を回収して前に戻っていく。

「次は精神鑑定です。順番に受験番号でお呼びするのでこちらで待機していてください。」

そういうと最初の受験番号が呼ばれ、呼ばれた2人が精神鑑定を受けるために部屋を出る。1人辺り何分掛かるか分からないが少なくても10分はかかるだろう。2人ずつ消化しているようなので一番最後の俺は最低でも1時間近くここで待機になる。

「暇だ……。」

筆記試験も完了してスマホの使用が解禁になった俺はスマホで横浜のダンジョンの情報を集める。俺が活動していた時に比べて情報そろってきたのか1~5階層までは地図、ポップするモンスター、ドロップアイテム、アイテムの買い取り価格が無料公開されている。6層から10階層までは地図、ポップするモンスター、ドロップアイテムは有料。アイテムの買い取り価格は時価となっている。11階層からはほぼ情報はない。

「5階層までは前に潜ったけど慣らしは必要だし、どんなに急いでも1日1階層ずつのペースかな。」

俺はモンスターとの戦闘の脳内シミュレーションを繰り返して時間を潰す。
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