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第3章 シュルトーリア

蟻の巣探索②

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ファイアントを回収しつつ巣の中を探索すること一時間。途中の脇道などがあったが少し行くと小部屋があり、そこにもファイアアントの死体が積みあがっていた。

そんな部屋をいくつか回り、最初にガルド達に任せたファイアアントと合わせて150匹ほど回収ところで異空間収納を連発する俺の魔力が切れた。

今までも頻繁に異空間収納で荷物の出し入れをしていたが連発してこれだけの量をしまうのは初めてだ。

「べ、ベルグさん。ちょっと休憩しましょう。魔力が切れたので休憩して回復させないとファイアアントが回収できません。」
「わかった。いや~、いつになったら休むって言いだすか気にしてはいたんだがずいぶん持ったな。お前、魔力もなかなかの量を持ってるんじゃないか?」

どうやらベルグさんは俺の魔力量を試していたみたいだ。俺はそれに大きくため息を付きながら答える。

「特化型の媒体を使ってるので消耗が少ないだけで大したことはありませんよ。」
「謙遜するな。空間魔法は元々消耗が激しい魔法だからな、いくら特化型を使ってたってここまでの量を回収できれば十分魔量が多いと言えるだろ。」
「そんなもんですか。」

そう言って俺は腰を下ろすと壁に背中を預けて目を瞑る。眠るわけではないがこうしていた方が若干魔力の回復が早まる。

「マナポーションでも買っておけばよかったですね。」
「なんだ、用意してなかったのか?戦闘中でもないし、急いで回復させたいわけでもないから使わないだけかと思ってたぞ。」
「戦闘は従魔がこなしてくれるのでマナポーションが必要になるほど魔力を使うこともなかったですからね。」
「そうか。だが、回復ポーションと魔法を使うならマナポーションは最低でも1本ずつぐらいはもっておけ。何があるか分からないんだからな。」
「はい、気を付けます。」

それでもせっかく生産の極みがあるのだからポーションじゃなくて自分だけの回復アイテムを作るのも面白いかもしれない。そんな風に考えながら少しでも早く回復するように瞑想を続けた。




しばらくしてある程度魔力が回復したところで探索を再開した。再び異空間収納の連発でファイアアントを回収しながら進んでいくと今までとは違う部屋に出た。

そこには数匹のファイアアントとバスケットボールくらいの大きさのブヨブヨしてそうな物体が所狭しと並んでいた。

「これは?」
「こいつはファイアアントの卵だな。」
「卵?」

俺は卵に鑑定を掛ける

ファイアアントの卵
中身はすでに死亡している。
膜状の殻は耐火性があり、錬金術の耐火加工に使用される。

「鑑定してみましたけど中身は死んでます。錬金術の耐火加工に使われてるみたいですけど買い取りとかしてますか?」
「一応してるが10個で銅貨2枚だ。」
「安っ。」
「そらぁ、卵を取るには巣のファイアアントを殲滅させないと取れないが殲滅させればファイアントの討伐報酬が大量出るし卵を取ってくるのになんの脅威もないからな。あと確かに耐火加工には使われるがそれほど性能がいいわけでもないしな。所詮殲滅のオマケだな」
「そうですか。そのくらいの金額ならこれは回収しなくていいですね。」
「いいのか?」
「今回の報酬が入ればそれほどお金には困らないですし。いくら異空間収納があってもファイアアントもまだ残ってるのにこれの回収は労力に見合わないですよ。」
「じゃあ次行くか。」
「はい。」

俺は素早く異空間収納を発動してそこにあった数匹のファイアアントを回収して元の通路に戻った。




卵の部屋を出て次の部屋は食糧庫だった。食料としてファイアアントに狩られた魔物死体があったが食い荒らされ、腐敗し始めていたのでファイアアントの死体だけ回収してそこを出る。

「ずいぶん奥まで来たな。そろそろ終わりだと思うんだが……。おっ、見えたな。」

少し歩いてベルグさんがそうつぶやくと奥に少し細くなった通路が見えた。

「終点ですか?」
「あぁ、そんでここにいるのはクイーンだ。」
「……クィーン?ってファイアアントクイーンってことですか!?ランクBじゃないですか!」
「アント系の巣にクイーンは付き物だろ。そもそも依頼はランクBの依頼だぞ。」
「えっ!」
「……お前、依頼書のランクをチェックしなかったのか?」

そういえば、報酬ばかりに目が行ってランクをチェックしてなかったような……。

「あ、あはは。……見てませんでした。」

俺はガクリと項垂れて反省する。それを見たベルグさんは頭を抱えた。

「はぁ、お前さんはランクCだし、ランクAの依頼なんてめったにないから一つ上のランクBの依頼まで受けられるとなるとほとんどの依頼を受けられるからな。ランクBのモンスターもテイムしてるからこっちは問題ないと思ったんだがそんなところで抜けてるとは。1歩間違えば死につながるんだぞ。ランクはしっかり確認しろ。同じランクでも内容によって難易度は変わるし、似たような内容でもランクによって難易度は違うんだぞ。」
「はい、気を付けます。」
「ポーションの事といい一度しっかり冒険者の基礎を学んだ方がいいな。」
「……そうします。」


俺は街に戻ったら冒険者の基礎を教えてくれる人を探すことに決めた。

「それで、この先はどうやって確認する。」
「そうですね……。バラムにお願いしようと思います。」
「こいつに?」
「はい。ほとんど使ってないんですけどテイマースキルに感覚共有っていうのがあるので視覚を共有した状態でバラムに入ってもらって中をチェックします。問題なければ俺達も入りましょう。」
「わかった。それでいい。」
「それじゃあ、たのむな。バラム」
「(はーい。)」

バラムはこちらに触手を振ると通路に入っていく。それを見届けると壁に背を預けて座り、感覚共有でバラムと視界を共有した。

以前ベッドで使った時のように360度の視界が脳裏に映る。俺は目を閉じて自分の視界を塞ぐとバラムの視界に集中した。

「うぅ~、気持ち悪い……。」
「どうした?」
「バラムの視界って360度なんですよ。その視界に慣れなくて……。」
「スライムにはそんな風に見えてるのか。」

ベルグさんと話してるとバラムが奥の部屋の入り口に着いた。

「あっ、奥の部屋に着いたみたいです。」
「どんな感じだ?」
「ちょっと待ってくださいね。」

俺は送られてくる視界のうち部屋の方に集中する。

「(バラム、明りの魔石をもう少し奥まで伸ばせるか?)」
「(できるよ。)」

バラムが答えると部屋の奥に触手が伸ばされ、そこにある物が照らされる。

「いました。多分これがクイーンです。」

そこにはファイアントの3倍の大きさで到底巣から出ることができない大きさの翅付きファイアアントが横たわっていた。

「でもバラムに反応してないので死んでると思いますけど、少し刺激してみます。」

俺はバラムに指示を出して、伸ばした触手でクイーンを突っつかせる。

「大丈夫そうです。俺達も行きましょう。」
「おう。」

俺はバラムに待ってるように指示すると感覚共有を切ってバラムの後を追った。
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