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第3章 シュルトーリア

魔道具作成

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部屋に戻るとバラムをベッドに降ろし、テーブルに買ってきた魔石を広げた。

「とりあえず必要なのはコンロかかまどを作る魔道具だけどコンロの方が便利だし、まずはコンロだな。」

俺は異空間収納から木箱を一つ取り出す。異空間収納には盗賊討伐の時に倉庫から持ち出したものがそのまま残っている。この箱もその一つで中には鉱石が詰まっている。

中から鉄鉱石を3つほど取り出すと精錬と変形で1枚の板に作り変えていく。

「こんなもんか?」

縦横20cmの1枚板が出来上がると歪みがないことを確認して細工セットを取り出す。中から彫刻刀を手に取ると円形に火着くよう二重の円とその間に術式を刻んで魔法陣を作る。陣を刻み終えるとそこに繋がるように魔力供給用の魔石をはめ込む溝を彫る。この溝には魔石から魔力を吸い出して魔法陣に魔力を流すように術式を刻んだ。

「あとはこいつで……。」

買ってきた小さい魔石を手に取って掌で包むと溝に嵌るように形を変えていく。

「さてさてうまくいくか?」

変形を終えた魔石を溝にはめると魔力が魔法陣に流れ出し、魔法陣の内側に直径5㎝ほどの円形の炎の輪が着いた。

「おぉ~、点いた点いた。じゃあ一度止めて外装を……。やべっ、魔石が外れない。」

溝にピッタリと嵌った魔石は爪を差し込む隙間もなく、つるつる滑って魔石をつまむこともできなかった。
俺は慌てて彫刻刀で溝を広げて魔石を抜き取った。

「焦った~。魔石のつけ外しは改善が必要だな。あとは火力調整も必要だし……。」

俺はコンロの改善点と対応案を紙に書き出していく。

「魔力供給量の調整は……。供給量で火力調整と火の輪の数の変更……。……ダメだ、陣が大きくなりすぎる。……外側じゃなくて内側に……。あと、このままだと鍋を置けないから……。……よし、これなら!」

書き出した試作案をもとに鉄板を作って先ほどより少し大きい外側の円から3重に円を作りその内側に術式を刻む。術式は供給魔力量に応じて直径と火力が違う火を円状に点けるように改良してある。

そこに繋がる魔石を嵌めるくぼみは実際に使う魔石の2倍の長さに作った。
端から魔石1つ分のスペースには術式を入れないで魔力を供給しないようにしておく。ここのスペースには指を入れる溝も付けたので魔石の取り出しはここから可能だ。
魔石を横の術式を刻んだスペースにスライドさせると魔力供給が始まる。魔石をスライドさせるほど魔力の供給量が増えて火力が調整できる仕組みだ。

俺は動作を確認するため溝に魔石を嵌めこむ。当然はめ込んだ位置には魔力供給の術式は刻んでいないので魔法陣に火はつかない。魔石に指を添え、ゆっくりとスライドさせていく。魔石の先端が術式の範囲に入ると魔法陣の中心に小さな火の輪が着いた。そのままスライドさせ半分ほどでもう一つの火の輪が、最後までスライドさせ3つ目の火の輪が着いた。3つの火の輪は中心から外側へ少しずつ強くなっている。

「よし。成功だ。そしたらもう一枚、穴の開いた板とゴトクを作って被せれば……。」

俺は鉄鉱石から魔法陣に合わせて真ん中に穴をあけた板を作りコンロにかぶせて接合した。そして穴のサイズの合わせてゴトクを作って穴にはめれば鍋やフライパンを乗せても直接魔法陣に付かなくなった。

「あとは使いながら改良するとして、ほかにも作りたいものはたくさんあるけど続きは明日だな」

俺はテーブルの上の物を片付けて服を脱ぐと裸でベッドに潜った。当然バラムが体を這ってきて精を搾り取られるがおかげてイってすぐにスッと眠りに落ちた。



翌朝、俺はガルドたちを冒険者ギルドに来ていた、元々この街で旅費を稼ぐ予定だったので道具作りばかりしているわけにもいかない。

俺は掲示板から報酬のいい依頼書を一枚はがしてカウンターに向かった。

討伐依頼
討伐対象:トリアス平原のファイアアントの巣の殲滅
報酬:巣の殲滅金貨5枚、1体討伐につき別途銀貨1枚
討伐証明部位:触覚左右1セット
※巣の殲滅は討伐報告後調査員が確認

「この依頼について聞きたいんですが、トリアス平原というのはここから遠いんですか?」
「いえ、トリアス平原は街の南西3キロ辺りから広がる平原で普段は低ランク向けの狩場になっています。この狩場に低ランクでは対応できないファイアアントが巣を作って住み着いたのでその殲滅がこの依頼です。失礼ですが最近街に来られた方ですか?」
「はい、昨日街に着いたばかりです。巣の通路の広さはどのくらいかわかりますか?」
「そうでしたか。通路の広さは一貫していませんが平均して直径3mくらいです。」

直径3mってことはロアは入れないな……。そうするとロアは外で見張ってもらうか。でも他の冒険者に襲われると困るな。

「ファイアアントに素材として売れる所はありますか?」
「ファイアアントの素材は頭部から取れる蟻酸と殻が素材です。」
「最後にこの依頼を受ける場合に調査員に一緒に来てもらうことはできますか?」

調査員が一緒に来てくれればその場ですぐに殲滅を確認してもらえるし外にロアを残しても冒険者に襲われないように見張ってもらえるかもしれない。

「それはできません。調査員にはそれほどそれほど戦闘力がありませんし……。」
「なんだ、面白そうな話をしてるじゃないか。それなら俺が一緒に行ってやるよ。」

受付嬢さんが俺の相談を断ろうとしていると後ろからドスドスと豪快な足音を鳴らしながら声の主が顔を出した。
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