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第3章 シュルトーリア

久しぶりの料理

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川に着くと川岸はごろごろと石が転がる河原になっていて火事の心配がない場所だったのでみんなにはガルドとロアには近くで薪拾いを、バラムには準備してる間の護衛をお願いした

「(人に見つかって攻撃されたらなるべく反撃しないでここまで逃げてくるようにな。)」
「(うむ。心配するな。)」

2人を見送り、その間に河原の石の中で抱えて持つサイズの石を集めて重ねていく。重ねてできる隙間は小さい石をかませてバランスを取る。

「ふぅ、かまどを作るのも一苦労だな。コンロの魔道具でもあればいいんだが……俺なら作った方がいいかもな。」

石を組み上げながら軽く構想を練ると魔石を中心に火を灯す術式と魔石に魔力を流す導線のイメージが組みあがる。

「それより土魔法で周りの土を集めて簡易かまどを作る魔道具にするか?なら人に見られてもまだ大丈夫だし冒険者相手に売ることもできそうだな。」

周囲が今のような石ばかりの場合には使えないが、といくつかコンロとかまどの魔道具を考えている間にかまどが組みあがり一息つく。
次に収納から取り出した木箱を作業台にして先ほど買った野菜と鶏モモ肉を切っていく。この鶏肉はコッコという魔物の肉らしい。聞いた話では俺の知っている鶏と大差ないのだがモモ肉の塊を見ると元の大きさが豚位ありそうな感じだ。
途中でガルドとロアが戻ってきたのでかまどに薪をセットしてもらい、ふたりは自由にしてもらった。

一通り切り終えたところでかまどに火を入れ、鍋で肉と野菜を炒めて水と塩コショウ、調味料を投入して煮込んでいく。
調味料は妙に味が濃かったり、甘みが付いていたりしたがほとんど前世と変わらない物を用意できた。
一煮立ちしたところでガルドに手伝ってもらい、鍋を火からおろす。

「これでスープは良し。」

余熱で肉に味をしみこませてる間に売らなかったオーク肉を厚めにスライスして塩コショウを振り、塩辛いほど濃い醤油のような調味料を味を見ながら少しずつ水で薄めていく。

「昆布とか煮干しとか出汁を取るのにいい食材があればよかったんだがな。さすがに骨から出汁を取るようなことはやったことないから時間がかかりそうだし、灰汁とか臭味消しも考えないといけないからな……。」

この辺りは海から遠いため昆布や魚などは出回っていなかった。薄めた醤油と砂糖の代わりにオリゴ糖のようなサラサラした樹液と薬草扱いだったショウガを肉と一緒にフライパンで焼いていく。

「なんちゃって生姜焼きだな。」
「(ふむ、できたのか?)」
「(凄くいい匂いがします!)」
「(まだ夕飯には早いから食べるのは宿に戻ってからだな。)」
「(む、そうか。)」
「(あう~)」

2人を見ると耳をしゅんと寝かせ、見るからにガッカリしたという雰囲気だ。ロアだけでなくガルドも同じ反応をしていることに苦笑する。

「(じゃあ、味見だけな。)」
「(いいのか?!)」
「(ありがとうございます!)」

焼きたての生姜焼きを1枚ずつ皿に出してやると2人は喜んで食べ始めた。

「(これは美味いな。)」
「(ご主人様、美味しいです!)」
「(ご主人さま~、バラムも食べてみたい!)」

2人が美味しそうに食べているのに触発されたのかバラムも食べたいと言い始めた。しかし、バラムのごはんは精液ということになっているのでこういう物が食べられるかわからない。バラムに聞いてみるが……。

「(ん~……わかんない!でも食べてみたいんだもん。)」

こんな感じなので悩んだあげくとりあえず2人と同じように1枚だけ食べさせてみることにした。

「(食べられなかったら無理しないで残すんだぞ。食べられるなら夜にみんなが食べるときにまた一緒に出してあげるから。)」
「(やった~!)」

バラムが飛び跳ねて喜ぶのを見ながら一度しまった生姜焼きを皿に取り出してバラムの前に置いてやるとそのまま飛び乗って生姜焼きを体に取り込んだ。

「(おいおい、そんな一気に取り込んで大丈夫か?)」
「(大丈夫!ご主人さま~、これ美味しい!)」
「(そうか、よかったな。消化して吸収できそうか?)」
「(ん~~。)」

尋ねるとバラムの中で生姜焼きがクルクルと回り始め、端の方から少しずつ溶けているのが見える。

「(いつものごはんより時間掛かっちゃいそうだけど大丈夫!)」
「(そっか、じゃああとは夜まで様子見かな。普段吸収しないものを取り込んだんだから何かあればすぐに言えよ。)」
「(は~い。)」

俺は3人の皿を改修して川で洗うと他の道具と一緒に異空間収納にしまい、かまども適当に崩して水をかけておく。

「これでよし。」

空を見ると日が落ち始め、赤くなっていた。俺は3人に声をかけてガルドといっしょにロアまたがると街に戻る。その間バラムは取り込んだ肉の消化があって、いつものように腕に取り付けないので街まで俺が抱えていた。

街に戻ってくるとまずギルドに向かった。今日の勤務が終わったのか、ベルグさんはもうカウンターにいなかったので空いてる総合カウンターでコンロとかまど作りの魔道具の制作実験のために低ランクの魔石をいくつか購入した。

それから宿に戻った時にはもうだいぶ暗くなっていた。ガルドたちに厩舎に入ってもらい宿の食堂で夕飯をお願いする。出てきた料理を異空間収納にしまうと宿の人には変な顔をされた。厩舎で従魔と一緒に食事を取ると言ったらさらに変な顔をされ、食事が済んだらすぐに食器を返しに来るといってすぐに厩舎に向かった。

厩舎のロアがいるスペースについたらディメンジョンルームを開いて食事をする場所を確保する。テーブルセットを取り出し、宿の料理と作ってきた料理を広げる。ロアの分は山盛りにしてロアの前に置けば準備完了だ。

「(それじゃあ、いただきます。)」
「(ふむ、いただこう。)」

ロアがよだれをたらし始めそうだったので食事を始める。バラムは先ほどの肉がまだ消化できていないのでなしだ。

「(うむ、やはり妻の料理は美味いな。こちらのスープも絶品だ。)」

宿で食べてた食事のスープの方が美味しいと思うのだがガルドはやたらとべた褒めしてくる。

「(この後料理用の魔道具を考えてみるから。それができればもっと手の込んだものが作れるようになるからな。)」
「(楽しみに待っていよう。)」

こうして和やかに食事を終えると少しだけ厩舎で食休みをしてから俺はバラムをつれて部屋に戻った。
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