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第2章 成長
帰還
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俺達はロアに跨がり森を抜け、ウェルズに向かった今から来たときと同じように走っても着くのは深夜の為、朝の開門までは街には入れない。
ロアにはスピードを落としてもらい、ゆっくりウェルズに向かった。
それでも馬より早く、4時間程で門が見える所まで来た。
「(ご主人様、見えてきましたよ。)」
「(あぁ、もう少し頑張ってくれ。)」
「(はい!このまま門に近付いても大丈夫ですか?)」
「(あぁ。今回はいいだろ。離れた所からロランドさん達を歩かせる訳にもいかないし。但し、スピードは落として、歩いて向かってくれ。)」
「(はい!)」
ロアはスピードを落としてゆっくりと歩く。それでも馬の速歩位のスピードがある。
次第に門が近付き、朝一で街に入るため野営をしている人達が目に入る。
------------
焚き火を前に俺は辺りを警戒していた。
俺は王都からウェルズに向かうこの商隊の護衛として雇われ、日が暮れてようやくウェルズにたどり着いた。
しかし、閉門の時間には間に合わず、こうして門の前で一夜を過ごすことになった。
「ふぁあ~~~あっ。あー、暇だぜ。さすがに門の前までくりゃあそうそう魔物、盗賊も来ねぇしな。」
一緒に夜番をしているのは同じく護衛で一緒になった大剣使いだ。
今の時間はこいつと俺だけだ。
「そうだが、さすがに気を抜き過ぎじゃないか。」
確かにこれだけの街に近付いていればそうそう襲われることはない。
だが、先ほどから首筋がチリチリするような、どこか気を抜いてはいけない空気を感じていた。
「何もなければいいんだが……。」
「なんだ?こんなところで何かあるわけないだろ。」
「そうは思うが……。ん?」
焚き火の向こう、街道沿いの暗闇の奥でキラリと2つ光る物が見えた。
それはゆっくりと近付いて来ると俺の背よりも高い所にあるのがわかった。
「なんだ?」
俺は立ち上がると腰に提げた剣に手をかけ、目を凝らしてその正体を見極めようとする。
「何かあったか?」
大剣の男も俺の様子に気づいたのか武器に手をかけて立ち上がった。
「何か……近づいてくる。」
少しして足音も聞こえてくる。焚き火明かりが届き、ようやく姿が見えた。
「なっ!」
「こいつぁ……。」
暗闇の向こうから現れたのは巨大な犬だった。
「ダークハウンド……。」
------------------------------------------------------
俺達が焚き火の側まで来ると焚き火を囲んでいた2人の男は武器を構えて待ち構えていた。
「こんばんは。」
「なっ!」
「魔物がしゃべった!」
声をかけると2人はロアの上の俺に気がついていないのか、驚いた様子で後退った。
「(ロア、降りるから伏せてくれ。)」
「(はい。)」
ロアが伏せて、ようやく2人は俺に気が付いたようだ。
「人が……。」
「どうも。こいつは俺の従魔になんでそんなに警戒しないでください。」
「バカな!ランクBの魔物をテイムしているというのか!?」
「本当ですよ。ギルドにも登録してますから」
大剣を持った男が警戒を崩さないので俺は収納からギルドカードを取り出して2人に差し出した。
「……確かに登録されている。しかし、君のランクがEなのはどういうことだ。」
幾分か警戒が薄れたようだかまだ納得できないみたいだ。
「先日運良くテイムできただけでギルドに登録したのは最近ですし。あっ、でも近々Cに上がる予定ですよ。今日はそのランクアップの確認のための指名依頼の盗賊討伐をこなしてきた所ですから。」
「実質最低でもCランクの実力があるということか。」
ようやく納得できたのか腰から剣を提げた男からギルドカードを受けとる 。
「俺はテイマーなのであくまでも従魔込みで、ですけど。俺達も朝一で街に入りたいのですぐ後ろで野営してもいいですか?」
「あぁ、構わないぞ。」
「ありがとうございます。」
俺達はそこで会話を打ち切り、商隊の後ろで野営を始めた。
それから4時間程して日が上り始めると商隊の人達が起き出してきた。それを見て俺もロランドさん達を起こすためにディメンジョンルームを開いた。
「ロランドさん、起きてますか?」
「タカシさん、おはようございます。ちょうど起きたところですよ。」
「もうすぐ開門の時間なので出ていただけますか?従魔を中に入れますので。」
「わかりました。」
ロランドさんはまだ寝ていた奥さんを起こすと子供を抱いて外に出た。
「(それじゃあ、悪いがロアとガルドは中に入ってくれ。)」
「(はーい!)」
「(うむ。)」
2人が中に入るのを確認して、ディメンジョンルームを閉じると開門を待っていた商隊が進み始めた。
15分程すると俺達の番になった。担当はいつもの衛兵だ。
「なんだ、もう帰ってきたのか。うまくいかなくて逃げ帰ってきたのか?」
「いや、もう討伐してきた。彼らは盗賊に捕まってた商人の一家だ。」
それからロランドさんが服に隠していた商人ギルドのギルドカードを見せ、一家で街に入るとそこで別れることにした。
「本当にお世話なりました。」
「しばらくはこの街の支店にいますのでぜひお立ち寄りください。今回のお礼を致しますので。」
「わかりました。では、後日お邪魔させていただきます。」
俺はそう言うとギルドに討伐完了報告に向かった。
「おはようございます。」
「あら?タカシさん、おはようございます。指名依頼を受けたと聞きましたがどうしたんですか?」
受付していたのはロアの従魔登録をした時のお姉さんだ。
「討伐が終わったので報告に来ました。」
「えっ!もう終わったんですか?」
「えぇ。昨日うちにアジトを見つけて夜襲をかけて終わらせてきました。」
「そ、そんなに早く見つかったんですか……。」
「ダークハウンドに乗ればあっという間ですよ。オークナイトも鼻がいいですから臭いで探せますし。」
「そうですか。では、場所を教えていただけますか?調査員を派遣しますので。
俺は盗賊のアジトの場所を教えると3~4日で結果が出る事を確認すると屋台で大量に食料を買い込み、宿で食事をとることにした。
ロアにはスピードを落としてもらい、ゆっくりウェルズに向かった。
それでも馬より早く、4時間程で門が見える所まで来た。
「(ご主人様、見えてきましたよ。)」
「(あぁ、もう少し頑張ってくれ。)」
「(はい!このまま門に近付いても大丈夫ですか?)」
「(あぁ。今回はいいだろ。離れた所からロランドさん達を歩かせる訳にもいかないし。但し、スピードは落として、歩いて向かってくれ。)」
「(はい!)」
ロアはスピードを落としてゆっくりと歩く。それでも馬の速歩位のスピードがある。
次第に門が近付き、朝一で街に入るため野営をしている人達が目に入る。
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焚き火を前に俺は辺りを警戒していた。
俺は王都からウェルズに向かうこの商隊の護衛として雇われ、日が暮れてようやくウェルズにたどり着いた。
しかし、閉門の時間には間に合わず、こうして門の前で一夜を過ごすことになった。
「ふぁあ~~~あっ。あー、暇だぜ。さすがに門の前までくりゃあそうそう魔物、盗賊も来ねぇしな。」
一緒に夜番をしているのは同じく護衛で一緒になった大剣使いだ。
今の時間はこいつと俺だけだ。
「そうだが、さすがに気を抜き過ぎじゃないか。」
確かにこれだけの街に近付いていればそうそう襲われることはない。
だが、先ほどから首筋がチリチリするような、どこか気を抜いてはいけない空気を感じていた。
「何もなければいいんだが……。」
「なんだ?こんなところで何かあるわけないだろ。」
「そうは思うが……。ん?」
焚き火の向こう、街道沿いの暗闇の奥でキラリと2つ光る物が見えた。
それはゆっくりと近付いて来ると俺の背よりも高い所にあるのがわかった。
「なんだ?」
俺は立ち上がると腰に提げた剣に手をかけ、目を凝らしてその正体を見極めようとする。
「何かあったか?」
大剣の男も俺の様子に気づいたのか武器に手をかけて立ち上がった。
「何か……近づいてくる。」
少しして足音も聞こえてくる。焚き火明かりが届き、ようやく姿が見えた。
「なっ!」
「こいつぁ……。」
暗闇の向こうから現れたのは巨大な犬だった。
「ダークハウンド……。」
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俺達が焚き火の側まで来ると焚き火を囲んでいた2人の男は武器を構えて待ち構えていた。
「こんばんは。」
「なっ!」
「魔物がしゃべった!」
声をかけると2人はロアの上の俺に気がついていないのか、驚いた様子で後退った。
「(ロア、降りるから伏せてくれ。)」
「(はい。)」
ロアが伏せて、ようやく2人は俺に気が付いたようだ。
「人が……。」
「どうも。こいつは俺の従魔になんでそんなに警戒しないでください。」
「バカな!ランクBの魔物をテイムしているというのか!?」
「本当ですよ。ギルドにも登録してますから」
大剣を持った男が警戒を崩さないので俺は収納からギルドカードを取り出して2人に差し出した。
「……確かに登録されている。しかし、君のランクがEなのはどういうことだ。」
幾分か警戒が薄れたようだかまだ納得できないみたいだ。
「先日運良くテイムできただけでギルドに登録したのは最近ですし。あっ、でも近々Cに上がる予定ですよ。今日はそのランクアップの確認のための指名依頼の盗賊討伐をこなしてきた所ですから。」
「実質最低でもCランクの実力があるということか。」
ようやく納得できたのか腰から剣を提げた男からギルドカードを受けとる 。
「俺はテイマーなのであくまでも従魔込みで、ですけど。俺達も朝一で街に入りたいのですぐ後ろで野営してもいいですか?」
「あぁ、構わないぞ。」
「ありがとうございます。」
俺達はそこで会話を打ち切り、商隊の後ろで野営を始めた。
それから4時間程して日が上り始めると商隊の人達が起き出してきた。それを見て俺もロランドさん達を起こすためにディメンジョンルームを開いた。
「ロランドさん、起きてますか?」
「タカシさん、おはようございます。ちょうど起きたところですよ。」
「もうすぐ開門の時間なので出ていただけますか?従魔を中に入れますので。」
「わかりました。」
ロランドさんはまだ寝ていた奥さんを起こすと子供を抱いて外に出た。
「(それじゃあ、悪いがロアとガルドは中に入ってくれ。)」
「(はーい!)」
「(うむ。)」
2人が中に入るのを確認して、ディメンジョンルームを閉じると開門を待っていた商隊が進み始めた。
15分程すると俺達の番になった。担当はいつもの衛兵だ。
「なんだ、もう帰ってきたのか。うまくいかなくて逃げ帰ってきたのか?」
「いや、もう討伐してきた。彼らは盗賊に捕まってた商人の一家だ。」
それからロランドさんが服に隠していた商人ギルドのギルドカードを見せ、一家で街に入るとそこで別れることにした。
「本当にお世話なりました。」
「しばらくはこの街の支店にいますのでぜひお立ち寄りください。今回のお礼を致しますので。」
「わかりました。では、後日お邪魔させていただきます。」
俺はそう言うとギルドに討伐完了報告に向かった。
「おはようございます。」
「あら?タカシさん、おはようございます。指名依頼を受けたと聞きましたがどうしたんですか?」
受付していたのはロアの従魔登録をした時のお姉さんだ。
「討伐が終わったので報告に来ました。」
「えっ!もう終わったんですか?」
「えぇ。昨日うちにアジトを見つけて夜襲をかけて終わらせてきました。」
「そ、そんなに早く見つかったんですか……。」
「ダークハウンドに乗ればあっという間ですよ。オークナイトも鼻がいいですから臭いで探せますし。」
「そうですか。では、場所を教えていただけますか?調査員を派遣しますので。
俺は盗賊のアジトの場所を教えると3~4日で結果が出る事を確認すると屋台で大量に食料を買い込み、宿で食事をとることにした。
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