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支払いはカラダで

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 トーコの職業は、ザイタクと言うらしい。先程のスマホとやらが軽快な音を奏でると、トーコは私に向かい人差し指を立てて口を閉ざす様に指示した。


「——…はい。承知しました。では、その件の見積もりはメールにて、…はい。失礼します。」


 これが電話とやらか。実に便利だ。我が国でも魔法で代用出来ないものか…。否、それよりも転移魔法陣の完成の方が優先すべきであったな。

 トーコは仕事があるからと冷蔵庫とやらを指差して、「エール飲んでていいよ」と言い残し、我をこの部屋に取り残して去っていった。

 まあお言葉に甘えて、あの最高に美味いエールを堪能することにした。


 冷蔵庫の中には大量のエールが収納されており、このアルミ缶という入れ物も我が国に持ち帰れば、更なる文明の発展に貢献出来ることだろう。なんたって簡単に潰せる上に、溶かして再利用出来るらしい。




 …それにしても、こんなに静かな時間を過ごすのはいったいいつぶりだ?

 最近は新作魔法のテストと転移魔法陣の件で殆ど缶詰め状態。そしてベルベット嬢による付き纏い。睡眠不足と精神的ストレスが相まって
激しい頭痛に悩まされていた。

 だが不思議とこの世界に飛ばされてからは、頭がキーンと鳴ることは今のところ無い。

 恐らく私は過労だったに違いない。そして悩みのタネの女性問題も無い。トーコは私をそう言う対象で見てないことが判る。

 我も恥を捨てて全てを曝け出してしまったからな。不審者に間違われても可笑しくはない状況で、我の言葉を信じてくれて匿ってくれた上に、大事なシールドシルバを貸してくれて、美味い食事にエールまで…。


 この恩を返すにはどうしたら良いのか…。トーコに何を捧げたら良いのだ?国王直筆の感謝状か?我が国の貴族位を授与するとか、それとも宝石を贈るか。

 貴族女性は皆煌びやかなジュエリーで着飾っていた。婦人等の茶会では、よくマウントを取り合っているとも聞く。ここは一発、我が国の秘宝をネックレスにして贈るのもありかも知れぬな。

 エールを飲みながら、ふわふわとした頭でそんな事を考えていれば、パタパタと足音を立てながらトーコが戻ってきた。

 
「アル、食べ物の好き嫌いある?…って、こっちの食べ物分かんないよね~。例えば、甘いのが好きとか、辛いのが苦手~とか。酸味が無理~とかもね。」

「我に食の好き嫌いは無い。」

「そ、じゃあお任せで良いわね?」


 ……疑問符を浮かべていれば、トーコは買い出しに行くらしく、またエールを飲んで待てと指示を得たので、有り難く頂くことにした。


 
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