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大国プルタニア

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 強制参加を強いられたパーティーで、適当な女を選んだばちが当たったのか、ベルベットの令嬢は、その翌日から私の元を訪ね始めた厄介女だった。

「ねえ聞いてますの?」

 気付いた時には、執務室の席で茶を飲み、時には持参した甘味を平らげて暇を潰している令嬢は、時折一方的に自分の話をし出す。

「悪いが、我は仕事中だ。構ってやれる程、暇ではない。帰ったらどうだ?」

「あら酷いこと…。私はアルフォンス様の妻となる女ですわよ?」

「貴女との結婚は認められぬ筈だ…。」

 たった一度だけダンスに誘い、一曲を終えたら私はその場から去ったというのに…とんだ勘違い令嬢だ。

 私は仕事が命であり、時が来るまでは誰とも結婚するつもりは無い。

 これは国王と母君からの承認も得ており、既に妻を娶られている兄君のお陰で、私は独身で居させてもらっている訳だ…。

「ですが、社交界では私とアルフォンス様の仲を疑う者は居りません。そして、結婚を望む者が多数を占めておりますのよ?」

…それは初耳だ。基本社交界はノーマークだ。どの家の者が誰となれ合おうとも、興味が沸かないし、寧ろどうでもいい。

 自分の職務を全うする為、仕方なしに参加していただけの貴族のお遊びは好かないのだ。

 ライリー・ベルベットはその貴族のくだらぬ遊びの立役者であり、魔力は無いものの、伯爵家の家名を使い、様々な子息子女等を自身の派閥に取り込む恐ろしい女なのである。
 
「ベルベット家は、先代夫人が最後の魔術師で、そなたには一切の魔力が無いと聞く。これは即ち、伯爵家ベルベット一族には、優秀な後継を産む可能性が乏しいと判断される訳だが…。」

 ノルンの血を受け継ぐには、最低条件として高濃度の魔力が必要不可欠である。
 
 もし仮に、無能力者と子を成し、生まれてきた子供が奇跡的に魔力を持ったとしよう…それでも、能力無のライリー・ベルベットの血が混ざれば、運良くて半々が相応である。

 後世の民に、この血を受け継がねばならぬ我等は、相手パートナー選びにも慎重にならねばならない。

 
―――もしも、例の転移魔法が成功さえすれば、すぐにでも戦場に駆け付けることが出来る。このくだらない色恋遊びに付き合う羽目にならずに済むという訳だ。

 動機は聊か不純だが、それでも必要とされている最新の魔法技術な事には変わりない。

 三日後が楽しみだ…。ここ数年間で新たな魔法の誕生は、半期に一度のペースのみ。新しいからと言って、私に関心を抱かせる魔法は久しく無かった。

『初動がアルフォンス様ならば、確実を求めた方が良いだろう…、』

 起動魔力は高ければ高い程、その成功率は跳ね上がる。



「それでも、私は諦めませんわよ!!」

「ああそうかい。それなら…」

 我は、プルタニアの最高魔導士。子孫繁栄は次期王である兄に任せ、私はこの国の発展と民を護る存在として君臨する者なり…。

(ライリー嬢、貴女とは二度と顔を合わせてはやらない。)

 三日後、試作魔法陣に吸い込まれた王子は、身包みを失くした状態で異世界に飛ばされた…。


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