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とりあえず隠せ!

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 明らかに追われている露出狂の不審者。そんな男が、凛々しい顔して我が家のリビングを徘徊している。

 小柳 透子、三十二歳。初めて付き合った相手は、つい先日破局した。初めての男で、最後の男となる筈だったバラ色人生計画も、相手の浮気が原因で…って、今はそんな事を思い出してる場合じゃない。


「け、警察に、通報しなきゃ。そうよ…。」

 鍋蓋片手に、ウロウロする金髪男の目を盗み、今年一番の踏ん張りを見せる。

 デスクワークが長引いて腰痛持ちだが、そんなの今は関係ない。


 ダイニングテーブルの上に置いてあるスマホを取ったら、直ぐに窓から飛び出して、110番だ。通報したら、あの男が連行されるまで、どこに逃げようか…。

 現時刻、お隣さんは絶対に寝ているだろう。その隣は空き地に工場が並ぶ。閑静な住宅街とは名ばかりに、立地条件はご近所が少ない場所だ。

 馬鹿野郎!『新居は、ご近所付き合いが少ない場所が良いな。それに、エッチで声を我慢しなくても良い場所なんてどうだ?』この家を購入する動機が、そんなんだったから…まさか、引っ越して早々に、こんな非常事態が起こるなんて、誰が予想出来たか。


 神聖なるキッチンの女神様…どうかこの私に力を貸してください。最近深夜に放送している異世界系アニメのワンシーンを思い出す。 

 主人公がチート能力を使い、色々な道具に魔法を掛けて最強の武器にしてしまうという何でもありのファンタジーアニメだ。

 夜寝付けなくて、お酒片手に一人で観ていたソレは、三十二歳の私でも面白いと感じた。

 もしも、魔法が使えたら…。

 もしも、最強の勇者になれたなら…。


 手に持つお玉が、銀色に輝く。いや、元から銀色だけども…。


 照明器具は明るさ重視で選んだので、それが今ではお玉をより一層輝かせる!

 女神の力は今、この右手のお玉へと降り注がれた…。


 さあ、進め‼︎今奴は、私に背を向けている。逆三角形の屈強な肉体美なんて見惚れちゃ駄目だ。それに、窪んだお尻なんて…ああああ!なんて良い体持ってんのよ‼︎


 小柳 透子。三十二歳。元彼と目の前の露出狂を比べるな!

 但し、イケメンに限る。そんな名言が頭を過ぎる。だがしかし、今じゃない。いくらイケメンでも、これは立派な犯罪だ。


 公然猥褻わいせつ、住居不法侵入、婦女暴行…いや、伸し掛かられただけだけど、それでも、素肌が…おチンが私の体に触れたのだ。


 もしも又、私に襲いかかって来ようものならば、この聖なるお玉で、そのおチンを吹き飛ばしてやる!

 さあ、勇気を出せ!とー子。今のお前ならきっとやれる!元彼をぶん殴れなかった分、お前はその怨みを溜め込んでるのだ。

 学生時代体育の授業で、卓球中に無双した私は、アイちゃんならぬトコちゃんの愛称が付いただろう?


 さあ、やれる!『サアー‼︎』弾くんだ。さあさあさあさあ。小柳さん家の透子。三十二歳!今更ちゃん付けなんて、恥ずかしいけれど…当時のトコちゃんを憑依させろ。


 こうして私はスマホ奪還の為、ただのお玉を構えながらテーブルへと向かったのだった…。


「すまないが、着る物を借りれるか?」

 踏み込んだ刹那、さらりと金髪を靡かせながら、振り返った金髪のイケメン露出狂…。

 見るからに交戦的な態度の私と、余りにも無防備な男。

 だがしかし、急所を抑えようと思えば、鍋蓋で護られてる事を忘れていた…。
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