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4話
しおりを挟む「奥さん、本当に良いのかい?」
「えぇ・・・始めちゃってください。」
実家を後にした私は急いで帰宅すると、着替えや化粧品などをスーツケースに詰めた。
その晩の内に家を去り、以前住んでいた家の大家さんの元を訪ね事情を伝えたら、快く空き部屋を貸してくれることになった。
以前借りていた家は、当たり前だけど埋まってた。職場から近く、治安も良い広くて綺麗な部屋。もうあれから半年以上経ったのだものそれはそうよね。
今回は急ぎだったので、家賃はそこそこに抑えることにした。立地は郊外。似たり寄ったりなアパートメントが建ち並ぶ一画だ。
近くには市場があったりして、庶民的な場所と言えばよいか・・・まさか貴族がこんな場所に住んでるだなんて誰も思わないだろう。
そして入居した翌日の昼前から、早速引越し業者を雇いあの家へと向かった。
昨晩速達で職場へと申請済みだった私は、今日は休みを貰った。事実上ウィリアムに全ての仕事を擦り付けておいたのだ。
あの男がサボっていた分のツケをやっと回せた。
でも本来のウィリアムは優秀なのだから、これくらいどうってことないだろう。
それに大嫌いな私が居ないのだから仕事がしやすくなって、序でに離婚も決まり万々歳なのは目に見えてる。
私は屈強な男を数人引き連れて、家の中にある私物を全て運び出し終えると、私は鍵と置き手紙を残して家から去った。
新婚の愛の巣なんてものにはなれなかった貴族の見栄ばかりを張った豪華な建物は、次に結ぶ縁と共に住むのだろう。
置き手紙には、不本意だが慰謝料の代わりに家をくれてやる旨を綴った。
「——・・・それじゃあ我々はここらでお暇しますわ。」
「どうもご苦労様。こちらお給金です。」
「こんなに良いんですかい?」
「良いのよ。こう見えても私高給取りなのよ。」
彼等には通常料金にかなりの色を付けて手渡した。それは最後に口止め料としてだ。
さっさと退散していった彼等は、これから豪遊でもするのであろう。浮き足立つ男等の足並みは軽快で、そんな後ろ姿を見送りながら私は安堵の息を吐いた。
そして部屋に入り片付けを済ませれば、気付けば夕方。気付いたら朝から何も食べてない。お腹は鳴ってるけど空腹を感じないのは何故だろうか。
とりあえず家に何も無いので、丁度外の出店が営業を始めたみたいだから軽装に着替えてから向かった。
この街の夜は、活気に溢れていた。
「・・・やあ、お嬢さん。おひとりかな?」
美味しそうな匂いに誘われて油断していた私の背後からは、随分と聞き慣れた男の声がした。
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