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翼
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大輝は浮かれた顔で中学校の入学式に座っていた。
「大輝!俺たち同じクラスになれるといいな。」
三河翼が話しかけてきて、笑顔で答える大輝。
「僕も君と同じクラスになって、また成績争いがしたい。」
秀才の翼と成績を張り合う事、これが彼の小学校時代の生きがいだった。
周りとは違う自分達こそ、この日本の主人公であるとさえ2人は思い込んでいる。
大輝が学校生活で言葉を交わす唯一と言っても良い相手、それが三河翼だった。
そんな会話をしながらも入学式の講堂に漂う異様な臭いに大輝は気付いていたが、翼との友情と場の沈黙を優先していた。
「新入生皆さんの充実した学校生活を期待して式辞といたします。」
バーコードに禿げた校長の話が終わったあたりで翼が大輝に耳打ちをした。
「彼は自分の髪の毛に期待した方が良いんじゃないかな。」
大輝も笑いながらそうだねと耳打ちを返した。
「私、惚れました。」
それは場に似合わない唐突な言葉だった。
大輝と翼が目を見合わせていると、翼の後ろから声が聞こえたものだとわかった。
「私、あなたに惚れました。付き合ってくれませんか?」
声が聞こえる方向を見た2人は驚愕した。
翼の右隣にいた女の子の髪の毛はチリチリで体重は自分達の2倍ほど、顔は悪くないはずなのだがふしだらな生活をしている事がわかる体型によって不恰好に見えた。
なんといっても彼女の息はニンニクを5つすり潰して燻製にしたような臭いで、目は死んだ美しい魚のようだった。
置かれた鞄にはお菓子のパッケージの束が見える。
その告白はどちらに向けられたものか2人は分かりかねていた。
もしくは別の誰かに向けた言葉なのか真意を探るために翼は大輝を指差して言った。
「こいつに言ったの?やめた方が良いよ。こいつは好きな人がいるから」
「違う。あなたよ。」
翼は顔を引き攣らせながらも答えた。
「ごめんね。僕には恋人がいるんだ。だから君の思いには応えられな」
女の子はいきなり翼の唇にキスをすると、イケメンの顔がすっぱすぎる梅を食べたようになって崩れ落ちた。
式典の合間だった事が幸いし、体勢を保てない翼を両親が抱えて退席していく。
隣の席ではない、心の隙間が空いた入学式を大輝は眺め続けた。
「大輝!俺たち同じクラスになれるといいな。」
三河翼が話しかけてきて、笑顔で答える大輝。
「僕も君と同じクラスになって、また成績争いがしたい。」
秀才の翼と成績を張り合う事、これが彼の小学校時代の生きがいだった。
周りとは違う自分達こそ、この日本の主人公であるとさえ2人は思い込んでいる。
大輝が学校生活で言葉を交わす唯一と言っても良い相手、それが三河翼だった。
そんな会話をしながらも入学式の講堂に漂う異様な臭いに大輝は気付いていたが、翼との友情と場の沈黙を優先していた。
「新入生皆さんの充実した学校生活を期待して式辞といたします。」
バーコードに禿げた校長の話が終わったあたりで翼が大輝に耳打ちをした。
「彼は自分の髪の毛に期待した方が良いんじゃないかな。」
大輝も笑いながらそうだねと耳打ちを返した。
「私、惚れました。」
それは場に似合わない唐突な言葉だった。
大輝と翼が目を見合わせていると、翼の後ろから声が聞こえたものだとわかった。
「私、あなたに惚れました。付き合ってくれませんか?」
声が聞こえる方向を見た2人は驚愕した。
翼の右隣にいた女の子の髪の毛はチリチリで体重は自分達の2倍ほど、顔は悪くないはずなのだがふしだらな生活をしている事がわかる体型によって不恰好に見えた。
なんといっても彼女の息はニンニクを5つすり潰して燻製にしたような臭いで、目は死んだ美しい魚のようだった。
置かれた鞄にはお菓子のパッケージの束が見える。
その告白はどちらに向けられたものか2人は分かりかねていた。
もしくは別の誰かに向けた言葉なのか真意を探るために翼は大輝を指差して言った。
「こいつに言ったの?やめた方が良いよ。こいつは好きな人がいるから」
「違う。あなたよ。」
翼は顔を引き攣らせながらも答えた。
「ごめんね。僕には恋人がいるんだ。だから君の思いには応えられな」
女の子はいきなり翼の唇にキスをすると、イケメンの顔がすっぱすぎる梅を食べたようになって崩れ落ちた。
式典の合間だった事が幸いし、体勢を保てない翼を両親が抱えて退席していく。
隣の席ではない、心の隙間が空いた入学式を大輝は眺め続けた。
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