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㉛つづき
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ミレーナ様はこの家で初めてお会いした令嬢です。
そしてアルベルト様のお兄様の婚約者と伺っていた為に、私はお義母様の子だという事実に驚きました。
部屋の中にいるお義母様やミレーナ様、アルベルト様にお義父様、メイドのサーシャや騎士団の方達は私に気付いていない為、話はそのまま続けられていきます。
「それは可笑しくありませんか?
貴方は初婚で、しかも父上との行為はない筈。子供がいるはずないではないですか」
然程驚くこともなく、淡々とまるでセリフを読み上げているかのようにアルベルト様はいいました。
これは私の推測ですが、アルベルト様は事実を知っているのではないでしょうか。
だからこそ驚かれていないと、私は思います。
アルベルト様は学園時代から眉目秀麗で騎士道精神が備わっている素晴らしい人ではありますが、それでも感情だけで動くことはなさいませんでした。
正しい事への判断は、徹底した調査の元があって下すのです。
しかも相手が少しでも誤った事をしている自覚があった場合、双方の意思を確認してではありますが、和解で解決できそうな事案はそのように誘導しておりました。
もしかしたら今回も、アルベルト様はなにか考えがあり、お義母様を誘導しているのでしょうか。
「………」
「だんまりですか?…では私が調べた貴方の情報をお話ししましょうか」
アルベルト様が尋ねるも口を開かないお義母様に、アルベルト様が構うことなく話始めます。
「スプール家で生まれ育った貴方はリスタ・スプールと名付けられ、十五まで平民として暮らす。
十五の時、事故で実の両親を失い、キルシュタイン家の養子となり、クリスティーヌ・キルシュタインと名を改める。
そして貴族令嬢として教育を受けるが教育期間に八年という年月が掛かり、成人としての社交界デビューを逃す。
貴族令嬢としてデビュタントが遅れた貴女は婚期も遅れ、貴方を引き取ったキルシュタイン家は焦り、遠縁ではあったが王妃へとコネクションをもち、デルオ家の後妻として嫁いだ。
…さぁ、簡単にですが纏めてみましたがどこか誤っている点はありましたか?」
私はお義母様が平民だったことよりも、実の両親を失っていた事の方に驚きました。
思わず口元を両手で覆い、当時辛い思いをしたであろうお義母様の心中を察し胸を痛めます。
「……ないわ」
「情報は正しいようですね。では続けてとある青年からも手紙を頂いていますので、そちらもお話ししましょう」
「は?」
とある青年の手紙というアルベルト様の言葉に覚えがないのか、お義母様はツリ目がちの目を真ん丸くさせながら驚いた表情を見せました。
そんなお義母様を前にして、アルベルト様は懐から取り出した小さく折り畳まれた紙を広げます。
「“久しぶり、だね。といっても僕の名前をいっても君は覚えていないかもしれない。
君にとって僕は大勢いる男のうちの一人だったからね。
君が町長の息子との結婚を嫌がり、僕のところに来た時はとても驚いたけど、でも嬉しかったよ。
僕には両親がいなく一人で生活していたから、お金もあまりなくて、君の好きな物も贈ってあげられなかったからね。
でも君は最後の最後にそんな僕の所にきて、“慰めて”と頼ってくれた。
君の神秘的な髪の毛に触れながら、君を愛する機会をくれて本当にありがとう。
君は僕の元からいなくなった後、貴族に引き取られたと聞いたけれど、君ならどこででも幸せになれると信じているよ。
愛するリスタ。どうか君が僕との子を宿していることを願っている。
だけど欲をいえば……愛し合った僕との子は、僕が父親として幸せにしてあげたい。だって君は、僕との子を望んではいなかったようだし、それなら大切になんてしていないだろうから”」
アルベルト様が読みあげた後、沈黙が続きました。
というよりもアルベルト様とお義父様はお義母様の反応を待っているように見えます。
そしてお義母様は初めてその証言を聞いたのか、わなわなと震えて顔を青ざめさせていました。
そんな沈黙状態を破ったのはミレーナ様でした。
「……ちょっと待って、ちょっと待ってよ!
貴族に引き取られたってなに!?お母様は最初っから貴族じゃなかったの!?
ていうか、貴族じゃなかったお母様が侍らせてた男ってただの平民男ってことでしょ!
私は平民だったの!?どうなのよ!!?」
ミレーナ様の叫びともいえる問いかけが部屋だけでなく、廊下にまで響き渡ります。
私もですが、ミレーナ様とお義母様の言葉を信じ、ミレーナ様は貴族の令嬢なのだとそう思っていた使用人たちに戸惑いが広がりました。
ガヤガヤと騒がしくなり始める前に私は両手を叩いて、この場から立ち去り、仕事に戻るように指示します。
そんな私に気付いたアルベルト様が私の元へと駆け寄ってくださいました。
「メアリー、もう休んでいなくて平気なのか?」
「はい。十分すぎる程休みましたので。それにイルガー先生にも許可を頂いてきていますので、安心してください」
少し驚いた表情を浮かべた後、「そうか」と安堵した様子で微笑みを浮かべるアルベルト様に私は「お義母様にお伝えしたいことがあります。私も入室してもよろしいですか?」と尋ねました。
アルベルト様からは一瞬不安そうな表情を浮かべていましたがすぐに表情を変えて「勿論、君の部屋なんだ」という当たり前の言葉が返ってきて、(そういえばここ私の部屋だったわ)と今更ながらに思い出します。
私はアルベルト様に「ありがとうございます」と感謝の気持ちを伝えながら、遂に私の部屋へと入りました。
勿論最初は言葉通り、今まで行っていたメイドの仕事を今後取りやめる。という表明をしようとやってきていましたが、今では少し違います。
そしてアルベルト様のお兄様の婚約者と伺っていた為に、私はお義母様の子だという事実に驚きました。
部屋の中にいるお義母様やミレーナ様、アルベルト様にお義父様、メイドのサーシャや騎士団の方達は私に気付いていない為、話はそのまま続けられていきます。
「それは可笑しくありませんか?
貴方は初婚で、しかも父上との行為はない筈。子供がいるはずないではないですか」
然程驚くこともなく、淡々とまるでセリフを読み上げているかのようにアルベルト様はいいました。
これは私の推測ですが、アルベルト様は事実を知っているのではないでしょうか。
だからこそ驚かれていないと、私は思います。
アルベルト様は学園時代から眉目秀麗で騎士道精神が備わっている素晴らしい人ではありますが、それでも感情だけで動くことはなさいませんでした。
正しい事への判断は、徹底した調査の元があって下すのです。
しかも相手が少しでも誤った事をしている自覚があった場合、双方の意思を確認してではありますが、和解で解決できそうな事案はそのように誘導しておりました。
もしかしたら今回も、アルベルト様はなにか考えがあり、お義母様を誘導しているのでしょうか。
「………」
「だんまりですか?…では私が調べた貴方の情報をお話ししましょうか」
アルベルト様が尋ねるも口を開かないお義母様に、アルベルト様が構うことなく話始めます。
「スプール家で生まれ育った貴方はリスタ・スプールと名付けられ、十五まで平民として暮らす。
十五の時、事故で実の両親を失い、キルシュタイン家の養子となり、クリスティーヌ・キルシュタインと名を改める。
そして貴族令嬢として教育を受けるが教育期間に八年という年月が掛かり、成人としての社交界デビューを逃す。
貴族令嬢としてデビュタントが遅れた貴女は婚期も遅れ、貴方を引き取ったキルシュタイン家は焦り、遠縁ではあったが王妃へとコネクションをもち、デルオ家の後妻として嫁いだ。
…さぁ、簡単にですが纏めてみましたがどこか誤っている点はありましたか?」
私はお義母様が平民だったことよりも、実の両親を失っていた事の方に驚きました。
思わず口元を両手で覆い、当時辛い思いをしたであろうお義母様の心中を察し胸を痛めます。
「……ないわ」
「情報は正しいようですね。では続けてとある青年からも手紙を頂いていますので、そちらもお話ししましょう」
「は?」
とある青年の手紙というアルベルト様の言葉に覚えがないのか、お義母様はツリ目がちの目を真ん丸くさせながら驚いた表情を見せました。
そんなお義母様を前にして、アルベルト様は懐から取り出した小さく折り畳まれた紙を広げます。
「“久しぶり、だね。といっても僕の名前をいっても君は覚えていないかもしれない。
君にとって僕は大勢いる男のうちの一人だったからね。
君が町長の息子との結婚を嫌がり、僕のところに来た時はとても驚いたけど、でも嬉しかったよ。
僕には両親がいなく一人で生活していたから、お金もあまりなくて、君の好きな物も贈ってあげられなかったからね。
でも君は最後の最後にそんな僕の所にきて、“慰めて”と頼ってくれた。
君の神秘的な髪の毛に触れながら、君を愛する機会をくれて本当にありがとう。
君は僕の元からいなくなった後、貴族に引き取られたと聞いたけれど、君ならどこででも幸せになれると信じているよ。
愛するリスタ。どうか君が僕との子を宿していることを願っている。
だけど欲をいえば……愛し合った僕との子は、僕が父親として幸せにしてあげたい。だって君は、僕との子を望んではいなかったようだし、それなら大切になんてしていないだろうから”」
アルベルト様が読みあげた後、沈黙が続きました。
というよりもアルベルト様とお義父様はお義母様の反応を待っているように見えます。
そしてお義母様は初めてその証言を聞いたのか、わなわなと震えて顔を青ざめさせていました。
そんな沈黙状態を破ったのはミレーナ様でした。
「……ちょっと待って、ちょっと待ってよ!
貴族に引き取られたってなに!?お母様は最初っから貴族じゃなかったの!?
ていうか、貴族じゃなかったお母様が侍らせてた男ってただの平民男ってことでしょ!
私は平民だったの!?どうなのよ!!?」
ミレーナ様の叫びともいえる問いかけが部屋だけでなく、廊下にまで響き渡ります。
私もですが、ミレーナ様とお義母様の言葉を信じ、ミレーナ様は貴族の令嬢なのだとそう思っていた使用人たちに戸惑いが広がりました。
ガヤガヤと騒がしくなり始める前に私は両手を叩いて、この場から立ち去り、仕事に戻るように指示します。
そんな私に気付いたアルベルト様が私の元へと駆け寄ってくださいました。
「メアリー、もう休んでいなくて平気なのか?」
「はい。十分すぎる程休みましたので。それにイルガー先生にも許可を頂いてきていますので、安心してください」
少し驚いた表情を浮かべた後、「そうか」と安堵した様子で微笑みを浮かべるアルベルト様に私は「お義母様にお伝えしたいことがあります。私も入室してもよろしいですか?」と尋ねました。
アルベルト様からは一瞬不安そうな表情を浮かべていましたがすぐに表情を変えて「勿論、君の部屋なんだ」という当たり前の言葉が返ってきて、(そういえばここ私の部屋だったわ)と今更ながらに思い出します。
私はアルベルト様に「ありがとうございます」と感謝の気持ちを伝えながら、遂に私の部屋へと入りました。
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