9 / 41
⑨まだ話は続いています
しおりを挟む
そのように話すお義母様とミレーナ様に私は少しむっとしました。
アルベルト様が私の為の時間は取れないといったのは、私の事を蔑ろにすると宣言したわけではない事を私は知っているからです。
だってアルベルト様は私に謝ってくださいました。
申し訳ないと、悔しそうに。
初夜だって私は沢山愛してもらいました。十分なほど。
「…クス、はい。初夜から既に一月が経ちました。それにも関わらずアルベルト様が戻ってくる気配はなく、婚姻前に噂されていた内容はあくまでも噂だと、そのように捉えられております。
それでも流石に貴族令嬢だった時の交流もあり、同情心から寄り添う者もいますが、屋敷全ての掃除と洗濯に時間を費やしている為、今はもう直接関わろうとする者はいません」
「ふ~~ん」
つまらなそうなお義母様の声が廊下に響きました。
「……あの女に味方する人たちを処分できないかしら?」
ぽそりと呟かれたお義母様の言葉は思った以上に廊下に響き、私は体を大きく跳ねらせてしまいました。
でも声を出したわけでもなく、私の存在はまだ気付かれていません。
「それは時期尚早かと」
「何故?」
「まず、あの方の評判です。調べてみると学生時代は特に目立つ生徒ではありませんでしたが、それでも真面目で思慮深く、良心的な性格と評判で女性男性共に評価が高くありました。
また婚姻後の態度から、物事に懸命に取り込む姿は好感を抱きます。実際あの方に嫌な思いをされた人はいないからこそ、アルベルト様に愛されていない女性であっても同情的にならざるを得ないと考えられます」
「それで?」
「次にアルベルト様についてです。アルベルト様は…」
「あー、あの子の評判はいいわよ。あの子、学生の頃から評判だったんだもの。
だからミレーナとくっつけさせようと思ったってのに、……あんな娘を選ぶんだもの。
それで?評判のいい二人だから、処分は待った方がいいと?」
「その通りです」
少しの沈黙は隠れて聞いていた私にはとても鋭い空気のように感じました。
「ん~、わけがわからないわぁ。
どうして評判がいいからってメイドを処分してはいけないの?
メイドはメイド。気に食わないからって処分してもなにも問題ないと思うんだけど?」
少しお酒の酔いがさめたのか、帰宅した時と比べたら間延びしない言い方に変わったミレーナ様は不思議そうにいいました。
「…アルベルトは公爵の爵位を受け継がなかったといっても、公爵家の子息であることは変わらないのよ。
しかも自分自身の力で爵位を賜っている。人々に注目される存在なのよ」
「うんうん。旦那にするなら彼のような人がいいものね!」
「ええ。…でもそれは今も実際に注目されているという事なの」
「ん?わからないわ。どういうこと?」
不思議そうに言葉を返すミレーナ様にお義母様が小さく息を吐き出しました。
そしてそんなお義母様に代わって、ベルッサが「私は説明しましょう」といいます。
「ミレーナ様、アルベルト様に注目する方はどこにでもいらっしゃいます。
その為電撃的に婚約を発表し結婚したアルベルト様は一時期噂の的になっておりました」
「ええ、胸糞悪い噂ね。愛する女性がーとかなんとかっていう…でも今は消えてるでしょ?
私だってお母さんと一緒に社交界にでているんだもの、どんな噂があるかくらい知っているわ」
「流石です。ミレーナ様の仰る通り、アルベルト様の次の行動で噂は所詮噂なのだと、愛する女性などいないということとなりました。
ですが先ほども言いました通り、アルベルト様の行動は常に人々に見られております。
今この屋敷だけではなく王都にすらいないこと。それはアルベルト様が騎士団長という立場を含め不貞行為ではないということも知られております」
私は驚きました。
騎士団のお仕事だとは思ってはいましたが、王都にすらいないことは知らなかったのです。
でも今思い返してみればアルベルト様が私に仕事に行ってくると言っていたあの時、他になにか言っていたような気がします。
“遠征に行かなければならない”とか、きっとアルベルト様は親切にも教えてくださっていた筈です。
なのに私は覚えていません。
かなり寝ぼけていたので、覚えている部分が少なすぎて私は自分自身を叱りたくなりました。
「そして今社交界に参加しているのはあの方ではなく、大奥様とミレーナ様でございます。
あの方が今どのように過ごしているのかを尋ねられたかと思いますが、基本的に心配の声が多いと思います」
「う……確かにそうね。
あの女の友達なのかどいつもこいつも心配していたわ……。
アルにほっぽかれて悲しみにくれているから、代わりに私達が~って教えてあげると今度は慰めに行きたいとか言ってきて……、まぁ断ったけどね」
私はその言葉を聞いて胸が温かくなりました。
勝手に断ったミレーナ様には思うところがありますが、それでも私の今の姿を見せたくはありませんでしたので詰め寄るつもりもありません。
でも誰が私の事を気にかけてくれたのでしょうか?
エリーナ?マリア?それともナナリーかしら?
アルベルト様が私の為の時間は取れないといったのは、私の事を蔑ろにすると宣言したわけではない事を私は知っているからです。
だってアルベルト様は私に謝ってくださいました。
申し訳ないと、悔しそうに。
初夜だって私は沢山愛してもらいました。十分なほど。
「…クス、はい。初夜から既に一月が経ちました。それにも関わらずアルベルト様が戻ってくる気配はなく、婚姻前に噂されていた内容はあくまでも噂だと、そのように捉えられております。
それでも流石に貴族令嬢だった時の交流もあり、同情心から寄り添う者もいますが、屋敷全ての掃除と洗濯に時間を費やしている為、今はもう直接関わろうとする者はいません」
「ふ~~ん」
つまらなそうなお義母様の声が廊下に響きました。
「……あの女に味方する人たちを処分できないかしら?」
ぽそりと呟かれたお義母様の言葉は思った以上に廊下に響き、私は体を大きく跳ねらせてしまいました。
でも声を出したわけでもなく、私の存在はまだ気付かれていません。
「それは時期尚早かと」
「何故?」
「まず、あの方の評判です。調べてみると学生時代は特に目立つ生徒ではありませんでしたが、それでも真面目で思慮深く、良心的な性格と評判で女性男性共に評価が高くありました。
また婚姻後の態度から、物事に懸命に取り込む姿は好感を抱きます。実際あの方に嫌な思いをされた人はいないからこそ、アルベルト様に愛されていない女性であっても同情的にならざるを得ないと考えられます」
「それで?」
「次にアルベルト様についてです。アルベルト様は…」
「あー、あの子の評判はいいわよ。あの子、学生の頃から評判だったんだもの。
だからミレーナとくっつけさせようと思ったってのに、……あんな娘を選ぶんだもの。
それで?評判のいい二人だから、処分は待った方がいいと?」
「その通りです」
少しの沈黙は隠れて聞いていた私にはとても鋭い空気のように感じました。
「ん~、わけがわからないわぁ。
どうして評判がいいからってメイドを処分してはいけないの?
メイドはメイド。気に食わないからって処分してもなにも問題ないと思うんだけど?」
少しお酒の酔いがさめたのか、帰宅した時と比べたら間延びしない言い方に変わったミレーナ様は不思議そうにいいました。
「…アルベルトは公爵の爵位を受け継がなかったといっても、公爵家の子息であることは変わらないのよ。
しかも自分自身の力で爵位を賜っている。人々に注目される存在なのよ」
「うんうん。旦那にするなら彼のような人がいいものね!」
「ええ。…でもそれは今も実際に注目されているという事なの」
「ん?わからないわ。どういうこと?」
不思議そうに言葉を返すミレーナ様にお義母様が小さく息を吐き出しました。
そしてそんなお義母様に代わって、ベルッサが「私は説明しましょう」といいます。
「ミレーナ様、アルベルト様に注目する方はどこにでもいらっしゃいます。
その為電撃的に婚約を発表し結婚したアルベルト様は一時期噂の的になっておりました」
「ええ、胸糞悪い噂ね。愛する女性がーとかなんとかっていう…でも今は消えてるでしょ?
私だってお母さんと一緒に社交界にでているんだもの、どんな噂があるかくらい知っているわ」
「流石です。ミレーナ様の仰る通り、アルベルト様の次の行動で噂は所詮噂なのだと、愛する女性などいないということとなりました。
ですが先ほども言いました通り、アルベルト様の行動は常に人々に見られております。
今この屋敷だけではなく王都にすらいないこと。それはアルベルト様が騎士団長という立場を含め不貞行為ではないということも知られております」
私は驚きました。
騎士団のお仕事だとは思ってはいましたが、王都にすらいないことは知らなかったのです。
でも今思い返してみればアルベルト様が私に仕事に行ってくると言っていたあの時、他になにか言っていたような気がします。
“遠征に行かなければならない”とか、きっとアルベルト様は親切にも教えてくださっていた筈です。
なのに私は覚えていません。
かなり寝ぼけていたので、覚えている部分が少なすぎて私は自分自身を叱りたくなりました。
「そして今社交界に参加しているのはあの方ではなく、大奥様とミレーナ様でございます。
あの方が今どのように過ごしているのかを尋ねられたかと思いますが、基本的に心配の声が多いと思います」
「う……確かにそうね。
あの女の友達なのかどいつもこいつも心配していたわ……。
アルにほっぽかれて悲しみにくれているから、代わりに私達が~って教えてあげると今度は慰めに行きたいとか言ってきて……、まぁ断ったけどね」
私はその言葉を聞いて胸が温かくなりました。
勝手に断ったミレーナ様には思うところがありますが、それでも私の今の姿を見せたくはありませんでしたので詰め寄るつもりもありません。
でも誰が私の事を気にかけてくれたのでしょうか?
エリーナ?マリア?それともナナリーかしら?
1,087
あなたにおすすめの小説
婚約者が実は私を嫌っていたので、全て忘れる事にしました
Kouei
恋愛
私セイシェル・メルハーフェンは、
あこがれていたルパート・プレトリア伯爵令息と婚約できて幸せだった。
ルパート様も私に歩み寄ろうとして下さっている。
けれど私は聞いてしまった。ルパート様の本音を。
『我慢するしかない』
『彼女といると疲れる』
私はルパート様に嫌われていたの?
本当は厭わしく思っていたの?
だから私は決めました。
あなたを忘れようと…
※この作品は、他投稿サイトにも公開しています。
【完結】「お前とは結婚できない」と言われたので出奔したら、なぜか追いかけられています
22時完結
恋愛
「すまない、リディア。お前とは結婚できない」
そう告げたのは、長年婚約者だった王太子エドワード殿下。
理由は、「本当に愛する女性ができたから」――つまり、私以外に好きな人ができたということ。
(まあ、そんな気はしてました)
社交界では目立たない私は、王太子にとってただの「義務」でしかなかったのだろう。
未練もないし、王宮に居続ける理由もない。
だから、婚約破棄されたその日に領地に引きこもるため出奔した。
これからは自由に静かに暮らそう!
そう思っていたのに――
「……なぜ、殿下がここに?」
「お前がいなくなって、ようやく気づいた。リディア、お前が必要だ」
婚約破棄を言い渡した本人が、なぜか私を追いかけてきた!?
さらに、冷酷な王国宰相や腹黒な公爵まで現れて、次々に私を手に入れようとしてくる。
「お前は王妃になるべき女性だ。逃がすわけがない」
「いいや、俺の妻になるべきだろう?」
「……私、ただ田舎で静かに暮らしたいだけなんですけど!!」
壊れた心はそのままで ~騙したのは貴方?それとも私?~
志波 連
恋愛
バージル王国の公爵令嬢として、優しい両親と兄に慈しまれ美しい淑女に育ったリリア・サザーランドは、貴族女子学園を卒業してすぐに、ジェラルド・パーシモン侯爵令息と結婚した。
政略結婚ではあったものの、二人はお互いを信頼し愛を深めていった。
社交界でも仲睦まじい夫婦として有名だった二人は、マーガレットという娘も授かり、順風満帆な生活を送っていた。
ある日、学生時代の友人と旅行に行った先でリリアは夫が自分でない女性と、夫にそっくりな男の子、そして娘のマーガレットと仲よく食事をしている場面に遭遇する。
ショックを受けて立ち去るリリアと、追いすがるジェラルド。
一緒にいた子供は確かにジェラルドの子供だったが、これには深い事情があるようで……。
リリアの心をなんとか取り戻そうと友人に相談していた時、リリアがバルコニーから転落したという知らせが飛び込んだ。
ジェラルドとマーガレットは、リリアの心を取り戻す決心をする。
そして関係者が頭を寄せ合って、ある破天荒な計画を遂行するのだった。
王家までも巻き込んだその作戦とは……。
他サイトでも掲載中です。
コメントありがとうございます。
タグのコメディに反対意見が多かったので修正しました。
必ず完結させますので、よろしくお願いします。
大好きなあなたを忘れる方法
山田ランチ
恋愛
あらすじ
王子と婚約関係にある侯爵令嬢のメリベルは、訳あってずっと秘密の婚約者のままにされていた。学園へ入学してすぐ、メリベルの魔廻が(魔術を使う為の魔素を貯めておく器官)が限界を向かえようとしている事に気が付いた大魔術師は、魔廻を小さくする事を提案する。その方法は、魔素が好むという悲しい記憶を失くしていくものだった。悲しい記憶を引っ張り出しては消していくという日々を過ごすうち、徐々に王子との記憶を失くしていくメリベル。そんな中、魔廻を奪う謎の者達に大魔術師とメリベルが襲われてしまう。
魔廻を奪おうとする者達は何者なのか。王子との婚約が隠されている訳と、重大な秘密を抱える大魔術師の正体が、メリベルの記憶に導かれ、やがて世界の始まりへと繋がっていく。
登場人物
・メリベル・アークトュラス 17歳、アークトゥラス侯爵の一人娘。ジャスパーの婚約者。
・ジャスパー・オリオン 17歳、第一王子。メリベルの婚約者。
・イーライ 学園の園芸員。
クレイシー・クレリック 17歳、クレリック侯爵の一人娘。
・リーヴァイ・ブルーマー 18歳、ブルーマー子爵家の嫡男でジャスパーの側近。
・アイザック・スチュアート 17歳、スチュアート侯爵の嫡男でジャスパーの側近。
・ノア・ワード 18歳、ワード騎士団長の息子でジャスパーの従騎士。
・シア・ガイザー 17歳、ガイザー男爵の娘でメリベルの友人。
・マイロ 17歳、メリベルの友人。
魔素→世界に漂っている物質。触れれば精神を侵され、生き物は主に凶暴化し魔獣となる。
魔廻→体内にある魔廻(まかい)と呼ばれる器官、魔素を取り込み貯める事が出来る。魔術師はこの器官がある事が必須。
ソル神とルナ神→太陽と月の男女神が魔素で満ちた混沌の大地に現れ、世界を二つに分けて浄化した。ソル神は昼間を、ルナ神は夜を受け持った。
行ってらっしゃい旦那様、たくさんの幸せをもらった私は今度はあなたの幸せを願います
木蓮
恋愛
サティアは夫ルースと家族として穏やかに愛を育んでいたが彼は事故にあい行方不明になる。半年後帰って来たルースはすべての記憶を失っていた。
サティアは新しい記憶を得て変わったルースに愛する家族がいることを知り、愛しい夫との大切な思い出を抱えて彼を送り出す。
記憶を失くしたことで生きる道が変わった夫婦の別れと旅立ちのお話。
愛人をつくればと夫に言われたので。
まめまめ
恋愛
"氷の宝石”と呼ばれる美しい侯爵家嫡男シルヴェスターに嫁いだメルヴィーナは3年間夫と寝室が別なことに悩んでいる。
初夜で彼女の背中の傷跡に触れた夫は、それ以降別室で寝ているのだ。
仮面夫婦として過ごす中、ついには夫の愛人が選んだ宝石を誕生日プレゼントに渡される始末。
傷つきながらも何とか気丈に振る舞う彼女に、シルヴェスターはとどめの一言を突き刺す。
「君も愛人をつくればいい。」
…ええ!もう分かりました!私だって愛人の一人や二人!
あなたのことなんてちっとも愛しておりません!
横暴で冷たい夫と結婚して以降散々な目に遭うメルヴィーナは素敵な愛人をゲットできるのか!?それとも…?なすれ違い恋愛小説です。
※感想欄では読者様がせっかく気を遣ってネタバレ抑えてくれているのに、作者がネタバレ返信しているので閲覧注意でお願いします…
⬜︎小説家になろう様にも掲載しております
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる