15 / 26
アレン視点③
しおりを挟む「俺でいいのか…?」
「うん!フェアンじゃなきゃだめなんだ!」
そう言ったアリンの目はもう泣いてなどなく決意に満ち溢れ光り輝いていた。
「わかった。一緒に行こう。どこまでも一緒だ!」
2人は微笑み合いどちらからともなく優しくキスをした。
アリンが気持ちを伝えてくれた。もう俺だけ秘密にしておくわけにはいかない。
初めは可愛いアリンに嫌われたくない、もう少し一緒にいたいという気持ちだけだった。でもそれが共に過ごすようになり、幸せな事も辛い事も分かち合う中で一生そばにいたいと思うようになった。
ーー伝えよう。自分がルシュテン王国の王子だということを。
そして、この日に共に生きてくれるようアリンへの永遠の愛を誓おう。
ーーー
「う~…蒸し暑いね、まだ6月になったばかりなのに…」
ノスティアからデリアへ向かう道のりは山道を通る。6月と言う事もあり道中は木々が生い茂り湿気で汗が体に張り付いた。アリンを俺の前に座らせて馬で移動しているが、猫獣人は人間よりも体温が高いからかアリンは見るからに辛そうで休ませならなければいけないのは一目瞭然だった。
「アリン、一度休もう。」
「ごめんね、僕、他の猫獣人より暑いの弱いみたいで…」
「気にしなくていいさ。まだ時間はあるから休みなさい。ほら水を飲んで…。」
木陰にアリンを下ろしあらかじめ用意しておいた水筒をアリンに渡した。そして自分のカバンからタオルを取り出すとアリンへ告げた。
「アリン、タオルを川で絞ってくるから少し待っててくれるか?冷やした方がいいから…」
「えっ…そこまでしなくていいよ!」
「ダメだ!少し冷やそう、な?」
「う、うん…ありがとう!」
照れるアリンの頭を優しく撫でると近くの小川に向かった。
「ここでいいか…」
サラサラと流れる川にタオルを浸しぎゅっと硬く絞る。そのままタオルを近くの岩に置くとアリンが自分を見ていないかを確認し、ポケットに手を入れた。
ーー1週間ではこれしか用意できなかったが…。
フェアンの掌には木でできた小箱があり中にはシルバーの細いリングが入っていた。
なんの変哲もないただのシルバーリングだが、宝石屋などないノスティアでは、買えるのはこれが限界だった。しかし裏側には永遠の愛を表す『etarnal love』の文字が彫ってあり、それはフェアンが店主にお願いし自分で刻印したものだった。
小箱をもう一度ポケットに大事にしまうと、タオル片手にアリンの元へ走った。
急いで戻るとそよそよと優しい風が流れる中アリンは気持ちよさそうに木にもたれかかり眠っていた。
「アリン…?冷たいタオルだよ。」
「ん…?気持ちいい…。…あれ、僕眠っちゃってた?」
「暑かったからな、疲れたんだろう。もう大丈夫か?」
「うん…!後少しだし大丈夫!」
水分をとって少し眠ったおかげか顔色が良くなったアリンの額をタオルで拭いた。
その後アリン自分の前に座らせ馬の手綱を持つと目的の場所まで向かった。
しばらく歩くと、どうやらアリンの様子がおかしい。肩が小刻みに震え、血の気が引いているように見えた。
「フェアン…。こ、この場所なんだ…。」
ただの森のように見えるが、よく見るとその場所だけには木が生えておらずそこで何があったのかは容易に想像がついた。
アリンは5年前の光景が忘れられないのだろう。ただでさえ白い顔が真っ白になり涙が止めどなく溢れている。
「アリン…大丈夫か?」
「ぐずっ…ふっ……だ、大丈夫。フェアン、馬から…降ろして?」
「わかった。」
馬から降ろすとアリンはよたよたと事故のあった場所に座り込み叫ぶように泣いた。
「おと、さん…おかあさ…ん!ごめん、ごめんね。今まで来れなくて…。痛かったよね、怖かったよねっ…。ずっと来れなくてごめんね…」
まるで幼い子供のように泣くアリンの姿は見ている方も心を痛めた。
「うん!フェアンじゃなきゃだめなんだ!」
そう言ったアリンの目はもう泣いてなどなく決意に満ち溢れ光り輝いていた。
「わかった。一緒に行こう。どこまでも一緒だ!」
2人は微笑み合いどちらからともなく優しくキスをした。
アリンが気持ちを伝えてくれた。もう俺だけ秘密にしておくわけにはいかない。
初めは可愛いアリンに嫌われたくない、もう少し一緒にいたいという気持ちだけだった。でもそれが共に過ごすようになり、幸せな事も辛い事も分かち合う中で一生そばにいたいと思うようになった。
ーー伝えよう。自分がルシュテン王国の王子だということを。
そして、この日に共に生きてくれるようアリンへの永遠の愛を誓おう。
ーーー
「う~…蒸し暑いね、まだ6月になったばかりなのに…」
ノスティアからデリアへ向かう道のりは山道を通る。6月と言う事もあり道中は木々が生い茂り湿気で汗が体に張り付いた。アリンを俺の前に座らせて馬で移動しているが、猫獣人は人間よりも体温が高いからかアリンは見るからに辛そうで休ませならなければいけないのは一目瞭然だった。
「アリン、一度休もう。」
「ごめんね、僕、他の猫獣人より暑いの弱いみたいで…」
「気にしなくていいさ。まだ時間はあるから休みなさい。ほら水を飲んで…。」
木陰にアリンを下ろしあらかじめ用意しておいた水筒をアリンに渡した。そして自分のカバンからタオルを取り出すとアリンへ告げた。
「アリン、タオルを川で絞ってくるから少し待っててくれるか?冷やした方がいいから…」
「えっ…そこまでしなくていいよ!」
「ダメだ!少し冷やそう、な?」
「う、うん…ありがとう!」
照れるアリンの頭を優しく撫でると近くの小川に向かった。
「ここでいいか…」
サラサラと流れる川にタオルを浸しぎゅっと硬く絞る。そのままタオルを近くの岩に置くとアリンが自分を見ていないかを確認し、ポケットに手を入れた。
ーー1週間ではこれしか用意できなかったが…。
フェアンの掌には木でできた小箱があり中にはシルバーの細いリングが入っていた。
なんの変哲もないただのシルバーリングだが、宝石屋などないノスティアでは、買えるのはこれが限界だった。しかし裏側には永遠の愛を表す『etarnal love』の文字が彫ってあり、それはフェアンが店主にお願いし自分で刻印したものだった。
小箱をもう一度ポケットに大事にしまうと、タオル片手にアリンの元へ走った。
急いで戻るとそよそよと優しい風が流れる中アリンは気持ちよさそうに木にもたれかかり眠っていた。
「アリン…?冷たいタオルだよ。」
「ん…?気持ちいい…。…あれ、僕眠っちゃってた?」
「暑かったからな、疲れたんだろう。もう大丈夫か?」
「うん…!後少しだし大丈夫!」
水分をとって少し眠ったおかげか顔色が良くなったアリンの額をタオルで拭いた。
その後アリン自分の前に座らせ馬の手綱を持つと目的の場所まで向かった。
しばらく歩くと、どうやらアリンの様子がおかしい。肩が小刻みに震え、血の気が引いているように見えた。
「フェアン…。こ、この場所なんだ…。」
ただの森のように見えるが、よく見るとその場所だけには木が生えておらずそこで何があったのかは容易に想像がついた。
アリンは5年前の光景が忘れられないのだろう。ただでさえ白い顔が真っ白になり涙が止めどなく溢れている。
「アリン…大丈夫か?」
「ぐずっ…ふっ……だ、大丈夫。フェアン、馬から…降ろして?」
「わかった。」
馬から降ろすとアリンはよたよたと事故のあった場所に座り込み叫ぶように泣いた。
「おと、さん…おかあさ…ん!ごめん、ごめんね。今まで来れなくて…。痛かったよね、怖かったよねっ…。ずっと来れなくてごめんね…」
まるで幼い子供のように泣くアリンの姿は見ている方も心を痛めた。
151
お気に入りに追加
393
あなたにおすすめの小説

じゃない方の私が何故かヤンデレ騎士団長に囚われたのですが
カレイ
恋愛
天使な妹。それに纏わりつく金魚のフンがこの私。
両親も妹にしか関心がなく兄からも無視される毎日だけれど、私は別に自分を慕ってくれる妹がいればそれで良かった。
でもある時、私に嫉妬する兄や婚約者に嵌められて、婚約破棄された上、実家を追い出されてしまう。しかしそのことを聞きつけた騎士団長が何故か私の前に現れた。
「ずっと好きでした、もう我慢しません!あぁ、貴方の匂いだけで私は……」
そうして、何故か最強騎士団長に囚われました。



拾った宰相閣下に溺愛されまして。~残念イケメンの執着が重すぎます!
枢 呂紅
恋愛
「わたしにだって、限界があるんですよ……」
そんな風に泣きながら、べろべろに酔いつぶれて行き倒れていたイケメンを拾ってしまったフィアナ。そのまま道端に放っておくのも忍びなくて、仏心をみせて拾ってやったのがすべての間違いの始まりだった――。
「天使で、女神で、マイスウィートハニーなフィアナさん。どうか私の愛を受け入れてください!」
「気持ち悪いし重いんで絶対嫌です」
外見だけは最強だが中身は残念なイケメン宰相と、そんな宰相に好かれてしまった庶民ムスメの、温度差しかない身分差×年の差溺愛ストーリー、ここに開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。

継母の品格 〜 行き遅れ令嬢は、辺境伯と愛娘に溺愛される 〜
出口もぐら
恋愛
【短編】巷で流行りの婚約破棄。
令嬢リリーも例外ではなかった。家柄、剣と共に生きる彼女は「女性らしさ」に欠けるという理由から、婚約破棄を突き付けられる。
彼女の手は研鑽の証でもある、肉刺や擦り傷がある。それを隠すため、いつもレースの手袋をしている。別にそれを恥じたこともなければ、婚約破棄を悲しむほど脆弱ではない。
「行き遅れた令嬢」こればかりはどうしようもない、と諦めていた。
しかし、そこへ辺境伯から婚約の申し出が――。その辺境伯には娘がいた。
「分かりましたわ!これは契約結婚!この小さなお姫様を私にお守りするようにと仰せですのね」
少しばかり天然、快活令嬢の継母ライフ。
▼連載版、準備中。
■この作品は「小説家になろう」にも投稿しています。

竜人のつがいへの執着は次元の壁を越える
たま
恋愛
次元を超えつがいに恋焦がれるストーカー竜人リュートさんと、うっかりリュートのいる異世界へ落っこちた女子高生結の絆されストーリー
その後、ふとした喧嘩らか、自分達が壮大な計画の歯車の1つだったことを知る。
そして今、最後の歯車はまずは世界の幸せの為に動く!

クラヴィスの華〜BADエンドが確定している乙女ゲー世界のモブに転生した私が攻略対象から溺愛されているワケ〜
アルト
恋愛
たった一つのトゥルーエンドを除き、どの攻略ルートであってもBADエンドが確定している乙女ゲーム「クラヴィスの華」。
そのゲームの本編にて、攻略対象である王子殿下の婚約者であった公爵令嬢に主人公は転生をしてしまう。
とは言っても、王子殿下の婚約者とはいえ、「クラヴィスの華」では冒頭付近に婚約を破棄され、グラフィックは勿論、声すら割り当てられておらず、名前だけ登場するというモブの中のモブとも言えるご令嬢。
主人公は、己の不幸フラグを叩き折りつつ、BADエンドしかない未来を変えるべく頑張っていたのだが、何故か次第に雲行きが怪しくなって行き────?
「────婚約破棄? 何故俺がお前との婚約を破棄しなきゃいけないんだ? ああ、そうだ。この肩書きも煩わしいな。いっそもう式をあげてしまおうか。ああ、心配はいらない。必要な事は俺が全て────」
「…………(わ、私はどこで間違っちゃったんだろうか)」
これは、どうにかして己の悲惨な末路を変えたい主人公による生存戦略転生記である。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる