拾われた孤児は助けてくれた令嬢に執着する

あおくん

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アレン視点③

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「俺でいいのか…?」

「うん!フェアンじゃなきゃだめなんだ!」

そう言ったアリンの目はもう泣いてなどなく決意に満ち溢れ光り輝いていた。

「わかった。一緒に行こう。どこまでも一緒だ!」

2人は微笑み合いどちらからともなく優しくキスをした。

アリンが気持ちを伝えてくれた。もう俺だけ秘密にしておくわけにはいかない。

初めは可愛いアリンに嫌われたくない、もう少し一緒にいたいという気持ちだけだった。でもそれが共に過ごすようになり、幸せな事も辛い事も分かち合う中で一生そばにいたいと思うようになった。

ーー伝えよう。自分がルシュテン王国の王子だということを。
そして、この日に共に生きてくれるようアリンへの永遠の愛を誓おう。


ーーー



「う~…蒸し暑いね、まだ6月になったばかりなのに…」

ノスティアからデリアへ向かう道のりは山道を通る。6月と言う事もあり道中は木々が生い茂り湿気で汗が体に張り付いた。アリンを俺の前に座らせて馬で移動しているが、猫獣人は人間よりも体温が高いからかアリンは見るからに辛そうで休ませならなければいけないのは一目瞭然だった。

「アリン、一度休もう。」

「ごめんね、僕、他の猫獣人より暑いの弱いみたいで…」

「気にしなくていいさ。まだ時間はあるから休みなさい。ほら水を飲んで…。」

木陰にアリンを下ろしあらかじめ用意しておいた水筒をアリンに渡した。そして自分のカバンからタオルを取り出すとアリンへ告げた。

「アリン、タオルを川で絞ってくるから少し待っててくれるか?冷やした方がいいから…」

「えっ…そこまでしなくていいよ!」

「ダメだ!少し冷やそう、な?」

「う、うん…ありがとう!」

照れるアリンの頭を優しく撫でると近くの小川に向かった。

「ここでいいか…」

サラサラと流れる川にタオルを浸しぎゅっと硬く絞る。そのままタオルを近くの岩に置くとアリンが自分を見ていないかを確認し、ポケットに手を入れた。

ーー1週間ではこれしか用意できなかったが…。

フェアンの掌には木でできた小箱があり中にはシルバーの細いリングが入っていた。

なんの変哲もないただのシルバーリングだが、宝石屋などないノスティアでは、買えるのはこれが限界だった。しかし裏側には永遠の愛を表す『etarnal love』の文字が彫ってあり、それはフェアンが店主にお願いし自分で刻印したものだった。

小箱をもう一度ポケットに大事にしまうと、タオル片手にアリンの元へ走った。
急いで戻るとそよそよと優しい風が流れる中アリンは気持ちよさそうに木にもたれかかり眠っていた。

「アリン…?冷たいタオルだよ。」

「ん…?気持ちいい…。…あれ、僕眠っちゃってた?」

「暑かったからな、疲れたんだろう。もう大丈夫か?」

「うん…!後少しだし大丈夫!」

水分をとって少し眠ったおかげか顔色が良くなったアリンの額をタオルで拭いた。
その後アリン自分の前に座らせ馬の手綱を持つと目的の場所まで向かった。

しばらく歩くと、どうやらアリンの様子がおかしい。肩が小刻みに震え、血の気が引いているように見えた。

「フェアン…。こ、この場所なんだ…。」

ただの森のように見えるが、よく見るとその場所だけには木が生えておらずそこで何があったのかは容易に想像がついた。
アリンは5年前の光景が忘れられないのだろう。ただでさえ白い顔が真っ白になり涙が止めどなく溢れている。

「アリン…大丈夫か?」

「ぐずっ…ふっ……だ、大丈夫。フェアン、馬から…降ろして?」

「わかった。」

馬から降ろすとアリンはよたよたと事故のあった場所に座り込み叫ぶように泣いた。

「おと、さん…おかあさ…ん!ごめん、ごめんね。今まで来れなくて…。痛かったよね、怖かったよねっ…。ずっと来れなくてごめんね…」

まるで幼い子供のように泣くアリンの姿は見ている方も心を痛めた。




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