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アレン視点②
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◆
食い物がなければ人は生きていけない。
その事実は身をもって知った。
世話をしてくれる存在がいない俺は、手当たり次第に口に入れた。
食べていいものと食べてはいけないものの違うがあることすら、教えてくれる存在はいなかったから。
人が捨てた食べ物はもちろん、草や口、虫に木の枝に木の根っこ。
たくさん口に入れてきた。
腹が空いたから。
それだけだった。
だけど限界があった。
十分な栄養も十分なエネルギーも足りていない結果俺は倒れた。
目を開く労力も、指一本動かす気力さえなくなるほど衰弱した。
このままだと死ぬ。
だがそれでいいと思えた。
こんな人生、クソくらえだと。
寧ろこんな人生を手放せるのなら喜んで死んでやると、生きる事への執着心なんていらなかった。
目を閉じた。
真っ暗な世界が広がった。
俺は静かにそこを漂っていた。
ああ、このまま無になれる。
そんなとき、手に温もりを感じた。
今までずっと望んで、でも与えられなかった温もり。
何故。
何故死ぬ寸前の今なんだ。
そう思いつつも、その温もりが嬉しかった。
これで未練なく死ぬことが出来ると、そう思えた。
□
次に目覚めたとき、俺はまだ生きていることを悟った。
ぼんやりとした意識の中、視界を彷徨わせる。
(白い……)
青でもグレーでも赤でも黒でもない白色。
空の色では見たこともない色が目の前に広がっていた。
一体ここはどこなんだろうか。
もしかして、生きていると思ったことは勘違いで、本当はやっぱり死んだのではないか。
ぼんやりとした思考でそんなことを考えた。
「目が覚めたんだね!」
眩しい笑顔で女の子がいった。
「よかった。心配したんだよ」といいながら俺の手に触れた女の子。
柔らかくて温かくて、死ぬ直前で与えられた温もりはこれだと、直感でわかった。
「あ!目が覚めたことお医者さまに伝えなくちゃ!
待っててね!すぐに戻ってくるから!」
女の子はそういって俺の手を離し、慌てた様子でどこかに行ってしまった。
待って。行かないで。
側にいてほしい。ずっと手を握っていてほしい。
そんな言葉は俺の口からは出てこない。
女の子を引き留められる言葉を俺は知らなかった。
「安静に、そしてきちんと栄養を取れば大丈夫ですよ」
白衣を着た男性が、よくわからない道具を俺に当て息を吐きだすとそう告げた。
女の子はその言葉に笑顔になり、俺は言葉の意味がよく分からなかったため無表情で聞いていた。
白衣を着た男性が部屋を出るとすぐに女の子は俺の近くに寄り、手を握る。
温かい。
女の子の温もりが嬉しかった。
「私はねミレーナっていうの。君の名前を教えてほしいな」
「……」
「?」
「?」
「……あれ?聞こえてない?なーまーえ!教えてほしいな!」
当時の俺は女の子が何かを話しかけていることはわかったが、それがどのような意味なのかを理解し返すことすら出来なかった。
言葉が分からなかったからだ。
ただただ女の子の言葉がわからず首を傾げるだけ。
だけど女の子はそんな状態の俺のことを理解してくれた。
それからだ。
女の子は本を持ってきた。
本を通して俺に言葉を教えていった。
そこでやっと、女の子の名前がミレーナということ、ミレーナが俺の名前を知りたがっていることを理解した。
「…名前、ない」
「名前ないの?」
「はい。ない」
女の子、ミレーナは少し考えた仕草をした後「…私が名前、つけていい?」と尋ねた。
「ミレーナが名付け親?」
「私が君の名前を考えるからそうなるね。もちろん嫌なら別の人にお願いするつもりだよ。
名前がないと今後不便だし」
「ミレーナがいい。名前。お願い」
別の人間に俺の名前を考えるのならば、ミレーナがよかった。
寧ろミレーナ以外つけてほしくないとも思った。
ミレーナはそんな俺の様子をみて、嬉しそうに笑った。
そして、俺は“アレン”という名前を貰った。
「……遠い遠い場所なんだけど、“アレン”ってね“ハンサム”っていう意味もあるんだ。
内緒だよ?」
ハンサムという意味は教えてもらっていなかったが、照れくさそうに笑ったミレーナをみて、悪い意味でつけられた名前ではないだろうことはわかった。
食い物がなければ人は生きていけない。
その事実は身をもって知った。
世話をしてくれる存在がいない俺は、手当たり次第に口に入れた。
食べていいものと食べてはいけないものの違うがあることすら、教えてくれる存在はいなかったから。
人が捨てた食べ物はもちろん、草や口、虫に木の枝に木の根っこ。
たくさん口に入れてきた。
腹が空いたから。
それだけだった。
だけど限界があった。
十分な栄養も十分なエネルギーも足りていない結果俺は倒れた。
目を開く労力も、指一本動かす気力さえなくなるほど衰弱した。
このままだと死ぬ。
だがそれでいいと思えた。
こんな人生、クソくらえだと。
寧ろこんな人生を手放せるのなら喜んで死んでやると、生きる事への執着心なんていらなかった。
目を閉じた。
真っ暗な世界が広がった。
俺は静かにそこを漂っていた。
ああ、このまま無になれる。
そんなとき、手に温もりを感じた。
今までずっと望んで、でも与えられなかった温もり。
何故。
何故死ぬ寸前の今なんだ。
そう思いつつも、その温もりが嬉しかった。
これで未練なく死ぬことが出来ると、そう思えた。
□
次に目覚めたとき、俺はまだ生きていることを悟った。
ぼんやりとした意識の中、視界を彷徨わせる。
(白い……)
青でもグレーでも赤でも黒でもない白色。
空の色では見たこともない色が目の前に広がっていた。
一体ここはどこなんだろうか。
もしかして、生きていると思ったことは勘違いで、本当はやっぱり死んだのではないか。
ぼんやりとした思考でそんなことを考えた。
「目が覚めたんだね!」
眩しい笑顔で女の子がいった。
「よかった。心配したんだよ」といいながら俺の手に触れた女の子。
柔らかくて温かくて、死ぬ直前で与えられた温もりはこれだと、直感でわかった。
「あ!目が覚めたことお医者さまに伝えなくちゃ!
待っててね!すぐに戻ってくるから!」
女の子はそういって俺の手を離し、慌てた様子でどこかに行ってしまった。
待って。行かないで。
側にいてほしい。ずっと手を握っていてほしい。
そんな言葉は俺の口からは出てこない。
女の子を引き留められる言葉を俺は知らなかった。
「安静に、そしてきちんと栄養を取れば大丈夫ですよ」
白衣を着た男性が、よくわからない道具を俺に当て息を吐きだすとそう告げた。
女の子はその言葉に笑顔になり、俺は言葉の意味がよく分からなかったため無表情で聞いていた。
白衣を着た男性が部屋を出るとすぐに女の子は俺の近くに寄り、手を握る。
温かい。
女の子の温もりが嬉しかった。
「私はねミレーナっていうの。君の名前を教えてほしいな」
「……」
「?」
「?」
「……あれ?聞こえてない?なーまーえ!教えてほしいな!」
当時の俺は女の子が何かを話しかけていることはわかったが、それがどのような意味なのかを理解し返すことすら出来なかった。
言葉が分からなかったからだ。
ただただ女の子の言葉がわからず首を傾げるだけ。
だけど女の子はそんな状態の俺のことを理解してくれた。
それからだ。
女の子は本を持ってきた。
本を通して俺に言葉を教えていった。
そこでやっと、女の子の名前がミレーナということ、ミレーナが俺の名前を知りたがっていることを理解した。
「…名前、ない」
「名前ないの?」
「はい。ない」
女の子、ミレーナは少し考えた仕草をした後「…私が名前、つけていい?」と尋ねた。
「ミレーナが名付け親?」
「私が君の名前を考えるからそうなるね。もちろん嫌なら別の人にお願いするつもりだよ。
名前がないと今後不便だし」
「ミレーナがいい。名前。お願い」
別の人間に俺の名前を考えるのならば、ミレーナがよかった。
寧ろミレーナ以外つけてほしくないとも思った。
ミレーナはそんな俺の様子をみて、嬉しそうに笑った。
そして、俺は“アレン”という名前を貰った。
「……遠い遠い場所なんだけど、“アレン”ってね“ハンサム”っていう意味もあるんだ。
内緒だよ?」
ハンサムという意味は教えてもらっていなかったが、照れくさそうに笑ったミレーナをみて、悪い意味でつけられた名前ではないだろうことはわかった。
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