ヒーローは爆発だ2020

藤本箕山は爆発だ3

奇兵隊の叛乱という本を読んだ。会津藩士を先祖に持つ早乙女貢の作で、司馬遼太郎の世に棲む日日とは対称的に美化されたものではない史実の高杉晋作が描かれているとレビューで読み期待していた。読んでみると高杉についての話は予想以上に少なくそのあたりでは期待はずれだった。志士活動をする高杉と同世代だった若き日、高杉のような華々しい革命の志士になりたいと思った。だが高杉のような未来は来ず、高杉が死んだ年よりずっと上になってしまい、高杉などに憧れるより岡本太郎・種田山頭火を若き日から知るべきだったと感じる。若き日の考えが大きくくつがえるというのは自分の中で新たな発見の楽しみがある。太郎・山頭火を超えるほどの史実の人物としての魅力を見つけないと高杉・坂本竜馬に憧れる心はもうよみがえらないだろう。
だがこの本を読み土肥庄次郎という人物を知ったのは収穫だった。土肥は高杉と同じ遊び人として登場したが、高杉よりもはるかに潔くさわやかな江戸っ子として表現されている。
土肥は藤本箕山を思わせるところがある。新たなる幕末のヒーローとして土肥庄次郎が誕生した。だが土肥は箕山と同じく遊郭好きだが、箕山のように破産してでも色道を追求しようというところはない。そのあたりがヒーロー道を追求する僕とも違うところだが、大きな夢はなくとも全てを失って箕山と同じく幇間として暮らし続けた点において魅力的な人物ではある。