校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話

赤髪命

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CASE15 川端 澪の場合

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(……お手洗いの順番、譲ってもらうのは難しそうですね……、佐々木さん、相当我慢しているみたいですし……)

 普段から誰かに話しかけるということをあまりしない私にとって、お手洗いの順番を譲ってもらうために声をかけるということはとても難しいことでした。

「ふぅっ……くぅっ……」

 ましてや、目の前で呻き声を上げるほど辛そうにしている佐々木さんにお手洗いの順番を譲ってもらうのは、クラスの委員長としてできるわけがありません。私にお手洗いの順番を譲ったせいで佐々木さんがお漏らしをしてしまうなんてことは、委員長として許されない。私はそう考えていました。

(そうは言っても、私ももう、お手洗いまで我慢できるか分からないのですが……)

 少し尿意の波が強くなってきて、私は周りのクラスメイトの皆さんに見られないようにしながら手を股のあたりに当てて我慢を続けました。

「澪ちゃん、もしかして、もうおしっこ限界なんでしょ」

 私の後ろから、クラスで私が普段よく話す数少ない友人の沙織さんが、私のことを心配してくれていました。

「……実は、もう……」

「それじゃあ、明日香ちゃんみたいに順番譲ってもらったら?」

 沙織さんがそういうのと同時に、隅野さんにお手洗いの順番を譲ってもらった佐々木さんがお手洗いに入っていきました。

「そんなこと……」

「でも、もう限界なんでしょ? 委員長がみんなの前でおしっこ漏らしちゃってもいいの?」

「……それは……」

 委員長としてお手洗いに先に行かせてほしいとお願いすることは恥ずかしいですが、皆さんの前でお漏らししてしまうことはもっと恥ずかしいです。ですが……

「でも、隅野さんに話しかけたことはほとんどないし……」

 普段よく話している間柄なら、お手洗いの順番を譲ってもらうこともそれほど難しいことではないかもしれません。ですが、普段話していない相手にお手洗いの順番を譲ってもらうのは……

「それじゃあ、私がお願いしてみようか?」

 沙織さんにそう言われて、もう尿意の限界寸前の私は、声も出せないまま小さくうなずきました。沙織さんは隅野さんに話しかけると、隅野さんは少し考えた後に私にお手洗いの順番を譲ってくれました。私は声も出せないままちょうど開いたお手洗いの扉に向かって駆け出しました。

(早くっ……早くっ……もう、漏れちゃいますっ……)

 慌ててお手洗いの鍵をかけて、パンツを下ろしてしゃがむと、すぐに、というよりも勝手に、おしっこが出始めました。

 しょろろろろろろ……しゅいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ

(ふあぁ……いっぱい出てます……何とか間に合いました……)

 30秒ほど出続けたおしっこが収まった後、私は隅野さんを待たせてしまっていることを思い出し、急いでお手洗いを出ました。すると、先ほどよりも辛そうにおしっこを我慢していた隅野さんが、お手洗いの中に駆け込んでいきました。

「澪ちゃん、間に合った?」

 心配そうに私に聞く沙織さんに、私は笑顔でうなずきました。
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