校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話

赤髪命

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CASE1 石田 菜奈絵の場合

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(やっとトイレ行ける……!)

 先生からトイレ休憩をとることを告げられて、あたしがまず思ったのはそれだった。

「菜奈絵ちゃん、大丈夫? 我慢できそう?」

 バスが止まったらすぐにトイレに行けるように先生の後ろの席で座っていると、もともと隣の席に座っていた美優ちゃんが隣にやってきた。

「……ほんとにやばい……、おしっこ、漏らしちゃいそう……」

「菜奈絵ちゃん、トイレ休憩のときに行けてなかったもんね」

 2時間くらい前。トイレ休憩のために立ち寄ったサービスエリアで、あたしはトイレを済ませなかった。理由は簡単で、とってもトイレが混んでいたから。

「菜奈絵ちゃん、トイレ行かなくて大丈夫なの?」

「あと1時間くらいでしょ? それなら平気かな。トイレも混んでるみたいだし、遅くなっちゃったらみんなに迷惑掛かっちゃうでしょ?」

 私はそう言って、トイレに行かずにバスに戻った。

 それから15分後、私たちの乗ったバスは渋滞に巻き込まれた。そして、動かないバスの中で、段々とあたしはおしっこがしたくなってしまっていたのだ。

「菜奈絵ちゃん、本当に限界そうだね」

 あたしの太ももでぴったりと閉じられたうえで両手で押さえられてる股のあたりを見て美優ちゃんが言う。

「ほんとに、こうしてないと出ちゃいそうで……」

「でも、菜奈絵ちゃん、ありがとう」

「えっ?」

「実は、私も、また、おしっこしたくなっちゃって……」

 そう言われて美優ちゃんの下半身に目を向けると、美優ちゃんは制服の青いスカートを少し伸ばして、可愛らしいタオルを膝の上にのっけていた。

(ああ、美優ちゃんも結構やばいんだな……)

 思えば、トイレ休憩の時にトイレに行ってない私は論外として、トイレを済ませてた子たちもかれこれ2時間トイレに行けてない状態だから、美優ちゃんみたいにおしっこがしたくなってしまっていてもおかしくなかった。

「だから、菜奈絵ちゃんが先生に「おしっこしたい」って言ってくれたおかげで、私もトイレに行けるんだよ」

 そんなことを話しているうちに、バスが止まって扉が開いた。先生がバスの中で何か言っていたけれど、そんなのを聞く余裕もないくらいおしっこが漏れそうなあたしは、慌てて公園の女子トイレのピクトグラムの付いた建物に駆け込んだ。

 トイレはボロボロの外見よりは新しい感じで、手洗い場と個室が一つだけあった。あたしは慌てて個室に入ると、おしっこを押さえていた手を片方離して鍵を閉めようとした。

 ……ぷしゃっ

 片手が離れたその隙をついて、ほんの少しおしっこが出てきちゃった。

(あとちょっとだけ待ってっ!)

 心の中でそう言って扉の鍵を閉め、あたりを見渡した。けれど、普段使っている便器は見つからず、その代わり床に和式トイレがあるのが見えた。

(嘘! ここ和式なの!?)

 あたしは驚きながら、慌ててパンツをずらしてもう片方の手でスカートを持ち上げながらしゃがんだ。それと同時に、

 ぷしゃぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!

と勢いよくおしっこが出始め、

 じょぼぼぼぼぼっ!!!

と大きな音を立てた。

(ふあぁぁぁぁ……気持ちいい……)

 しゅぅぅぅぅぅ、ぽたぽたっ。

(すっきりした……)

 トイレットペーパーでおしっこの出口を拭いて、水を流した。すると、誰かが扉を叩く音が聞こえた。

「あの……、できれば早く……」

 弱々しい声が聞こえて、あたしは少し湿ったパンツをはきなおしてトイレを出た。


 * * * 


(うわぁ、すごい行列……)

 トイレの前には、クラスメイト全員が長い行列を作っていた。

「菜奈絵ちゃん、間に合った?」

 さき先生の問いかけにあたしがうなずくと、

「それじゃあ、先にバスに戻ってていいよ。みんなおしっこしたいみたいだから、待っててあげてね」

とさき先生が言った。

(やっぱりみんなおしっこしたかったんだ。あたしだけじゃなくてよかった♪)

 少し湿ったパンツがちょっぴり気持ち悪いけれど、あたしはなんだか楽しい気分になっていた。
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