校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話

赤髪命

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「みんな! 高速道路を降りたらすぐに臨時のトイレ休憩にするからね!」

 揺れるバスの車内に、クラスの担任である大橋早紀の声が響いた。

 その一言で、バスに乗っていた生徒たちの不安そうな表情が、ほんの少し明るくなった。

「トイレ休憩」、声に出してそれを求めることはただ1人を除いて誰もしなかったが、このバスに乗っている全員がまさにそれを求め、耐え、渇望していたのだ。

 ことの発端はおよそ2時間前。校外学習で県外の企業を見学した華水黄杏女学園の1年C組の生徒たちが乗ったバスは、トイレ休憩のために立ち寄ったSAを出発して15分ほど走ったところで、渋滞に巻き込まれてしまった。

 その結果、本当ならトイレ休憩から1時間ほどで学校に着いていたのが、2時間経っても未だ高速道路から下りられてすらいない状況になってしまっていた。

 さらに悪いことに、華水黄杏女学園は少し田舎の山の近くにあるため、最寄りのインターチェンジから車で30分ほどかかる。そのため、高速道路から下りてもしばらくの間、彼女たちはバスから解放されることはないのだ。

 そんな状況下で、しかもまだ暑くなり始めたばかりの5月下旬。冷房の効いたバスの車内で、乙女たちはみな生理現象と戦う羽目になってしまったのだ。

 まだ華水黄杏女学園に通い始めて2か月も経っていない彼女たちは、まだあまり関わったことのない同級生たちにトイレを我慢していることを悟られぬよう、静かに迫りくる尿意と戦っていた。

 そんな中で、ただ1人。自らの身体が限界寸前であることを悟り、声を上げた生徒がいた。

「先生……、あたし、めちゃくちゃトイレ行きたい……」

 その声の主は、石田菜奈絵。いつも明るくて元気な、クラスのムードメーカーだ。しかし、彼女の声は普段の様子からは考えられないほど弱々しく、それは彼女の膀胱にもう幾分の余裕も残されていないことを物語っていた。

 しかし、彼女が声を上げたことで、彼女たちはトイレ休憩を得ることができた。それは紛れもない事実である。

 そうしてほんの少しだけ重い雰囲気が晴れたバスは、インターチェンジを下りてすぐ近くの脇道にそれた場所にとまった。

「トイレ休憩にするから、学校まで我慢できなさそうな子はここでトイレを済ませておいて。それと、我慢できなさそうな子から先にさせてあげてね!!」

 その声がすると同時に、バスに乗っていた生徒たちが早足でバスを降りていき、すぐ近くの小さな公園のトイレに長い列をなした。

 これは、22人の生徒たちとたった1つのトイレの話である。
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