上 下
15 / 29

015・榎本彩葉その1

しおりを挟む
 延々と続く渋滞と高まり続ける尿意に段々とバスの中の生徒たちが焦りを覚える状況は、天然でマイペースな生徒であっても同じであった。

(う……結構おしっこしたい……さっきのトイレ休憩、ちゃんとトイレ行っておけばよかった……)

 榎本彩葉、普段から眠そうにしているマイペースな彼女も、今ではすっかり尿意に体を支配されてしまっていた。

 彩葉は菜奈絵やあやなどと同じくトイレ休憩をスルーした生徒のうちの1人であるが、その理由も実に彼女らしいものであった。

 時はトイレ休憩のサービスエリアにバスが到着した頃に遡る。のんびりした性格の彼女は、他の生徒がトイレに行くためにバスを降りたその後で自分もバスを降りようと考えていた。しかし、

(うへぇ……トイレすごい混んでる……)

彼女がバスの窓越しに見たのは、女性用トイレの長い行列であった。

(あんなに混んでるなら、学校まであと1時間くらいだし、寝ちゃった方がいいよね……)

 マイペースな彩葉は、寝ていれば尿意を我慢できると思い、トイレに行かないまま夢の中へと落ちていった。

 そして、それから約1時間後。

(んぅ……、なんだかおしっこしたくなってきた……。えっと、時間は……)

 下腹部に違和感を覚え目を覚ました彩葉の目に飛び込んできたのは、窓の外に広がる赤いテールランプの列だった。

(うわぁ……、すごい渋滞してる……。これじゃあ、学校着くの、いつになるのかな……?)

 彩葉が不安な気持ちを抱く中、その不安をさらに掻き立てる言葉が彩葉の耳に届いた。

「この渋滞だと、しばらく動きそうにありませんね……」

 近くの席の生徒が小さな声で呟いたその一言が、彩葉の尿意の引き金を引いてしまった。

(うそ……しばらく動けないの……?)

 いつ開放されるか分からない不安を感じた彩葉の身体は、一気に彩葉に尿意を意識させた。

(うぅ……、おしっこ結構ピンチかも……)

 寝起きでぼーっとしていた彩葉の頭でも、自分が置かれてしまった状況と最悪の結末は容易に想像することができた。

(……とりあえず、おしっこ我慢しなきゃ……)

 彩葉は尿意に抗う決意をすると、小さなハンカチを鞄から取り出した。

(誰も見てないし……、恥ずかしいけど、こうしてたほうが我慢しやすいし、もし出ちゃいそうになっても止めれるから……)

 ハンカチを持った手を、彩葉は柔らかい太ももで挟み込む。そして、彼女の大事な部分に、ハンカチを押し当てた。

(……やっぱり眠い……けど、寝ちゃったらそのままおしっこ我慢できずにおねしょしちゃうかも……)

 自らの判断でより恥ずかしい失敗をしてしまいたくないという思いが、彩葉の睡魔と戦い始めた。

 そして、彩葉自身のハンカチの援助を受けた小さなダムと黄色い濁流の戦いも、とうとう始まってしまったのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

OLサラリーマン

廣瀬純一
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

双葉病院小児病棟

moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。 病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。 この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。 すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。 メンタル面のケアも大事になってくる。 当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。 親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。 【集中して治療をして早く治す】 それがこの病院のモットーです。 ※この物語はフィクションです。 実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。

自習室の机の下で。

カゲ
恋愛
とある自習室の机の下での話。

N -Revolution

フロイライン
ライト文芸
プロレスラーを目指すい桐生珀は、何度も入門試験をクリアできず、ひょんな事からニューハーフプロレスの団体への参加を持ちかけられるが…

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...