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お客が誰かは言ってくれ
しおりを挟む「いえ、本日はなにも。ただ、お客様がいらしてます」
「お客?」
俺は顔をしかめて、うんざりした声を出した。
約束を取り付けてない客は断れよなぁ。側近なんだから、それくらい気を回せよ。
「悪いが断ってくれ。今日はさすがに疲れた……」
「かしこまりました」
「まぁ、用件だけは聞いておいてくれ」
「かしこまりました」
俺は欠伸をしながら、寝室にむかうが、なんだか気持ちの悪い違和感を覚える。
…………ん? あれ? このシチュエーション……前にもあったぞ。
ナクサスは毒舌で厭味ったらしい奴だが、超有能な側近だ。そのナクサスが俺のいない間に客を受け入れたっていうことは……
俺は足を止めて、振り返り、ナクサスの顔を見て問う。
「クラリスが来てるのか?」
「おや、王子も少しは賢くなられましたね」
飄々と憎たらしいほどのすました顔で答えるナクサスに、一気に目も覚め、苦々しい視線をむけた。
「クラリスならクラリスと言えっ!」
「王子に聞かれませんでしたし、出過ぎたことは……お疲れのようでしたし。応接の間でお待ちです。お茶の準備はしておりますので」
なぁにが「出過ぎたことは……」だよっ!
いつも出過ぎたことばかり言ってくるくせに。
ナクサスはパンパンと手を叩き、使用人達に「さぁ、仕事ですよ」と皆を退室させる。
俺とクラリスを2人にしてくれる、ナクサスの心遣いだ。
ホント、ナクサスはデキる側近なんだよなぁ……嫌味っぽいけど。
使用人達が部屋からいなくなり、俺は疲弊していた気力と体力が嘘だったかのように心を弾ませ、応接の間の扉を開けた。
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