鈍感令嬢に恋したら、なぜかダンジョンに住む羽目になった王子の日常

桜乃

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地下迷宮は余裕……じゃなかった

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 気持ちを落ちつかせる為に少し休憩をとった後、自分の頬を両手でパシンと叩き、気合を注入する。
 ぴーは俺が休んでいる間にいなくなっていた。

 あいつ、得意の転移魔法でどっかいったな。

「転移魔法を使うんなら俺も連れてけよなぁ……」

 思わず不満が口から漏れてしまう。

 とりあえず上の階に行くか。
 えっと……ここは……どこだ? 薄暗くてよくわからない。
 
 思いっきり体を伸ばし、気持ちを切り替え、スクッと立ち上がる。パンパンと服の汚れをはたきながら歩き始めた。

 魔法で指先に光を灯し、現在位置を確認後、階段にむかう。王宮の地下は広く複雑だが、俺にとっては生まれ育ち、今現在も住んでるわけで。大丈夫。王宮の地下迷路はしっかり頭に入っている。

 知っている場所ゆえ、気持ちに余裕はできたが、なにせだだっ広く、途中、矢が飛んできたり、床が凍っていて滑ったり……と細かい罠にはまりながら時間が過ぎていった。やっと階段が見えてきたのでホッとし、歩く速度を早める。
 
 だいぶ、時間をロスしてしまった……急がねば。
 あと800mってところか。

 ガタガタ……

 ん?

 ガタガタガタ……

 あれ? 天井ってこんなに低かったっけ?

 ガタガタガタガタ……

 違うっっ!! 天井が落ちてきてるんだ!

 ガタガタ音をさせながら、頭上に迫ってきている天井に俺は冷や汗をかきながらも頭をフル回転させる。

 ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ!
 この場合、なんの魔法が有効なんだ? どうすれば俺は助かる?

 火魔法、風魔法、水魔法……俺が使える魔法を思い浮かべ、即座にシュミレーションをするが…………無理。

 くなる上は…………

 
 走れぇぇぇ!


 早く階段を上らなきゃ俺はペチャンコだ。
 全力疾走、猛ダッシュ、とにかく、とにかく走るんだぁ!

 俺は必死に走り続けた。800mってこんなに遠かったっけ? 

 息を切らしながら、やっとの思いで階段を一歩上がると、今まで俺の頭スレスレだった天井が急に「ガシャン!」と勢いよく床に落ちる……おい、おい、おい……俺を潰す気満々かよ!?

 ふぅぅぅ。

 俺は呼吸を整え、階段に腰掛けた。

 つ、疲れた……
 いくら17歳の若さでも800m全力疾走はキツイ。

 前言撤回、体力勝負も楽じゃない。

 もう1度、大きく息を吐き、天井を見上げる。さっき落ちてきた天井は何事もなかったかのように静かに元の場所に戻っていた。

 それにしても……結婚を報告した時、エドワードもザラも俺を潰す。とは言っていたが……まさか物理的にペチャンコにするつもりだったとは……本当にあいつら……俺、この国の王子だぞ? 扱い雑じゃね?

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