鈍感令嬢に恋したら、なぜかダンジョンに住む羽目になった王子の日常

桜乃

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謎は解いたが……暇なんですか?

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「つ」「な」「ん」「し」「け」「い」「こ」

 並び替えて、台詞を作る……と。
 えっ……と……わからん。全くわからん。
 俺がウンウン唸りながら考えていると、肩の上でぴーがさえずる。

「コンナ、カンタンナノモ、ワカンナイノォ。ヤッパリ、エロアホオウジト、ケッコンシチャダメェ」
「うるさいぞ、ぴー! 時間がないんだ。黙ってろ」
「ケッコンハンタイ! ケッコンハンタイ! ケッコンハンタイ!」
「だから、うるさいって……ん? ケッコン?」

 ちょうど「け」「つ」「こ」「ん」の文字はあるな……残りは「な」「し」「い」
 ……
 ……
 ……はぁぁぁぁ。

 俺は台詞を頭の中で完成させると、あまりのアホらしさに溜息をついた。

 ……こんな台詞を俺に言わせる為にわざわざ本を集めて、呪文作ったのかよ……我が国の魔道士長、暇なの?

『暇なわけないでしょう。超超多忙です。私の仕事を増やさないで下さい』

 げげっ……また、聞かれてた……って、コレ、仕事じゃ無いだろっ!

『時間、ありませんよ』
「はぁ」

 俺は扉を開ける呪文を……クッソー、言いたくない。言いたくないけど、言わないと書庫から出られない。ちっくしょー
 あくまで、この台詞は呪文だ。俺の意思とは全く無関係だからな。

 俺は自分に言い聞かせ、意を決して、呪文を声に乗せた。

「クラリストハ」
「けっこんしない」

 こ、こらっ! ぴー、なんで「クラリスとは」なんて前置きをつけるんだよ! 勝手に台詞を足すなっ。呪文は「けっこんしない」だけだろう!

 呪文に反応して、扉の魔法陣が青白く光り「カチャ」と鍵が開く音がした。

 俺はやっと書庫から脱出し、爆発は免れたが……色々と精神的ダメージが大きすぎ、その場にしゃがみ込む。

 ある意味、体力、魔力勝負のダンジョンの方が楽かも……心が削られまくる。

「『クラリストハケッコンシナイ』ゲンチトッタァァ」

 ぴーは嬉しそうにくるくる飛び回り、俺の疲弊した心に追い討ちをかける。

 なにが「言質げんちとったー」だ。
 お前が勝手に「クラリスとは」って足したんじゃないかっ。

「お前……勝手に……足すな……」

 精神的に疲れ切った俺は、ぴーに文句を言うも、声に力が入らず、言葉がはっきり出てこない。

「キコエナーイ」

 肩にとまったぴーから小憎たらしいさえずりが聞こえ、俺は小さく息を吐いた……

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