鈍感令嬢に恋したら、なぜかダンジョンに住む羽目になった王子の日常

桜乃

文字の大きさ
上 下
7 / 30

大事な事は早く言ってください

しおりを挟む

 小鳥は俺の肩にちょこんと止まると、かわいい声でさえずり始める。

「エロアホオウジ、クラリスニ、ホウコクスルゥ」
「お、おい、まて。俺は何もしてないぞ! それに『アホ』だけじゃなく『エロ』まで王子の前につけるなっ」
「エロイコト、カンガエテタ。クラリスニ、オシエテアゲルゥ」
「まて、まて、ちょっとだけだぞ? ちょっとだけ! 男なんだからそれくらいいいだろう!」
「ボク、ワカンナーイ。クラリスニ、キイテミルゥ」
「や、やめろぉぉーー」

 俺は力いっぱい止めるも、小鳥は知らないふりを決め込む。

 く、くそぅ。仕方あるまい……こうなったら、コイツの口を封じる為、焼き鳥にするしか……

 突然現れたこの小鳥は、ザラがクラリスとの連絡用に魔法で作り出した鳥で「ぴー」とクラリスが名付けた。

 クラリスやザラ、エドワードには従順なんだが、まー俺には口が悪いのなんのって……ザラそっくり。いや、クラリスの前では良い子ぶってる分、ザラよりたちが悪い。
 クラリスはコイツの本性を知らないから「ぴーちゃん」なんて呼んで、かわいがっている。それをいい事にクラリスにベタベタ甘えては、俺の方をむいてニヤリと笑う。鳥なのに、だ! 

「イマ、ボクノコト、ヤコウトシタデショ」

 チッ……気づかれたか……

「クラリス、エロアホオウジト、ケッコンナンテ、ダメ、ゼッタイ」

 不審そうな目つきで俺を見ながら、不愉快な言葉をさえずる。

 余計なお世話だっ! 
 あと、エロはやめろ。エロは!

『なにぴーと遊んでいるのですか……早く、書庫を出ないと爆発しますよ?』

 伝心魔法でんしんまほうでザラの声が直接聞こえ、俺はぴーから視線を外す…………えっ? バクハツ? 

 ………………ばくはつぅぅ!?

「ば、爆発って、そういうことは早く言ってください!!」
『早く書庫から出なさい。ああ、アホ王子が失敗したら、ぴーは転移魔法を使いなさい』
「ハーイ、ザラサマ」

 俺の心配はっ!?

『あと10分ですよ』
「10分!?」

 おい、おい、おい……勘弁してくれ。

 俺は急いで集めた本を並べる。

「月女神がタンザに降りた伝承」
「ナース大国滅亡手記」
「んぱか族の歴史」
「神殿系図」
「けだるげな王」
「いい王子の育て方」
「こどもの作り方」

 えっと……頭文字っと……「つ」「な」「ん」「し」「け」「い」「こ」

 つなんしけいこ? 意味わからん。 

「ツナンシケイコ……」

 なんとなくボソリと口にしてしまい、しまった!っと咄嗟に思うが、もう遅い。扉に描かれていた魔法陣が赤く光り、数本の鋭利な氷柱つららが俺をめがけて飛んできた。俺は慌ててシールドを張ったが、1本だけシールドをすり抜け、俺の喉元をかすめる……

 俺、死ぬよ? 本当に死んじゃうよ?

『ああ、言い忘れましたが、呪文を間違えると氷柱つららが飛んできますから』

 早く言えぇぇぇぇ!!
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

恋愛は見ているだけで十分です

みん
恋愛
孤児院育ちのナディアは、前世の記憶を持っていた。その為、今世では恋愛なんてしない!自由に生きる!と、自立した女魔道士の路を歩む為に頑張っている。 そんな日々を送っていたが、また、前世と同じような事が繰り返されそうになり……。 色んな意味で、“じゃない方”なお話です。 “恋愛は、見ているだけで十分よ”と思うナディア。“勿論、溺愛なんて要りませんよ?” 今世のナディアは、一体どうなる?? 第一章は、ナディアの前世の話で、少しシリアスになります。 ❋相変わらずの、ゆるふわ設定です。 ❋主人公以外の視点もあります。 ❋気を付けてはいますが、誤字脱字が多いかもしれません。すみません。 ❋メンタルも、相変わらず豆腐並みなので、緩い気持ちで読んでいただけると幸いです。

没落令嬢は、おじさん魔道士を尽くスルーする

みん
恋愛
とある国の辺境地にある修道院で育った“ニア”は、元伯爵令嬢だ。この国では、平民の殆どは魔力無しで、魔力持ちの殆どが貴族。その貴族でも魔力持ちは少ない。色んな事情から、魔力があると言う理由で、15歳の頃から働かされていた。ただ言われるがままに働くだけの毎日。 そんな日々を過ごしていたある日、新しい魔力持ちの……“おじさん魔道士”がやって来た。 ❋相変わらずのゆるふわ設定なので、軽く読んでいただければ幸いです。 ❋気を付けてはいますが、どうしても誤字脱字を出してしまいます。すみません。 ❋他視点による話もあります。 ❋基本は、1日1話の更新になります。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜

EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」 優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。 傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。 そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。 次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。 最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。 しかし、運命がそれを許さない。 一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか? ※他サイトにも掲載中

Crystal of Latir

ファンタジー
西暦2011年、大都市晃京に無数の悪魔が現れ 人々は混迷に覆われてしまう。 夜間の内に23区周辺は封鎖。 都内在住の高校生、神来杜聖夜は奇襲を受ける寸前 3人の同級生に助けられ、原因とされる結晶 アンジェラスクリスタルを各地で回収するよう依頼。 街を解放するために協力を頼まれた。 だが、脅威は外だけでなく、内からによる事象も顕在。 人々は人知を超えた異質なる価値に魅入られ、 呼びかけられる何処の塊に囚われてゆく。 太陽と月の交わりが訪れる暦までに。 今作品は2019年9月より執筆開始したものです。 登場する人物・団体・名称等は架空であり、 実在のものとは関係ありません。

【完結】悪役令嬢が可愛すぎる!!

佐倉穂波
ファンタジー
 ある日、自分が恋愛小説のヒロインに転生していることに気がついたアイラ。  学園に入学すると、悪役令嬢であるはずのプリシラが、小説とは全く違う性格をしており、「もしかして、同姓同名の子が居るのでは?」と思ったアイラだったが…….。 三話完結。 ヒロインが悪役令嬢を「可愛い!」と萌えているだけの物語。 2023.10.15 プリシラ視点投稿。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

処理中です...