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番外編2 君と僕の出会いの物語

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 僕達は控えの部屋を出て、家族が待っている扉の前に立った。

 耳まで真っ赤になったクラリスの姿に、だんだん僕も恥ずかしさが増してくる。気の利いた言葉も思いつかず、紅潮しているであろう火照ほてった顔を背けてしまった。

 ホント、格好がつかないな……

 自分の至らなさに少し落ち込んでいると、ふいにクラリスが僕の顔をムリヤリ覗き込み、染め上げた頬をふにゃりと緩める。

「あのね……知ってる? 青い薔薇ブルーローズの花言葉」
「花言葉? なに?」

 少し照れも収まった僕は、幻の花にも花言葉があるんだな……なんて思いながら聞き返した。クラリスは顔いっぱいに喜びを溢れさせ、笑う。それは、初めて会った時と同じ、太陽のように眩しくて温かい笑顔。そして、一言一言を胸に刻むかのようにゆっくりと答えた。

「夢、叶う」


 目の前の扉が開いた。


 大切な家族の笑顔、ずっと傍にいると誓った君……

 目を交わし、僕に微笑む君の浅紅色ピンクの唇が小さく動く。

「ミカエル……愛してるわ」



 たった1つの僕の望み。たった1つの僕の夢。
 出会ったあの日の君との約束。


 今…………夢、叶う。




 《fin》
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