292 / 298
番外編2 君と僕の出会いの物語
9
しおりを挟むあの日、あの場所から連れ出し、僕に居場所をくれたアルフォント家の僕の家族……
「僕はあの日から、義父さまと義母さまには感謝してます。ありがとうございました。だから、気に病まれると……僕が困ります」
僕を早く引き取れば良かったと言ってくれた義母さまは優しく微笑み、僕の頭でポンポンと手を弾ませた。
参ったな。いつまで経っても義母さまにとって僕は幼い子供のままで。でも、そんな義母さまの愛情が嬉しいと思ってしまう。
「私はそろそろ戻るわ。もうね、お父さまが号泣して、大変なのよ」
「……あ」
クスクス笑いながら、義母さまは立ち上がった。僕は気まずくて目を泳がせる。
「クラリスは、これからもアルフォント家にいるのにね。あの人ったら、それとこれとは話は別だ! とかなんとか言っちゃうの」
困った人だわぁと苦笑する義母さまから、顔を逸らしてしまった。
う、うん。いや、まぁ、うん。男として義父さまの気持ちもわかるっていうか……義父さまは娘の事となると涙腺が大崩壊するし。以前なんかアルベルトを叩き潰すとか言って、王家反逆を口にしたくらいだから。でも……それだけ慈しんできた宝物を義父さまと義母さまは僕に託してくれるんだ。それは、とても嬉しい事で……
「あの! あの……必ず幸せにします」
決意を新たに今の気持ちをしっかりと伝えると義母さまはクスリと笑う。
「ミカエル、貴方も幸せになるの。2人とも大切な私達の子供なのだから」
義母さまの言葉に僕はじわりと視界がにじみ、深く深くお辞儀をした。
「ふふ、お父さまもね。自分が手塩に掛けて育て、可愛がってきたミカエルが相手だもの、安心してるのよ。あの人、間違いなく貴方の事、世界一のいい男だと思っているわよ。もちろん、私もそう思ってるわ」
義母さまが僕にウィンクし、嬉しいやら恥ずかしいやら、僕の顔に熱が帯びてくる。
本当に義父さまも義母さまも親バカ全開すぎて、この国トップの公爵の言動とは思えないんだけど……さ…………でも、泣きたくなるほど幸福感で胸がいっぱいだ。
僕に家族というものを教えてくれ、本当の息子のようにたくさんの愛情を注いでくれたご恩は忘れない。
アルフォント家は絶対に僕が守り抜く。
「ねぇ、そろそろクラリスの準備も終わったんじゃないかしら。様子、見に行ってくれば?」
「そうですね」
義母さまの提案に僕は顔を上げて、ゆっくりと微笑んだ。
0
お気に入りに追加
55
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

【完結】悪役令嬢の反撃の日々
くも
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。
「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。
お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。
「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です

琥珀の月
桜 朱理
恋愛
「……あんたが俺のことを嫌いなのは知ってるよ。でも、やめてやらない。憎まれても、恨まれてもいいから、あんたは俺を見ていろ。あんたは俺のものだ」綺麗な琥珀色の獣の瞳をした義弟は美咲の知らない男の顔で言った。昔からこの綺麗な義弟に惹かれながらも、その思いを否定し続けた美咲は強引な義弟の腕に囚われた。
昔、ムーンライトノベルズ様に掲載していたものを改稿しています。第1章、第2章はムーンライトノベルズ様に掲載していたものを手直して、一括で掲載。第3章以降は書下ろしの予定。

婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ
音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。
だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。
相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。
どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる