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番外編 1 君の姿を…… (本編 忘却の……の少し後のお話です)

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「これでよしっと! さ、急いで急いで!」
「え……う、うん」

 よくわからないけれど、義姉さまに言われた通りの位置に立つ。手を握り、スッと体を寄せてきた義姉さまに僕はドキッとする。

「ミカエルの手って温かいのね」

 そんな僕をよそにニコリと笑う義姉さま。

「あー……えっと……義姉さまの手……冷たいよね。僕が温めてあげるよ」

 本当は義姉さまの手は冷たくはなかった。けれど、手を握られたままだと僕の体温が上昇していく一方な気がして、それを誤魔化すように僕は義姉さまの小さな手を包む。

 僕の行動に少し驚いたのか、義姉さまは顔を上げ僕を見た。薄っすら紅色に染めた頬を緩め、はにかみながら小さく笑う。照れながら僕も微笑みを返す。

「あ、時間! ほらほら、カメラの方、向かなきゃ!」

 義姉さまの元気な声にハッとして、慌てて目線をカメラに移した時、カシャリと機械的な音がした。

 えっ? 終わり? これで紙に写ったの? すごいな……カメラ。

「撮れたかな?」

 ウキウキとカメラに近づき確認する僕と義姉さま。カメラから紙が排出され、徐々に僕達の姿が写し出される。



「うん、綺麗に撮れてる!」
「良かった……」

 僕は義姉さまと顔を見合わせ、クスッと笑いあった。

 シャシン……っていうんだっけ。すごく綺麗に写せるんだな……義姉さまの姿が本当にそのまんま。

「はい」

 義姉さまににっこりと手渡され、両手で受け取った僕は写真をじっと見つめてしまう。

 嬉しい……嬉しい……義姉さまと僕が同じ紙に写ってる。

 デスクに飾ろうとしたら、義姉さまが恥ずかしいと止めたので、引き出しにしまう事にした。が、1人で仕事をしている時は引き出しから出し、こっそりデスクに飾っているのは、義姉さまには内緒。

 デスクに飾った義姉さまと僕の写真を何度も何度も眺めては、僕は幸せな気分に包まれていた。




《fin》

✽イラスト月島様
 https://estar.jp/users/653808493

※少し遅くなるかもしれませんが、ミカエルとクラリス出会いの物語も本編に追加投稿予定です。
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