上 下
281 / 298
番外編 1 君の姿を…… (本編 忘却の……の少し後のお話です)

9

しおりを挟む

「えっ……これって……」
「ザラ様にね。お願いして1枚だけ作ってもらったの。みんなには内緒よ」

 顔を綻ばせながら、義姉さまは唇の前で人差し指を立てる。

「わざわざ? ザラ様に? 僕がもらってもいいの?」
「うん。ミカエル、すごく欲しそうだったじゃない。優秀ペアになったんだし……」
「えっ……嬉しい。ありがとう……すごく嬉しい……」

 諦めていたものが目の前にある事が嬉しいのはもちろんだけど、義姉さまの優しさに胸がいっぱいになり、僕はじっと紙を見つめていた。

「でも、なにをそんなに写したかったの?」

 義姉さまは無邪気な笑顔で首を傾げる。

「えっと……義姉さまを……」
「あ、私がミカエルを写せばいいの?」

 カメラと呼ばれる魔法道具に手を伸ばし、紙をセットしながら屈託なく笑う義姉さまに僕は慌てた。

「違う! 違う!! その……僕はさ……義姉さまを写したい……」

 否定をした勢いで僕の望みを伝えるも、最後の方は照れてしまい、口の中でゴニョゴニョしながらうつむいてしまう。

「私と? 私も一緒に写っていいの?」
「も、もちろん!!」

 ……っていうか、義姉さまが写ってなかったら、意味ないから! …………ん? 一緒に?

「一緒に?」
「うん、2人で一緒に写るんでしょ? あ、ちょっと髪を綺麗にしてくる!!」
「そのままでも……」

 引き止める言葉を言い終わらないうちに、義姉さまは部屋を出て行ってしまった。

 僕は義姉さまだけ写せれば良かったんだけど……2人で写るなんて……

 僕1人しかいない部屋で、思わずふふふっと声を漏らしてしまう。
しおりを挟む

処理中です...