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番外編 1 君の姿を…… (本編 忘却の……の少し後のお話です)

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「コホン、皆さん」

 学園長の咳払いが聞こえ、皆が一旦動きを止めた。

 ナイスッ、学園長!!

「それでは、今からダンスの音楽を……ん……ビリッ?」

 オーケストラの方へ体の向きを変えた学園長の足元から、紙が破れたような音が聞こえた。生徒の視線は学園長の足元に集中する。

 そこには、学園長が踏んづけている手のひらほどの2枚の紙が無残な姿になっていて、その場にいた者は息を呑んだ。

 姿を写す特別な紙……あれがないと魔法道具もただのガラクタなんじゃ……

「ああぁぁぁぁぁっ」

 僕らの悲鳴に近い声が響き渡る。
 学園長は引きつった笑いを生徒達に向け、高速早口でダンスパーティーの始まりを告げた。

「あ……あ……はい。本体の方は無事ですから……さぁ、ダンスを始めましょう!!」

 オーケストラに指示を出し、私は忙しいので後は任せます。とそそくさと消えていった学園長。

 皆、踊るのも忘れ、呆然とその場に立ち尽くしていた。

 生徒全員が、今、同じ事を思ったに違いない。

 あんだけ長話しといて、忙しいわけないだろ! このボケナス!!
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