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雷の夜に……

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 部屋から出ようと体を翻した義姉さまの腕を咄嗟に掴んだ。涙を必死に隠しているのが伝わってくる。

「……ごめん……本当にごめん……もう雷、大丈夫だから……」

 義姉さまが僕の手を振りほどこうとするも、男の力に敵うわけない。

 仄暗ほのぐらい室内に雨と雷の音だけが響く。

「ミカ……エル……?」

 ずっと黙っている僕に義姉さまが不安そうな声を漏らした。

 もう後戻りできない道が僕の前に広がっている。

 家族である事を。
 義弟である事を。

 今、この瞬間、僕は、


 捨てた。


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