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雷の夜に……
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しおりを挟む雷鳴と共に閃光が走る。
窓に容赦なく打ちつける雨音の中、雷の光が部屋を一瞬明るくした。
普段ならしんと静まり返る時間なのに、今夜はいろいろ騒がしい。
季節外れの雷か……
王都で冬に雷なんて滅多にない。しかも、こんなに激しい雷は初めてだった。
ふっと肩の力を抜き、冷めた紅茶を一口飲んだ。机に広げた仕事の書類に目を通し、サインを入れる。
時計の針はあと数分で日付が変わる数字を指していた。
あの日から……
あの日から義姉さまは何か言いたげな顔を僕にむける。なのに、目が合うと逸らす。正直、僕は戸惑っていた。
なんか……したかな……
稲妻の光に続き、大音量の雷鳴が響く。
……あーあ、落ち着かないや。早く終わらせて今日は寝よう。あと、どれくらいで一段落するかな。
書類をパラパラとめくり始めた時、窓にバシャバシャ叩きつけられる雨の音に紛れ、ノックが聞こえた気がした。
こんな夜更けに? 雨の音を聞き間違えたかな?
気のせいかな……と思いながらも気になった僕は立ち上がり、扉を開ける。
「義姉さま……」
扉の外に立っていたのは、部屋着姿の義姉さま。
「どうしたの? なにかあったの?」
うつむき黙っている義姉さまの訪問に、僕は躊躇いながら声をかける。義姉さまは右手を伸ばし、僕の袖をギュッと掴んだ。
「あ、あのね……きゃぁぁぁ」
雷がどこかに落ちたであろう轟音が聞こえ、屋敷が少し揺れると義姉さまは悲鳴を上げ、僕に抱きついた。
ワンピースの薄い生地を通し伝わってくる柔らかい身体と温もりに、僕は思うように息ができなくなる。胸の中で小刻みに震えている義姉さまを危うく抱きしめそうになるが、理性を総動員させて耐え抜き、なんとか平静を装う。
「義姉さま……もしかして、雷怖いの?」
実はその事にも僕はびっくりした。
だって、そんな素振りを今まで見せたことないし。義姉さまだったら「きれーーい」って窓辺で雷見ていそうだったから。
「だって……急に光るし、音なるし……きゃっ」
雷光に驚いて、胸に顔を押し当てた義姉さまに僕の鼓動は早鐘を打ち続ける。それは雷なんかよりも大きな音を立てていた。
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