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求婚を…… ~クラリス視点~

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「いいかい。私はクラリスもミカエルも幸せになって欲しいと思っている。だから、君がどんな決断をしても応援するよ。ただし、いきなり結婚するので出ていきます! は、やめてくれ。寂しすぎる。そんな簡単にクラリスを私から奪っていく男は許さんぞ」

 茶目っ気たっぷりに冗談を言うお父さまに、私はクスッと笑った。

「はい。では、私は部屋に戻ります」
「うん。一生の事だ。後悔しないようによく考えるんだよ。本当に傍にいて欲しいのは誰か」

 傍にいて欲しい人……

 扉の取っ手に手を置いた時、私は思わず口にしてしまった。

「あの……お父さま……私、ミカエルと……」

 一緒にいたいと言ったら許してくれますか?
 義弟おとうとを好きだと言っても許してくれますか?

 この後の言葉を呑み込み、うつむいた。

 それを聞いて、どうなる?

 ミカエルにはオリアーナ様がいて、私の恋は届かないというのに。私はお姉ちゃんでいるしか、ミカエルと繋がっていられないのに。義姉弟きょうだいという関係を壊してしまったら……

 ミカエルの傍にいられない。

「…………なんでもないです、お父さま。アルベルト様の事も考えてみますね」

 私は足早に執務室を後にした。歩きながら、だんだん視界がぼやけてくる。

 義姉弟きょうだいとして一緒に育った私達……この恋は最初っから叶わない恋なんだ。

 あんなにお兄ちゃん達に泣きじゃくったのに、いつになったら涙は枯れるんだろう。いつになったら私は立派なお姉ちゃんになれるんだろう……
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