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求婚を…… ~クラリス視点~
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しおりを挟むあの日の出来事を思い出し、少し沈んだ気分になっていると、扉の外から執事のディールの声がした。
「クラリス様、ご主人様が至急執務室に来るようにとの事ですが」
お父さまが? 珍しい……すぐにって、どうしたんだろ?
私は返事をし、急いで執務室にむかう。
「失礼し……あれ? アルベルト様?」
お父さまと向かい合って座っているのは、アルベルト様。
なんで、アルベルト様が執務室に?
仕事の話なら王宮でするだろうし、遊びに来たならミカエルか私のところだろうし……あれれ?
しかも、アルベルト様は正装で……王族が正装するなんて、よほど大切な行事かパーティーが控えているのかな?
挨拶も忘れ、ボケッと突っ立っていた私はお父さまに傍に来るよう言われ、慌ててソファーに座る。
「えっと……アルベルト様、こんにちは……どうなさったんですか?」
この不可解な状況に思わず無遠慮に聞いてしまった。
アルベルト様とお父さまと私……ミカエルとっていうなら、まだわかるけど。なんで、私?
チラリと盗み見ると、笑いを一生懸命こらえている様子のアルベルト様と目が合ってしまい、視線を逸らす。
「ああ、呼ばれた事が不思議だって、顔に書いてあるぞ」
……バレてる。
焦りながらも、ムリヤリ笑顔を作る私を見て、アルベルト様は口を手で隠しながら、とうとう我慢できなくなったのかプハッと吹き出し、笑いながら話を続けた。
「今日は公爵に求婚の報告にきた」
求婚の報告…………?
…………
…………
…………あっ!
「お前、忘れてただろ?」
ニヤリと笑うアルベルト様。血の気が引く私。
アルベルト様に恐る恐る目をむけると、ニヤニヤと見透かしたような顔をしている。
ミカエルの事で頭がいっぱいで求婚された事、忘れてた……
あああ……やってしまった。
どこの世界に男性……しかも王子様に求婚されて、すっかり忘れる令嬢がいるのよ!
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