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夜会にて……
side ミカエル 8
しおりを挟むあれ? 聞き間違い?
今、キスとかなんとか聞こえた気がするけど?
「ミカエル様!! どうか私にキスを!」
ズイッと顔を寄せ、はっきりと言い放つ彼女にタジタジの僕。
なんでそうなるのっ!?
「えっと、そ、それは……ちょっと……」
さすがにそれはダメでしょ……っていうか、婚約するんでしょ!!
オリアーナ嬢はハッとした表情と同時に赤面し、今更ながらモジモジし始める。
「い、いえ、頬に……していただければ、それだけで、満足ですから……」
「いえ……だと、してもですね……」
困った……困ったぞ……なんで僕が断ったお相手にキスを迫られているのだろう? しかも、相手はシェートの婚約者……なんだ? この状況? さっぱりわからない。
「頬とはいえ、僕が貴女にキスしたら、シェートが怒りますよ?」
「了承済みです!」
「え?」
僕は耳を疑い、疑問形で返事をしてしまう。
「シェート様にはご了承いただいております」
「了承している?」
「はい」
「シェートが?」
「はい!」
「キスする事を?」
「はいぃぃっ!!」
どんどん元気が良くなるオリアーナ嬢の返事に対し、どんどん沈んでいく僕の心。
オリアーナ嬢はもう羞恥心を捨てたのか、最後の返事の弾け方と言ったら……
「ミカエル様にキスしてもらい、私の初恋に終止符を打つ事にご了承いただけましたの。シェート様は懐が深い、優しい方ですから!」
「はぁ……」
僕は頭を抱えた。
そこは嫉妬して止めるところだろ! シェート、お前の懐は底なしなのか? 底なし沼なのか!? 僕だったら、絶対に我慢ならないのに! あと、勝手に僕抜きで話を決めないでよね!
「お願いします!」
僕の腕を掴み、にっこりと微笑む彼女に僕は決断せざるを得なかった。
頬のキスで僕への想いを昇華してくれるなら……それに………このがっちり掴まれた腕、キスしないと離してくれそうにないもん……
息を吐き、腹をくくる。
「わかりました。もう一度確認します。シェートが了承している事に間違いないのですね?」
「はいっっ!!」
後々、揉め事が起こらないよう最終確認をすると、オリアーナ嬢の顔がぱぁと輝いた。特大の返事に圧倒されつつも、僕は彼女を見つめる。
僕にずっと想いを寄せてくれた人だ。
幸せになって欲しい。
そんな思いを胸に、僕は少し緊張している面持ちの彼女に微笑みかけ、そっと頬にキスをした。
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