上 下
247 / 298
夜会にて……

side ミカエル 6

しおりを挟む

 好意を匂わされる事は今までもあった。

 でも、ご令嬢の口から告白されたのは初めての体験で、どうしていいのかわからない。

 できれば、恥ずかしい思いはさせたくないのだけど……

 彼女は僕を見て、クスクス笑う。

「ミカエル様ったら、そんな困った顔をなさらないでくださいませ」
「……あ」

 まずい……と咄嗟に思った僕は慌てて笑みを浮かべる。

 顔に出てしまうなんて、紳士として失格だな……

「……すみません」
「愛の告白をしても、ミカエル様は照れもしませんのね」

 オリアーナ嬢の美しい顔が微かに歪んだ。

「ずっとずっと好きでしたのよ」
「そう……ですか」

 僕を見つめる琥珀色の瞳は、その言葉が嘘偽りないと証明しているかのように澄んでいた。

 心苦しくなり、僕は目を伏せてしまう。

 どのように答えるのがいいのだろう……

「婚約を何度断られても、私、諦めきれませんでした」
「そう……ですね」
「ミカエル様は私の事、どう思ってますの?」

 ……直球だな。

 いつまでも目を逸らしているわけにもいかず、僕は顔を上げ、微笑んだ。誤解のないよう言葉を選びながら、丁寧に返事をする。

「お綺麗で素晴らしいご令嬢だと」
「そういう事ではございませんの。私に恋心を抱く可能性があるかをお聞きしたいのですわ」

 僕の言葉は速攻ぶった切られた……

 わかってる。わかっているさ。オリアーナ嬢が何を聞きたいか。何を求めているか。

 わかってる。

 でも、僕の口から女性を傷つけるのは……辛い。

 僕は大きく息を吐いた。

 でも、ここまでしっかり聞いてくるという事は、彼女も覚悟の上だろう。

 僕がはっきり言うべき事だ。
 それが本当の優しさであり、彼女の為なんだ。
しおりを挟む

処理中です...