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夜会にて……

side ミカエル 4

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「シトリン様が踊っていらっしゃるわ」
「見て下さいませ、あんなに甘いリード、初めてみました」
「ああ……素敵……」

 ご令嬢達のうっとりとした声がする。
 
 ジェスターが公の場で中央で踊るのは珍しい。
 学園のダンス授業の成績は僕がトップだけど、ジェスターのダンスは社交の場でこそ発揮される。

 それが社交界の貴公子と呼ばれる所以ゆえん

 上品で洗練された動き。甘く優しいリード。それに加え、義姉さまを見つめる瞳は愛おしさで溢れていて……心臓を切り裂かれたような痛みが僕に襲いかかる。

 このままじゃジェスターを燃やしてしまいそうだ。

 周りがジェスターに気を取られている隙に、その場を足早に離れた。ギリッと奥歯を噛みしめながら、一人になれる場所を求め、賑やかなダンスホールの喧騒から少し離れたバルコニーに出る。


 今宵は満月。


 魔法で気温が調節されているとはいえ、ホールの熱気から離れた事で少し落ち着きを取り戻す。

 深呼吸を1回し、空を見上げた。

 バルコニーから見る満月に1ヶ月前の誕生日パーティーが思い出される。

 ――あの魔法はだな、お主と嬢ちゃんの無意識の欲望にちょいと背中を押す魔法じゃて――

 義姉さまの無意識の欲望……

 バルコニーの手すりに寄りかかり、乾いた喉にレモネードを流し込んだ。

 アルベルトもジェスターも4月までに決める気だ。なりふりなんて構わないだろう。

 長かった……それこそ子供の頃からの僕らの戦いは、あとほんの数ヶ月で答えが出る。

 僕にはわかる。

 バルコニーから月光に照らされている中庭をじっと見つめた。

 いつまでも義弟ではいられない。
 いつまでも秘めたる恋のままでいるつもりはない。

 残っていたレモネードをクイッと飲む。

 夜風を感じながら気持ちを整えていると、ダンスホールから出てきた義姉さまを目の端が捉え、顔を上げた。

 義姉さまは中庭にむかって、ぼんやりと歩いている。

 考えるよりも先に足が勝手に動き、僕は義姉さまの後を追った。
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