1番近くて、1番遠い……僕は義姉に恋をする

桜乃

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夜会にて……

side クラリス 8

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「お前……そっちまで根回ししたのかよ……」
「人聞き悪いな。ちょっと仕事を頼んだだけだ。僕も、いつまでも大人しくしているつもりはないからね」

 アルベルト様は、ふんっと不満そうに鼻を鳴らす。

「ジェスターにダンスを誘って欲しくて、ソワソワしているご令嬢がいっぱいいるぞ。お前は婚約者もいないんだし、気兼ねなく誘って来いよ」

 私の手を強く握り、グッと引き寄せるジェスター様。

 なんか、さっきから、私、引っ張られてばかりなんですけど? 2人の恋バナは聞いてて楽しいけど、私を巻き込むの止めてくれないかなぁ。
 
「ああ、でも、僕は好きなご令嬢しか誘わないから」

 サラッと言ってのけるジェスター様に、アルベルト様はうっと口をつぐんだ。

 へぇ……ジェスター様ってロマンチストなのね。

 私の手を握ったジェスター様をアルベルト様は力ずくで離し、私に諭す。

「まぁ、とにかくだ、俺以外と必要以上に踊るなよ。クラリス」

(今のところは)婚約者である私が、他の男性と連続で踊るのは、王子の面目が潰れるから、やめろと。
 なるほど、なるほど。一理ある。

「束縛する男は嫌われるぞ」

 ジェスター様が呆れた声を出した。

「い、いや、俺はだな、その、俺の婚約者のクラリスが変な噂になったらだな……って、それよりもジェスター、なんにも通じてないぞ。まぁ、俺にとっては喜ばしいが」

 私をちらりと見たジェスター様は、苦笑いをしながら、肩をすくめた。

「ま、想定内だから。解消が決まっているのに、いつまでも、婚約者、婚約者って、お前、女々しいぞ」
「まだ、決定じゃ……」

 なんだか、さっきから男同士で楽しそうに話している。

 本当に仲良しさんなんだから。

 ほのぼのとした気分で2人を眺めていた私は、ふと、疑問に思う。

 ん、で? 
 なにが通じてないんだろう?

「クラリス……聞いてる?」
「お前、聞いてるのか?」

 同時に問われ、私はたっぷりの笑顔を返した。

「はい!」

 2人は顔を見合わせ、目と目で何かを会話した後、ふぅぅぅと特大の溜息をついた。

「ダメだ……聞いてない……」

 聞いてるってばぁ! もぉ、失礼だなぁ。
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