1番近くて、1番遠い……僕は義姉に恋をする

桜乃

文字の大きさ
上 下
226 / 298
閑話 兄妹水入らず…… ~ザラ視点~

2

しおりを挟む

 あの髪飾りをどうにかして外させたいのだが、クラリスがいたく気に入っている様子を目の当たりにし、僕ともあろうものが少し躊躇ちゅうちょしてしまっている。

 ……あの、くそじじぃめ。

 シースアクト様の忌々いまいましいドヤ顔を思い浮かべ、心の中でチッと舌打ちをした。

 いや、やっぱり問答無用。外させよう。

「クラリス、この髪飾りなんだけど」
「これね! 素敵でしょ? ミカエルったらセンスがいいよね!」

 はしゃぐクラリスに口をつぐんでしまった僕。

 こんなに喜んでいるのに、外せ。と言うのは、ちょっと可哀想だな。なんといっても、今日は誕生日なんだし。

 繊細な細工が施されていて、上品で素晴らしい銀細工だとは思う。認めたくはないが。
 ただの綺麗な髪飾りなら問題ないのだが、それに込められている魔法が大問題だ。

 もう髪飾りあれは立派な魔法道具である。

 贈り主と贈られた相手の欲望を引き出す魔法と男への守護魔法……どうせだったら、すべての男が口説けない魔法を込めればいいものを、よりによってミカエルだけ除外されているのが、なんとも許しがたい。

 まったく……あのくそじじぃは、あいかわらず余計な事をする。

「綺麗よねー」と嬉しそうに話すクラリスにどうしたもんかと僕は頭を悩ませた。

 髪飾りそのものを気に入っているのはもちろん、ミカエルからのプレゼントという事が1番嬉しいのだろう。

 ミカエルの話をする時、ほんの少しだけ頬を紅潮させているのに本人は気づいているのだろうか?

「美咲、誕生日のプレゼントだ」

 ミカエルったらね、ミカエルはね……とかわいい妹が男の名前を連呼する事に嫌気が差してきたのか、兄さんは古びた本をクラリスに渡し、強引に話題を変える。
 クラリスは本を受け取ると、ぱぁぁと顔を輝かせた。

「これ、私が読みたいって言ってた本! 絶版になっていたから諦めてたのに……天兄、ありがとう。わざわざ探してくれたの?」
「ん? まぁな」
「嬉しい! 天兄、大好きー」

 クラリスに抱きつかれ、さっきまで辟易としていた兄さんの顔が崩れる。本当に兄さんも妹に甘い。

 だが、クラリスがほくほく顔で兄さんに抱きついているのは、僕の兄としてのプライドが許さない。

「美咲、おめでとう」

 僕はこの日の為にコツコツ作り上げた物を取り出す。

「オルゴール?」
「前に僕が作ったオルゴール、気に入ってただろう?」
「雪兄、忙しいのに……ありがとう」

 僕達が再会した日の事を思い出したのか、クラリスは泣きそうな声でキュッと僕に腕を絡ませた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完結】悪役令嬢の反撃の日々

くも
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。 「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。 お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。 「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

琥珀の月

桜 朱理
恋愛
「……あんたが俺のことを嫌いなのは知ってるよ。でも、やめてやらない。憎まれても、恨まれてもいいから、あんたは俺を見ていろ。あんたは俺のものだ」綺麗な琥珀色の獣の瞳をした義弟は美咲の知らない男の顔で言った。昔からこの綺麗な義弟に惹かれながらも、その思いを否定し続けた美咲は強引な義弟の腕に囚われた。 昔、ムーンライトノベルズ様に掲載していたものを改稿しています。第1章、第2章はムーンライトノベルズ様に掲載していたものを手直して、一括で掲載。第3章以降は書下ろしの予定。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ

音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。 だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。 相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。 どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。

処理中です...