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後日談 プディングを……

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 僕は義姉さまに分けてもらったプリンを持ち、中庭へとむかった。

 外はひんやりと肌寒い。

 秋の花が咲いてはいるが、春に比べると少し物悲しさを感じる。義姉さまとよくお茶をしていたテーブルもなんだか少し寂しげな様子だった。そのテーブルにプリンが入った小さいびんを置く。

 もういないと思うけど。
 もしかしたら……ね。

 僕も随分とお人好しだなぁと1人でクスクス笑ってしまう。

 プリンをかごに入れ、メモを添えた。


 ――あの2人を許してあげてください――


 北風がピュと吹き、薄着で出てきてしまった僕はブルッと体を震わせる。

 寒いな……戻ろう。

 屋敷にむかって歩き始めると「にゃあ」とかわいい鳴き声がして、僕は立ち止まり振り返った。

 ん? 猫?

 そこには、僕をじっと見つめる真っ白い猫が、尻尾をパタパタさせ、座っていた。

 迷い込んだのかな。

 猫はテーブルにストンと上り、プリンの籠の取っ手をくわえると、あっと言う間にその場から走り去る。

 小さい籠だったとはいえ、まさかくわえていくとは思ってなく、僕は唖然あぜんと走っていった猫の後ろ姿を見つめていた。

「ま、いっか」

 猫じゃプリンの瓶の蓋も開けられないだろうし。
 もう、あの人はこの辺りにはいないはずだし。

 プディング好きに食べさせてあげたいなって思った僕の自己満足だったしね。

 首をすくめ、残っている仕事を片付ける為、足早に僕は部屋にむかった。
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