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忘却の……
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しおりを挟むあんな雰囲気になっても、意識されない……どころか、なかった事にされたと思っていたけど……そっかぁ、忘れてるのか。
安心はしたけど、なんか複雑な気分でもある。
忘れられているのが少し残念なような……
そういえば……忘却魔法ってこんなに手軽に使っていいのかな?
『わしゃ、大魔道士だからの! 特別じゃて』
僕の思考を先読みしたのか、シースアクト様が意気揚々と答える。
いや、まぁ、そうかもしれないけどさ……忘却魔法って、本来は政治絡みとか、犯罪絡みとか……もっと重要な時の最終手段で使用許可が下りる魔法の類いで……今回はシースアクト様の趣味だよ?
『いいんじゃ、いいんじゃ』
ああ……ザラがくそじじぃと言った気持ち……わかるなぁ。
『なにぃ、あやつ、そんな事言ったのかの! あんの冷徹魔道士長め』
……僕の思考読むのやめてください。
『すまん、すまん。つい、面白くてなぁ』
面白いって……
はぁ……この人と話していると調子が狂いっぱなしだ。
『安心せい。そろそろ、お主の周りからは退散するぞい。いつまでも話しておると、あの冷徹魔道士長に見つかるのも時間の問題じゃしの』
「逃げなくてもいいじゃないですか……契約を断れば」
『アホ言うな! お主も知っとるじゃろ、あやつの恐ろしさを。見つかったら最後、死ぬまで働かされるわっ!』
この自由奔放爺さんは、ザラにお灸を据えてもらうくらいがちょうどいいんじゃ……?
この件に関しては僕はザラを全面的に応援する。
『お主……今、わしを売ろうと考えとるじゃろ?』
あ、バレた。
『あやつはわしを恨んでおるからの。わしに容赦せぬじゃろ』
「恨んでる?」
シースアクト様とザラに確執があるなんて初めて聞いたな。
政治的な何かとか?
『そうじゃ、わしゃあな、自慢じゃないが王宮魔道士長の仕事を9割残して、王宮を出てきたからの。ザラは優秀じゃて、たいしたことなかろうが……まぁ……怒っては、おるなぁ。ふぉふぉふぉ』
……なんだ、ソレ。
ホント、自慢じゃないんですけど。
ああ、ザラがいつも多忙なのはそのせいか……そりゃあ、ザラも怒るよ……
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