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町へ……

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「君さ、公爵家の坊っちゃんだろ? で、あの子はすごい魔力持ちだね。SSかぁ」

 続けて彼が放った言葉は、僕を驚愕させるのに、じゅうぶんすぎるものだった。

「な……んで」

 僕の素性だけならまだしも、義姉さまの魔力の事まで言い当てたのは、いくらなんでもおかしい。

 不信感を抱いた僕は、警戒し、男性を睨みつける。
 
 魔力制御装置をつけている義姉さまの魔道士クラスは、外からだとわからないはず。

 どうして、わかった?
 相当の魔力を持っている?
 いや、そんなはずは……

 僕は彼が魔道士である可能性を頭の中で否定した。
 なぜなら、Sランク以上の現役魔道士の顔と名前を、僕は全員覚えているから。

 まさか人攫ひとさらい? 義姉さまを狙っている?

「ああ、ごめんごめん。そんなに睨まないで。わかっちゃうんだよ、俺。でも、あの子はさ、守られてるでしょ?」

 義姉さまが守られてる? 何に?

「おや? 知らないの? あの子、強固な守護魔法がかけられてるよ? あの子に何かあれば、王宮魔道士長様にすぐわかるやつ……っていうか、あの冷徹魔道士長がみずから動くなんて、ずいぶん過保護なんだねー。次期魔道士長にでも育てるつもりなのかなぁ?」

 何でもない事のようにサラリと言った彼の台詞に、僕は困惑してしまう。

 義姉さまには守護魔法がかけられている?
 それは、たぶん……いや、間違いなくザラだ。

 ザラがかけた守護魔法なら、魔法の痕跡を消すステルス魔法も一緒にかけているはず。だからこそ、僕は気がつかなかったわけで。

 ……で、この飄々ひょうひょうとした男性はそれを一目で見破った?

 ザラの魔法を見破るのは、力のある魔道士じゃないと無理だと思うんだけど。それこそSSクラスでも難しいはずで。

 それをいとも簡単に?
 どうして? なんで?
 この人は何者なの?

 それに……

 彼の言葉の中で一番気になった単語を思い浮かべた。

 冷徹魔道士長。

 …………って、どういう事?

 まぁ、当たっているけど。

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